第47話 エッチな下着ですか?
朝食を食べ終わり、すぐにお買い物に行くのかと思ったら、先に家事を終わらせちゃうそうです。お義母さんから『薫くんはお部屋でゆっくりしててね』って言われたけど、さすがに僕も家事をやらない訳にはいきません。
僕でも出来る家事は何かを考えた時、掃除機をかけようと思った。そして自室とリビング、キッチン、廊下を掃除機で綺麗にしました。ここのお家にある掃除機はコードレスで吸引力が落ちないと触れ込みのすごいやつでした。軽いので広いお部屋も苦じゃない感じです。
そして葉月ちゃんのおっぱい発言から2時間後、朝の身支度を終えてやっとお出かけです。
葉月ちゃんとお義母さんの三人で電車に乗り、大きなアウトレットモールへ向かいます。最初は近場の家具屋さんに行く予定だったけど、葉月ちゃんの今日の運勢でランジェリーショップが出て来たので、どうせだったらアウトレットモールへ行こうという事になりました。
そしていま僕は、両手を拘束されているのでした。
「お母さんは先輩と腕組んじゃダメですっ」
「でもでも~、私だけ仲間はずれになっちゃうわ~」
「お母さんにはお父さんがいるので我慢してください」
「え~いいじゃな~い。でも……薫くんは私みたいなおばさんとは腕組みたくないかしら?」
僕の左腕にお義母さんが、右腕に葉月ちゃんが抱き着いています。僕は完全に両手を塞がれてしまい、二人の甘い匂いにクラクラしてしまうのだった。
葉月ちゃんとお義母さんが僕を挟んで言い合っていたけど、まさか僕に矛先が向くなんて思ってもみなかった。正直に言おう。最高です!
葉月ちゃんの胸も大きいけれど、お義母さんの胸はそれ以上なのです。冬だから厚着していてあまり感触がないと思ってたけど、そんな事は無かった。すごく柔らかくて世の男性をダメにするやつです。
「お義母さんはおばさんなんかじゃないです。葉月ちゃんのお姉さんにしか見えません!」
「あら~! ありがとう薫くん、嬉しいわ~」
興奮したお義母さんがギュッと抱き着いてきた。ここが天国か……。でも右腕が痛いくらいにギュッとされている。こっちは地獄か……。僕は天国と地獄に挟まれ、生を実感していたのだった。
「……先輩はお義母さんと仲良くし過ぎです。怪しいですね……」
葉月ちゃんのジト目が刺さります。どうやら先日のお義母さんと一緒に帰った件で、ラブホとかあらぬ疑いを掛けられているのです。誤解です、僕は葉月ちゃんだけを愛しています!!
休日の街は人も多く、そんな中で美人姉妹に見える女性を二人も
そんな状態のまま、電車に乗り込みました。休日の電車という事で混んでるかと思ったら、座席も少し空いてる感じ。でも3人で座れる場所も無いのでドア付近で立ってます。どうせ3駅だからすぐに着いてしまうのです。
「ねぇ薫くんってパスポート持ってる?」
突然お義母さんに聞かれて戸惑ってしまった。パスポートってあれだよね、海外行くのに必要なやつ。もちろん持ってません!! 僕は飛行機に一度も乗った事が無いのです……。
「いえ、持ってないです」
「あら、そうなのね。今から用意して貰うのも面倒だし、国内にしましょうか」
「……?」
お義母さんの言っている事がいまいち分からないです。もしかして旅行に行こうとかそんな感じかな? そういえば葉月ちゃんが以前、毎年年末は海外旅行に行っているって言っていた気がする。僕も行くって事か!?
「……先輩、年末は家族で旅行に行くんですよ?」
「うふふ、温泉に行きたいわね~。パパに相談してみるわね」
「温泉楽しみですね!」
予想通り、葉月ちゃんの言っていた年末の旅行でした。でもその事を聞いた瞬間、驚きと共に、目がウルっとしてしまった。当たり前のように僕を家族の一員として考えてくれている事に、感動してしまったのだ。
「どうしたんですか先輩? 目が赤いですよ?」
「だ、大丈夫……」
感動の不意打ちに少し涙が出てしまったが、葉月ちゃんにはお見通しだったようだ。やっぱり葉月ちゃんには敵わないな。……そんな事を考えていたら、葉月ちゃんが僕の耳元で小さく囁いた。
「ふふ……今は無理ですけど、夜になったらいっぱい甘えさせてあげますからね」
「うっ! うん……」
「ミルクは出ないですけど、おっぱい吸い放題ですよ」
「は、はい……」
葉月ちゃんの発言により、僕の顔はきっと真っ赤になっているのだろう。そして夜の事を想像して、もっと顔を赤くしてしまうのだった。
「いいわね~」
最後にお義母さんの声が聞こえたような気がしたが、電車の走る音にかき消されてしまった……。
◇
到着した最寄り駅から歩くこと10分、アウトレットパークという所に来てしまった。こんな大きな商業施設があったのかと驚いてしまったが、テーマパークと言っても良いんじゃないかという広さで、一日で回りきれないのではないだろうか……?
看板を見たところ、家具屋さんはもちろんのこと、洋服から靴、雑貨やスポーツ用品など、色々なブランドのお店が集まっていた。有名なブランドもあれば、聞いたことの無いブランドもたくさんあったけど、たぶん僕が知らないだけだと思う。きっと有名なんだろうな。
とりあえず流れに身を任せ、気になったところから順番に見て行くようです。
「あっ先輩、スーツ売ってますよ? 確か必要だって言ってましたよね」
「本当だ。ちょっと見て良いかな?」
来週から本格的に始まるアルバイトのため、スーツが必要なのです。さすがに私服で会社に行くわけにはいかないよね! 二人の了承が得られたので店内へ潜入しました。僕にはブランドとか分かりませんが、アウトレットという事で安いそうです。
ずらっと並ぶスーツに圧倒され、僕はどれを買って良いのかさっぱり分からなかった。こんな時はお義母さんに任せるのが良い気がする!
「あの、僕スーツとか全然分からないんですけど、お義母さん選んで貰っても良いですか……?」
「あら~、私で良いの? まかせて~」
「……」
お義母さんが張り切って選び出しました。よし、お義母さんならきっと良いものを選んでくれるはずだ! でも隣にいる葉月ちゃんがジト目で見てきます。マズいぞ!?
「え、えっと、葉月ちゃんはカバンとか選んでくれると嬉しいな! シャツとかネクタイとかも……」
「えへへ……任せて下さい!」
ふぅ、どうやら正解だったようだ。僕も一緒に探そう……。
それから僕は、着せ替え人形のように色々と着替えさせられた。僕としては適当なスーツとシャツを1着買えば良いかなって思ってたけど、どうやらそういう訳にも行かないようです。
「やっぱり最低2着は欲しいわね~」
「ピンク色のネクタイも可愛いです。これも買いましょう」
「いいわね~。あ、時計はパパがいっぱい持ってたから買わないで良いわよ」
「こっちの靴もスラっとしてて先輩に似合いますね。買いましょう」
「あら、このネクタイピンはオシャレね。パパに買ってあげましょう」
僕が入り込む隙間がありません。二人でどんどん選んでしまい、僕は見ているだけです。まあ僕のセンスは壊滅的だって神様も言ってたし……全部任せよう。
そしてお会計となったら、僕の予想していた金額の3倍になっていた。やばい、お金借りないとダメだ……。そう思っていたらお義母さんがカードで支払ってしまい、更に家に送るように手配までしてしまった。
「あ、あの、後でお金払います」
「あら~、良いのよ~。パパの買ったついでよ~」
「いえ、そういう訳にも行かないので……」
どう見てもお義父さんのものよりも僕の物の方が多いです。今度お金降ろして必ず返済しよう。こういうのはしっかりしないとダメ人間になってしまうので、忘れないようにしよう。
「色々と選んで貰っても助かりました。僕一人だったらきっと変なのを買っていたと思います」
「ふふ……先輩のスーツ姿かっこよかったです」
「楽しかったわ~」
スーツ買えて良かった。もう僕に必要なものは買えたから、あとは二人のお買い物に付き合うだけな気がする。楽勝だな!
◇◇
楽勝だなって思った自分を呪いたいです。いつの間にか魔境に来てしまい、僕の両腕は葉月ちゃんとお義母さんに拘束されています。逃げたくても逃げられない、つまり逃がす気が無いのだろう……。
店内には黒や紫など、カラフルでスケスケな下着が所狭しと並んでいます。そしてこの空間に居る男性は僕一人。女性の店員さんも面白そうにニヤニヤして僕を見つめてきます。あの店員さん、すごい美人だ。真っ黒な髪が艶やかで、姫カットと呼ばれる髪型がすごく似合っている。あの女性もここにある下着を着てエッチな事をするのだろうか……?
「……先輩、あの店員さんのような髪型が好きなんですか?」
「えっ? そ、そんな事ないよ?」
「覚えておきますね?」
葉月ちゃんにバレてしまった。本当は姫カットとか大好きです。清楚な感じがしてドキドキするよね! あの店員さんのような髪型で、ベビードールのようなエッチなセクシーランジェリーを装備して貰ったら襲い掛かる自信があります!
「あ、いま変な想像しましたね。どんなエッチな下着を着て欲しいんですか?」
「い、いや、そんな事考えてないよっ?」
「ふふ……誤魔化さなくて良いんですよ? 先輩の好きなやつ着てあげます」
葉月ちゃんが僕の耳元でいやらしく囁いてくる。僕は必死に抵抗した。心の中で。でも無理だった……。
「黒い……セクシー……がいいです……」
「何ですか? 良く聞こえませんでしたよ?」
葉月ちゃんがニヤニヤしながら僕をいじめて来る。この店内に居るたくさんの女性に見られながら、僕はエッチな下着を選ばなければいけないのか。くっ、なんて卑猥なプレイなのだろうか……。
「え、エッチな、黒いベビードールを……着て欲しいです!」
言ってしまった。きっと僕の顔は真っ赤になっているだろう。さっきまで遠くに居たあの店員、姫カットさんが近づいてきた。
「当店で人気のあるベビードールですと、こちらのようなキャミソールワンピースになります」
姫カットさんが案内してくれたエリアには、カラフルなキャミソールワンピースが並んでいた。どれもこれもシースルーでスケスケになっていて、防御力が皆無だ。防御力を捨ててエッチな攻撃力に極振りしている!
「うわ~、いっぱいありますね。どのタイプが良いですか?」
「ええぇ!?」
「ほらほら先輩、好きなの選んで下さい~」
そんな事を言われても困ってしまう。僕はもうこの異様な空間で混乱してきた。もう直感に任せて決めよう。よし、君に決めた!!
「あら~、薫くんも大胆ね~」
「先輩これが良いんですね!」
僕が手に取ったエッチなベビードールは、黒いキャミソールワンピースでフリフリが沢山ついていて、基本的にスケスケだった。腰のところが左右がスリットのようになっていて、防御力が皆無だった。これを着た葉月ちゃんは魅力が300%アップすると思います。
「じゃあ次の選んで下さいね」
「えっ?」
「だってこれ1着じゃ1日しか着れませんよ? 一週間って何日あるか知ってますか?」
「……」
どうやら僕は、最低でもあと6着も選ばないとダメなようです。姫カットさんが楽しそうに微笑んでくれているけど、僕にそんな余裕はありません。助けて下さいお義母さん!
「あらいいわね~。私も薫くんに選んで貰おうかしら~?」
この瞬間、僕に味方が居なくなってしまった。
そうして僕は、この沢山いる女性たちの前で己の性癖をさらけ出し、エッチな下着を選んだのだった……。
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