第29話 1学期期末考査で彼に認められたい!③
あたしだって、負けてられない!
そりゃ、祐二くんは摩耶ちゃんと付き合っている。でも、付き合っているだけだ。
婚姻を結んだわけじゃないのだから、それをあたしの横という定位置に戻すことが何ら犯罪となるわけではない。
となれば、今まで行動してこなかったあたしだけど、これからは積極的に行動するまで!
とはいえ、さすがにこっそりと行動するのは、あたしのポリシーに反するので、ここは堂々と夕食時、みんながいる前で祐二くんに話しかけてみよう。
優紀ちゃんと一緒に帰宅した後、パーカーにジーンズという簡単な部屋着に着替えると、あたしと優紀ちゃんはキッチンへと向かう。
それにしても、優紀ちゃんは本当にいいところのお嬢様だ。摩耶ちゃんの家に比べれば、そこまでのお金持ちではないとはいえ、きちんとした佇まいに、礼儀作法……、見るからに良いところのお嬢様といった雰囲気が溢れ出ている。部屋着もワンピースなのだけれど、これが何とも可愛い。くそぉ、あたしが男だったら、間違いなく告白しているだろうね。
あたしはそんなことを思い、下校時に玉砕しかけていた
あれ? あたしってもしかして、あいつらの仲間入り?
何だか、それは嫌だなぁ……。
今日は鮭が安かったことから、焼き鮭をメインとして、そこに具だくさんの豚汁、栄養素を補うために小松菜の胡麻和えが副菜として付けられることになった。
あたしは鮭をオーブンに手際よくセットする。この家には黒崎先生も含めて、6人も住んでいる。魚焼きグリルで焼くには少々役不足なのだ。モード選択をして、スタートボタンを押すと、今度は小松菜を丁寧に洗い、こちらは4センチほどの大きさに切る。そして、沸騰させたお湯にサッとくぐらせる。ほんの数秒で、小松菜の緑色がはっきりと濃くなり、ザルに移し、水気を絞る。すり胡麻、醤油、みりんを加えた合わせ調味料と絡めて、完成だ。
そんなことをしている間に、優紀ちゃんは豚汁を用意していく。食べ盛りな高校生5人と大人1人ともなると若干、大きめの鍋で用意する。最初から余るようにして、明日の朝食に回そうという算段だ。
沸々と豚肉と野菜が煮込まれていく。出汁と野菜、豚肉の合わさったいい香りがしてくる。優紀ちゃんが野菜を一つ口に放り込む。「ホフホフ……」と言いながら、野菜の煮え加減を確認して、小さくうなずき、合わせ味噌を溶かしていく。
「さあ、出来たわね。皆さんを呼びましょうか」
「うん、そうね!」
食事は何かしら用事がなければ、みんなで食べようということで決まっている。これは祐二くんからの提案だった。みんながバラバラになって食べるのは、共同生活では必ず軋轢が生じるからだとか。
ま、あたしも祐二くんを摩耶ちゃんばかり独り占めしないでくれるこの方法を支持している。
ダイニングテーブルに配膳を行っていく。
「おおっ! 今日は豚汁か!」
黒崎先生が食いついてくる。この人は魔女なので、本来は食事を必要としないらしいのだが、味覚はあるから、食事そのものをすることは楽しいらしい。それに、勤め人であるため給与から食費を……しかも多めに入れてくださっているので、こうして、一緒に食卓に着いている。
「ほんや、ええ香りやなぁ~! ウチも豚汁好きなんよ」
服がはだけ過ぎて、もはやおっぱいまでポロリしてしまいそうな格好で藍那先輩がやってくる。
え、エロイ! これがエロスというものなの―――!?
てか、部屋で何をしていたら、こうなるのだろうか……。はっ! もしかして、祐二くんが食前にもかかわらず食べられちゃってる!?
黒崎先生と藍那先輩が、祐二くんを食べるのは今に始まったことじゃない。
藍那先輩に至っては、前世の魔法使いだったころからレベル上げのために、ゆ、祐二くんのアレをパクついていた。それにしても、みんなどういう性欲しているのかしら……。
て、摩耶ちゃんも入れたら、この家ってすごい性欲の持ち主の集まりなんだけど!?
遅れて、祐二くんと摩耶ちゃんがやってくる。とはいえ、祐二くんは自室から、摩耶ちゃんは2階から降りてきたので、さっきまで接触していたわけではないと見える。
みんなが席に着き、合掌する。
「「いただきまーす!」」
みんなで唱和して、早速食べ始める。
この生活も「部活棟事件」以来、学校から寮への復帰が認められないまま1か月が過ぎようとしていた。
合宿のようなこの生活も、最初は上手く立ち回らなかったこともあったけれど、役割分担を決めてからは、お互いが責任を持って取り組んでいるんので、今のところは回っている。
だけど、あたしの恋は上手く回っていない。
ちらりと前の祐二くんのほうに視線を送る。祐二くんは優紀ちゃんやあたしの料理を褒め讃え、ご飯のおかわりをしに行った。
各々が舌鼓を打っている。そして、夕食も終わりかけとなった頃合いを見計らって、
「ねえ、祐二くん」
「ん~? どうした?」
「今度の期末の理系教科を教えてほしいの」
「あ。中間の時のような感じか?」
「うん!」
「そうだ――――」
「――――ダメよ!」
突如、割って入ってきたのは、自称・本妻こと摩耶ちゃんだった。
摩耶ちゃんは食後のコーヒーを飲みながら、あたしのほうを睨みつけてきたのであった。
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