第20話 ごめんなさいのキスって何ですか?

 映画館を出て、来る途中に見つけた喫茶店に向かう。


 どうやら葉月ちゃんは子供にキスを見られたのが恥ずかしかったのか、僕に腕に抱きつくような態勢になってしまい、会話どころじゃなくなっていた。


 人が多いのでぶつからないように避けて進み、なんとか喫茶店に辿り着くことが出来た。


「いらっしゃいませ~。2名様ですか? ご案内致します」


 喫茶店の店内は木材が多く使われているからか、珈琲の匂いと微かな木の香りがした。


 あまり広くない店内ではあるが、6割近くの席が埋まり、僕たちは2人掛けの対面席に案内された。


「……先輩と離れちゃいました。寂しいです」


「そんな事言わないで。ほら、可愛いケーキが沢山あるよ。どれか頼んでみよう。僕はこっちのケーキを頼むから、葉月ちゃんも好きなの選んで?」


「分かりました。……じゃあ私はミルクレープにします」


 店員さんを呼んで、ケーキセットというメニューを注文した。僕はブレンド珈琲とチョコレートケーキ、葉月ちゃんはホットココアとミルクレープである。


 しばらくすると、メイド服のお姉さんがオーダーを運んで来てくれた。


「美味しそうですね。頂きましょう!」


 良い香りのする珈琲と、小さなチョコレートケーキがオシャレなお皿に乗っている。これは写真に撮りたくなる。珈琲を口に入れると仄かな酸味を感じ、際立つ香りが鼻を通り抜けた。


「この珈琲なかなか美味しいよ。マスターのところの珈琲と同じくらいかも」


「本当ですか? うーん……ちょっと苦いです」


 僕の珈琲カップを葉月ちゃんに渡すと、何も気にせずコクコクと飲んだ。飲む姿も可愛いけど、間接キスとかもう気にならなくなっちゃったんだね。


「葉月ちゃんは珈琲あんまり得意じゃないもんね。……お口直しにチョコレートケーキをどうぞ。あ~ん」


「あ~ん……。甘くて美味しいです! お返しにミルクレープ上げますね。はい、あ~んしてください」


 小さなフォークに乗ったケーキが口に運ばれる。すごく甘くて、幸せな味がした。自分で食べてもこんな味にはならないだろう。


「……葉月ちゃんの味がする」


「もう、なんですか先輩は。私のキスはこんなに甘くないですよ? 確かめてください……」


 そうして葉月ちゃんからキスをされた。何度目のキスか分からないけど、今回のキスはミルクレープの味がした。


「やっぱり甘いや」


「うふふ、そうですね」


 葉月ちゃんの笑顔が可愛い。ずっと見ていたい。ふと視線を感じて辺りを見てみると、何人かのお客さんと店員さんがチラチラとこっちを見ていた。


 葉月ちゃんが可愛いからしょうがないよね。僕がもし同じ立場だったら、葉月ちゃんをガン見しちゃうと思います。


 良く見ると、ここのお店の店員さんは高校生くらいの若い女の子が多かった。しかもマスターの喫茶店と違って、ミニスカートのちょっとエッチなメイド服のような感じだ。ミニスカートにニーソックスの組み合わせはとても刺激的です!!


「……先輩? どこ見てるんですか?」


「ち、違うよ? マスターのお店と制服が違うから、ちょっと気になっただけだよ? 葉月ちゃんが着たら可愛いだろうなって思ってただけだよ?」


「……まぁ先輩も男の子だし、ああいう服が好きなんだって事が分かったからいいです。でも私が着て上げますから、よそ見しちゃダメですよ?」


「はい!」


 危なかった、セーフ。修二と玲子さんだったら後で修二がいっぱい怒られるのだろうか? でも葉月ちゃんのメイド服姿は是非とも見たいです!


「じゃあ先輩、ごめんなさいのキスをしてください」


「えっ!?」


「デート中の彼女がいるにも関わらず、エッチなメイドさんに目が釘付けになってましたよね?」


「は、はい……」


「なので、ごめんなさいしてください。キスで」


 そうして葉月ちゃんは体を前に出し、目を瞑ってしまった。やるしかない!


「大好きだよ葉月ちゃん……」


 そうして僕は、周りの視線を感じながら、葉月ちゃんにキスをした。


「ふふ、許してあげます♪」


 今日だけで何回キスをしただろうか? 葉月ちゃんがこんなに積極的だなんて思ってなかったけど、嬉しいな。


 でも修二と玲子さんで決めた本来のデート目標って、手を繋ぐ事じゃなかったっけ?


「じゃあこのお店は危険だし、そろそろ行こうか?」


「ふふ、そうですね。行きましょうか」


 そうして自然と葉月ちゃんが僕の左腕に手を絡ませ、店を出た。でも何故だろう、店内のお客さんやメイドさんから羨望の眼差しを向けられたのでした。葉月ちゃんが可愛いからね!


 喫茶店を出て駅に向かう途中、大きなゲームセンターが見えた。


「葉月ちゃんは友達とゲームセンターとか行ったりする?」


「いえ、ほとんど行きませんよ。あ、でも友達とプリクラ撮ったことあります」


「じゃあ記念に、プリクラ撮ろうか?」


「はいっ!」


 実はプリクラ撮るの初めてです。いっぱい種類があって迷うね。こういうのは女の子に任せた方が良い気がする!


「これにしましょう!」


 何やら美人に仕上げてくれるやつらしいです。


「美人に映るって書いてあるけど、葉月ちゃんはこれじゃなくても美人だよ?」


「いいんです! 女の子はもっと綺麗になりたいんです~」

 

 そうして二人で撮ることになった。


 まずは普通に腕を組んで並んで1枚パシャパシャ。


「すごい! 葉月ちゃん女優さんみたいに綺麗だよ」


「ふふ、先輩もカッコイイですよ!」


 自分の顔はどうでもいいけど、葉月ちゃんがいつも以上に綺麗になってる!


「文字を書き込みましょう」

 

「うん。葉月ちゃんにハートマークつけちゃお」


「じゃあ私は恋人記念日って書きますね!」


 ちょっと楽しいかもしれない。


「じゃあ次はカウントダウンでキスしますよ?」


「ええぇ!?」


「何を驚いているんですか? 恋人記念日の次はキス記念日です! さぁいきますよ~」


 葉月ちゃんと軽く抱き合い、キスをする。


 カウントダウンの音が聞こえて来たが、それどころではなかった。


 葉月ちゃんの舌が、口の中入って来た。僕の舌と混ざり合い、一つになる。


 頭がボーっとする。葉月ちゃんの匂いがする。もう死んでしまうかもしれない。


 プリクラの写真はまだ終わらないのだろうか? このキスはいつ終わるのだろうか? もうずっとこのままでいいかなって思っていたら、葉月ちゃんが名残惜しそうに離れて行った。


「ふふ、先輩大好きですよ。ずっとこうしたかったんです!」


「……まいったな、もっと早く告白すれば良かった」


 液晶画面には、僕の蕩けきった顔と、凛々しい葉月ちゃんの顔が写っていた。これは保存して良いものなのだろうか?


 こんなものをプリントしてしまったら、すごく危険な気がします。


 やっぱ消した方がいいのかって考えていたら、葉月ちゃんが書き込みをして確定してしまいました。


「キス記念日です。でもこれは恥ずかしいので、先輩にはあげません。私だけの宝物ですからね!」


「……うん。無くさないようにね!」


 単なる思い付きでゲームセンターの話題をした結果、ディープキスをしてしまいました。


 初デートって手を繋いで、楽しかったね! って言って終わるものだとばかり思ってました。こんな事、修二や玲子さんも教えてくれなかったよ。先生たちも完璧じゃないってことか……。


「名残惜しいですけど、そろそろ帰りましょうか」


「そうだね。また今度デートしよう!」


 そうして今度こそ駅に向かい、電車に乗ることが出来た。途中、色々と誘惑があったけど、耐えました。


 


   ◇




 最寄り駅まで到着すると、辺りはすっかり暗くなっていた。


 さすがに駅で別れてバイバイという訳にもいかず、葉月ちゃんのお家まで送ることにした。


 もう腕を組んで歩くのが普通になってしまったが、葉月ちゃんの甘い匂いがしてドキドキする。なんで女の子ってこんなに良い匂いがするんだろう?


 特に会話もなく歩くけど、この状態が心地いい。嫌な沈黙じゃなく、幸せを感じる。


 しばらく歩くと、修二の住んでいるタワーマンションが見えた。


「あのタワーマンションが修二と玲子さんが住んでる家だよ」


「うちと結構近いですね。私の家はあのマンションの一つ奥です。……いいなぁ玲子お姉さまは。私も先輩と同棲したいです」


「えっ?」


「えっ? 先輩は私と同棲したくないんですか?」


「そ、そんな事ないよ? でもほら、僕の部屋知ってるでしょ? あんな狭い部屋じゃ一緒に住めないし、僕もまだ学生だからね。就職するまで待って欲しいかな……」


「う~ん、そうですね。私が卒業したら考えましょう!」


 あれ? 今日って映画に誘ってお手々繋いでランランって歩くのが目標じゃなかったっけ? 同棲の話まで行っちゃったよ?


 葉月ちゃんは更にルンルンでテンションアデアデです。笑顔が可愛いです。やっぱり恋をすると可愛くなるんだね!


 並木道を抜けたら大きなタワーマンションが見えてきた。修二と玲子さんのお家よりも大きい気がする。


 マンションの入り口に着くと、自然と足が止まった。


「先輩、残念ですが今日はここまでですね。ありがとうございました、凄く楽しかったです」


「うん、ボクも楽しかったよ。葉月ちゃんと恋人になれて、嬉しかった」


 葉月ちゃんと向き合い、感謝を伝えた。


「アルバイト先ではイチャイチャ禁止ですからね?」


「もちろんだよ」


 葉月ちゃんが僕に抱き着いてきたので、そっと支える。


「先輩と離れるのが寂しいです……」


「またデートしよう? 連絡も頻繫にして、寂しくないようにするからね」


 葉月ちゃんが目を潤ませて、僕を見上げて来た。


「じゃあお別れのキスをしてください」


「……葉月ちゃん、大好きだよ」


 そうして僕は、葉月ちゃんとキスをした。最初は唇が合わさるキスを、次は何度もキスをして葉月ちゃんの唇を溶かすキスを、最後は葉月ちゃんの舌と絡ませる熱いキスを……。


 どれくらいの時間、そうしていただろうか。


 お互い、自然と口を離した。


「もう……今日は寝れそうにありませんよ。先輩」


「僕も今日は興奮して寝れないかもしれない」


「本当に残念ですけど、今日はここまでですね。おやすみなさい、先輩」


「うん、楽しかった。おやすみ葉月ちゃん」


 そうして僕は、葉月ちゃんに見送られながら、駅の方へ歩いていく。


 ふと振り返れば、まだ遠くで葉月ちゃんが手を振っているのが見えた。


 見えているか分からないが、僕も手を振り返し、初デートが終わった。


 本当に、本当に濃い一日だった。初めての事が多すぎて、もう頭がパンクしそうだ。


 まず何よりも、今日は自分を鎮めてから寝ようと思う。




   ◇おまけの葉月ちゃん◇




 遠くに行ってしまう先輩に手を振り続ける。まさか自分がこんなに先輩の事が好きだったとは思わなかった。


 先輩と手を繋いだ瞬間、心が繋がった気がした。そうしたら、今まで貯めこんでいた好きって気持ちが溢れて来た。


 キスした瞬間、この恋は嘘じゃないって分かった。そうしたらもう、気持ちが抑えられなかった。


 舌を絡ませた瞬間、一つになれた気がした。先輩が好きで好きで止められなかった。


 セックスは卒業までって自分から言ったけど、正直なところ、このままホテルに行っちゃおうかと何度も思った。


 本当はこんな積極的に行くはずじゃなかった。デートを楽しんで、最後に別れる時に告白してくれたらいいなって思ってた。


 でも先輩と会った瞬間にプランが崩れた。だってあんなにイケメンに大変身しているなんて思いもしなかった。


 デートの途中、自分の中から声が聞こえたような気がした。すごく的確なアドバイスに感じた。


 その声に従っていたら、いつの間にかディープキスをしていた。


 本当にどうしちゃったんだろうと思うけど、すごく幸せな気分です。


 ここで立っていてもしかたないので家に行こうとしたら、声を掛けられました。


「あらあら~、見ちゃったわよ~。すごく情熱的なキスだったわ~」


「お、お母さん!? ど、どうしてここに!?」


「ふふふ、ちょっとお買い物に行って戻ってきたら、葉月ちゃんが彼氏とキスしてるじゃな~い! キャー」 


 お母さんが頬に両手を添え、クネクネしながらキャーキャー言っています。


「み、見られちゃった……」


「まあまあ、いいじゃない。まずはお家に帰りましょう?」


 お母さんに肩を抱かれ、エレベーターに連れ込まれてしまいました。


 そのまま家に着くまで、お母さんは黙ったまま何も言ってきませんでした。


「じゃあ葉月ちゃん、荷物はここに置いて先に手洗いうがいしてきちゃいなさい」


「う、うん……」


 はぁ、まさかお母さんに見られちゃうなんて思ってもいなかったな。でも、ようやく先輩と恋人になれた。


 洗面台で手を洗い、うがいをする。ふと顔を上げ、鏡に映った自分の顔を見ると少し大人な顔付になったようにも見える。先輩にたくさん可愛いって言って貰えてうれしいかったな。


 リビングに戻ると、お母さんが私のハンドバッグを開けて荷物を漁っていた。


「ちょ、ちょっとお母さん! 何してるの!?」


「あらあら、お母さんは~何もしてませんよ~♪」


「私のバッグ漁ってるでしょ!? それは見ちゃダメー!」


 先輩と撮ったプリクラを見られてしまいました!


「あらあらまあまあ!! これが彼氏くん? イケメンじゃな~い! 前に聞いたときは普通の男の子とか言ってたのに、嘘ばっかり~」


「ち、違うの! 大変身してたの!」


「まあ!! こんなエッチな写真まで撮っちゃって!! いいわね~」


「エッチじゃないもん、普通だもん!! もう返してっ!」


 お母さんの手からプリクラを強奪しました。急いで自分の部屋に行き、机の鍵付きの引き出しに入れて鍵を掛けました。


 今日着た服を脱ぎ、部屋着に着替える。先輩、洋服も褒めてくれたなぁ……。でもメイド服に視線を取られたのが悔やまれる。ニーソックスとミニスカートの間をガン見してた……。覚えておこう。


 一日を振り返っていると、お母さんから夕飯の呼び出しが聞こえてきました。


「今日の晩御飯は~、グラタンとミネストローネにフランスパンで~す」


「わぁおいしそう!」


「今日はパパ出張でお泊りなので、お母さんはワインを飲んじゃいま~す♪」


 熱々のチーズがたっぷりとかかったグラタンに、トマトたっぷりのミネストローネ、サクサクカリカリに焼きあがったフランスパンです。


 お母さんは上機嫌なのか、普段一人で飲まないのにワインを出して来ました。あれって確かお父さんが大事に仕舞っていた高級赤ワインだったような……。


 グラタンはチーズが蕩けて熱々です。こんな料理を先輩にも食べさせてあげたいな~。


「葉月ちゃんたら、ずっと彼氏いないって言ってたのに隠れて付き合ってたのね~。いつから付き合ってたの?」


 あれ、何かお母さんがおかしなことを言っています。


「いつからって……今日だよ?」


「……は? あれ、聞き間違ったかな? 去年から?」


 お母さんは何を言っているのでしょうか?


「もう酔っぱらったの? 去年じゃなくて今日です! 正確には5時間くらい前かな?」


「今日!? 5時間前!? だ、だってあんなエッチなキスまでしてるのに今日なの!?」


「もう! エッチなキスなんてしてません! 普通のキスです~」


「どういうこと!? ちょっと初めから聞かないとだめそうね……」


 何やらお母さん的に解せない事があるようです。普通ですよね?


「じゃあまずは彼氏くんの情報を教えて?」


「中野薫さん20歳童貞、アパートに一人暮らし、実家は埼玉でお兄さんがいるそうです。T大学の2年生で、同じ喫茶店でアルバイトをしています」


「まあまあ! 次男なのね~。でも童貞って本当なの?」


「ふふ、キスも初めてでした。童貞間違いなしです!」


 あれで先輩が童貞じゃなかったら、ショックです。


「キス……そうだわ、今日のデートの話を教えて?」


「この前、先輩が熱で倒れて入院してお見舞いに行ったんです。そのお礼で初めてデートに誘ってくれました」


「入院はちょっと心配だけど、本当に初デートだったのね……」


「そうです。それで待ち合わせ場所に行ったら、先輩だと分からないくらい大変身してました。なんでも昨日カリスマ美容師さんのところへ行ったらしいです」


「カリスマ美容師!? いいわね~」


 あの大変身はずるいです。キュンとしちゃいました。


「それで駅に向かおうとしたら、先輩が震える手で私の手を握ってくれて、混んでるから手を繋ごうって! あの時の先輩、プルプルして可愛かったな~」


「想像したら確かに可愛いわね」


 先輩の手から緊張が伝わって来て、私が強く握り返してあげたら安心した感じでした。ふふ、可愛いです先輩。


「そこから電車に乗ってるときもずっと手を繋いでいました。お昼ご飯を食べたイタリアンのお店までずっとですよ!」


「あら~!」


 先輩の手、大きかったなぁ。大きくて暖かかった。守られている感じがキュンとしました。


「それでお昼のパスタをあ~んしました。ちょっと恥ずかしかったけど、先輩からもあ~んしてくれました。先輩が中々ギブアップしてくれなかったから、食べ終わるまであ~んが終わりませんでした……」


「え? あ~んしたの? その時はまだ付き合って無かったんでしょう? しかも1回じゃなく何回も!? 食べ終わるまで!?」


「絶対に負けられない戦いがあったんです!」


「……」


 あれ? ちょっとお母さんが惚けています。あ~んなんて普通だよね?


「ご飯食べた後は映画館に行きました。ちびっ子ぐらしを見ましたよ。ほとんど覚えてませんけど……」


「ちびっ子ぐらしいいわよね~。あの可愛い動物たちがいっぱいで癒されるわ~。でもほとんど覚えてないの? もしかして寝てたの?」


「そんな訳ないです。カップルシートに座ったんですけど、暗い映画館の中で先輩が告白してくれたんです! 好きです付き合って下さいって!!」


「キャー!! 素敵じゃな~い!」


 あの時の先輩、素敵でした。まさか先輩が告白してくれるなんて思ってなかったから、嬉しかったです。


「その後、先輩がキスしてくれたんですよ!」


「カオルくんやるわね!! 告白からのキスはキュンとしちゃうわ~」


「お返しに私からもキスして~、色々あって映画が終わるまでずっとキスしてました」


「えっ!? ずっと!? 映画が終わるまで!?」


「そうですよ? まあ軽いキスですよ。あの映画短いですから、1時間くらいですけど」


「1時間も!?」


「お母さん安心して下さい。ちゃんと先輩には、エッチなのは私が卒業するまで待ってて下さいって言いましたから!」


「えええぇぇ! カオルくん可哀想に……」


 ふふん! 私もしっかりと貞操観念持ってますからね!!


「そのあと喫茶店に行ったんですけど、先輩が店員さんのエッチなメイド服を見て興奮していたので、ごめんなさいのキスをしてもらいました。浮気は許せません!」


「えええぇぇ! ごめんなさいのキス~!? でもほら、若い男の子がエッチなメイド服を見ちゃうのはしょうがないと、お母さん思うけどな~」


「そ、そうでしょうか?」


「うんうん。男の子はね、締め付けるよりも甘えさえる方が上手くいくのよ? ある程度は寛容にならないとダメよ~」


「わ、わかりました……」


 でも、エッチなメイド服は危険です!


「それで最後にゲームセンターでプリクラを撮りました。記念日の思い出です」


「記念日はいいわね! でも、あのプリクラの写真見ると葉月ちゃんからディープキスしてたわよね? 大胆ね~。カオルくんの顔が蕩けてたわよ?」


「ちょ、ちょっとだけ先輩が好きっていう気持ちが溢れちゃいました。エッチなメイド服を見てた先輩が悪いんです!」


「はぁ……カオルくん可哀想に。きっと今頃は自分を慰めているんでしょうね……」


「先輩は大丈夫です。私の事が大好きですから!」


 先輩とこんなに幸せになれるんだったら、もっと早く告白してくれたら良かったのに……。


「それで終わりです。あ、家まで送って貰ってお別れのキスしました。見られちゃったやつです……」


「あーはいはい。もうお母さんはお腹いっぱいで~す。どうしてこんな娘になっちゃったのか、頭を抱えてま~す」


「何を言っているんですかお母さんは。娘の成長を喜ぶべきでしょう?」


「う~ん、成長? しすぎちゃって困っちゃうわ~」


 お母さんは何が問題なのでしょうか? あれですか、告白してすぐにキスしたのが問題なのでしょうか? 好きになったら時間なんて関係ないと思います!!


 そうだ、最後にあれを聞いておきましょう。


「ねぇお母さん、先輩と同棲したいんだけど、どうしたらいい?」


 そうしてお母さんは固まってしまい、先輩との付き合い方や童貞がどうのこうのと、夜遅くまで説教されてしまいました。解せません。

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