第12話 他の人は生きてますか?
「どうしたんですの? 早く結果を教えてくださいな」
玲子さんから煽られる。めっちゃ笑顔でワクワクしてる。そうだよね、占いとか女子は大好物だよね。
まずいぞ、これを見せて良いのだろうか。そもそもこんな結果が出るなんて思ってもみなかった。
「なんだ? やばい事でも書いてあったのか?」
「いや、そんなことないよ? ちょっと悪意を感じるだけ」
「なんじゃそりゃ?」
ヤンデレって、あのヤンデレですか?
確かに玲子さんは、修二の事に対して独占的な部分もあるけど、ヤキモチを焼く可愛い感じだと思ってた。ヤンデレ度5%ってなら大丈夫だよね。うん、消費税より少ないもんね! でもこのままヤンデレ度が育つとやばいのか……。
「薫さん、早く書きなさい! はよはよですわ!!」
「はい!」
しょうがない、腹を括ろう。
ありのままを書き写し、テーブルのど真ん中に置いた。
もう、どうにでもな~れ♪
【
T大学2年生。
めっちゃ綺麗です! でもヤンデレです。
ウェーブのかかった金髪、スタイル抜群でモデルさんみたい~! でもヤンデレです。
実家がめっちゃお金持ちな社長令嬢様で~す。でもヤンデレです。
千葉修二とは恋人同士でラブラブです♡
ヤンデレ度5%
※今日の運勢※
彼氏を失いたくなければ、何が何でも中野薫の提案に乗りましょう。
但し、胸焼けにご注意を!
※今日のラッキーアイテム※
ボイスレコーダー
「ヤンデレ?」
「ヤンデレ?」
「……」
二人してこっち見ないでください。ありのままを書いたんですよ。僕が悪い訳じゃないですよ?
ここは誤魔化すしかないな。
「ほらほら、占いを見てよ。僕の提案に乗りましょうだって。やっぱりこっちが正解なんだよ! これが修二生存ルート!! わーい、やったね!!」
「薫さん? 何を勝手にヤンデレなんて付け足しているんですの?」
玲子さんの凍った笑顔が怖いです。がくがくぶるぶる。でも玲子さんに睨まれるのも素敵ですね。
「そんなことしてないよ! ありのまま書きました!! 玲子さんヤンデレ! おっけ~?」
「おっけーじゃありませんわ! 私がヤンデレな訳ないでしょう!?」
「ヤンデレはみんなそう言うんだよ! 玲子さんヤンデレ! おっけ~?」
「ぶち殺しますわよ!」
ぎゃおーん。玲子さん大暴れ。酔っぱらってるのもあって、いつもの清楚な玲子さんじゃない。葉月ちゃんみたいな事も言ってるし、もう手が付けられないぞ。
しょうがない、最終兵器彼氏を召喚するしかないな。
玲子さん、彼氏お借りします。
「修二助けてくれ! ヤンデ玲子さんが襲ってくる~」
「Zzz」
「寝るなー!!」
もうだめかもしれない。
◇◇◇
日付が変わり、二人を占ってみた。
もし2日連続で怖い事が占いに出たらまずいので、念のため玲子さんも占う事にする。
あと、玲子さんに鏡を借りて、自分も占ってみる。
【千葉修二】
※今日の運勢※
経済学の講義で小テストあり。選択肢で迷ったらBを選ぼう! 信じてニャン。
【天王寺玲子】
ヤンデレ度3%(-2%)
※今日の運勢※
女の子の日が始まるよ♪ ナプキンの用意を忘れずにね!
【中野薫】
※今日の運勢※
朝いちばんにあの子へお願いしてみよう♪
玲子さんのヤンデレ度が-2%されてました。きっとヤンデレって伝えて自制の心が働いたのだろう。これは伝えないでいいかな?
どうやら0時の日替わりで、占いの内容も変化するようだ。そう考えると、鑑定能力の一日の使用回数もリセットされるているのかもしれない。もしリセットされていなかった場合、今の占いで6回目の使用となる。
6回目だったら頭痛や目の奥の痛みなど、体調に変化が出ているはずである。とりあえず頭痛もなく、体調に変化が無い。一安心だ。
それにしても、僕は朝いちばんに何をお願いすれば良いのだろうか……?
内容に変化のないところは書かずに、メモ用紙を二人に渡した。
「テストあるのかよー。まあ迷ったらBだな。っていうか語尾おかしくね? ニャンって何だよ」
「良く分かんないけど、毎回違うんだよね。神様の気分かな?」
こう言う安全な運勢だと助かるね。ヘビーなのは困ります。
「薫さん? セクハラですわよ?」
「ええ!? ありのままを書いてるのに~」
「これだから彼女なしの童貞は困りますわ」
「そっちもセクハラだろー!!」
こう言う内容も困ります。何て書いたらいいんだろう?
「そろそろ帰ろうぜ。明日も1限から授業だろ?」
「そうですわね。今日は楽しかったですわ。薫さんの快気祝いに、支払いは私たちで持ちますわ」
「え!? ありがとう!! ご馳走さまでした~」
三人仲良く、楽しく飲めた。
大将に御礼を言って、店を出る。
「気を付けて帰れよ! 最近は物騒だからな」
「あざーっす!!」
お見送りしてくれる大将に、みんなで手を振る。
ここでみんなとお別れだ。
俺はここからすぐにアパートに着くが、二人は駅の反対側の、少し離れた場所に住んでいる。
「じゃあ薫、また明日な! いやもう今日か。とりあえずおつかれ~」
「おやすみなさい、薫さん」
「気を付けてね~!」
手を振りみんなと別れ、自宅に向けて歩き出す。久しぶりに三人で飲んだけれど、楽しかった。いつの日か、葉月ちゃんも誘って飲み会がしたいな……、がんばろう。
この時間でも繁華街は賑わっている。
――酔っぱらいの笑い声が聞こえる。
――客引きのお兄ちゃんの声が聞こえる。
そんな中、遠くから聞こえるサイレンの音が耳から離れない。
ちっぽけな僕の手では、身近な友人を守るだけで精一杯なのだ。無力な自分を慰めながら、ただ前を向いて自宅へ急ぐ。
どうか神様、一人でも多くの人が助かりますように……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます