第七話   【キャリントン・イベント】

俺は行くアテが無いので暫くアキの修復された家で居候同然の生活を送っていた。


「あの…そろそろ出ていって貰えませんか?」


「帰る場所が無い俺にとってはこの家が第二の故郷なんだ…」


「じゃあ今日からあの庭がカスミの故郷よ、土に還りなさい」


「そんな~」

…このやり取りをもう13回繰り返している。

アキは口では家からの立ち退きを促してくるが一向にコタツから動かない。

俺がお詫びとして渡した家具達がアキを縛り俺をこの場所に繋ぐチェーンとなっている。

暫く奴は家にいる限りコタツから出ることは出来ないだろう。

最近はドローン配達サービスもあるので、いちいちドライバーを異世界に呼ばなくて罪悪感も無い!

コタツも小さいながら軽い骨組みでしっかりとした造りが実現されていてとても心地良い

狭いコタツの中、肩を並べ、現実でも手に入らぬ平穏が其処にはあった。

そんな俺はスマホを弄っては寝るを繰り返している。

アキは毎日何かしらの仕事か何かをしているようだが、家に帰るとすぐにコタツに入ってスクイーズを弄って遊んでいる。

この世界にはろくな娯楽が無いのか?

毎日同じことを繰り返す彼女が心配になってきた…



みたいな事を考えつつスマホをいじっていた、その時。




───────スマホが発火した



コタツから熱が失われていくと同時に、俺の脳には熱が籠っていった。


「電子機器が…全部壊れた…」


強制デトックス!


俺は不自由を強要されるのが嫌いだ。

窓にオーロラが写る。

どうやらここら一帯の磁場は狂ってしまったようだ。

いくら異世界とはいえ、磁場が短期的に狂う世界では無いし、今までそんな予兆は無かった。

つまり得体の知れぬ何かが、俺達の近くに居るということだ。


───────オーロラが広がる窓に黒い人影が見えた



絶対に敵だね木の棒で殴ります

敵じゃなくても殴る


アキの拾ってきた棒を片手に外に出る。




その人影の顔は我が父そのものだった


「親父!?」


アキもコタツから熱が消えた事に気付き外に様子を見に来た。


「アキ!こいつがコタツを破壊した敵だ!そして俺の親父だ!遠慮せずに行け!」


「貴様の親ではない」


「カスミ!あれはホントに貴方の親!?」


「違う」


「数ヵ月前FXで負けて家から出てった親父だ!殴っていいぞ!」


「いや違う」


カスミが拳をみぞおちに叩き込む前に、親父は影に吸い込まれるように消えていった





俺にはもう殆ど金がない。

投資で増やそうにも元となる金が用意できない。




現時点でこの世界に存在するスマホはあの泥棒ドライバーの所持している物のみ。


──────そうとなっては盗むしかない


次回!

異世界ワイヤレス羅生門!!!

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