第28話 約束のお風呂タイム♡②

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 カポ―――――――――――ンッ…………

 今、俺はなぜか浴室にいる。

 いや、普通に入浴時間だから、何も問題ないのだが………。問題はそこではない。

 まさか、まさか、まかさ―――――――――!!!

 夕食のときに、江奈があんなことを言い出すとは思ってすらいなかった。

 あの瞬間、久遠寺さんお手製の濃厚クリームシチューを吹き出してしまいそうになった。

 少し話が逸れるが、久遠寺さんが作ってくれる料理は、どれもが本当に絶品だ。

 久遠寺さんは率先して、厨房担当になってくれている。

 本来であれば、みんなで分担すればいいのだが、友理奈が果たして食事を作れるのかどうかは定かではない(そもそも、厨房に立ったことあったか!?)。友理奈は作るけれど、お菓子が多いということで、たまにハウスみんなにクッキーを振舞ったりしている。藍那先輩は、「コンビニ飯で生きてきた」という何とも料理に関しては絶望的な返事が返ってきた。黒崎先生は「私はそもそも精気さえ、吸っていれば本来は食事をしない」というさすが魔女という返事だった。ちなみに、俺はというと、そこそこは作れるが、人に振舞うレベルではないので、辞退させてもらった。

 と、いうわけで、厨房担当は久遠寺さんになった。

 もちろん、久遠寺さんにすべてをしてもらうことはできないので、他の雑務(ごみ捨て、風呂掃除、部屋掃除、買い出しなど)は俺たちですることになっている。

 久遠寺さん本人は、料理が好きだから、全然苦痛ではないというが、彼女は学級委員でもあるのだから、どちらにしてもあまり負荷がかからないようにしてあげることも重要だと思う。

 閑話休題。

 俺にとっては、江奈の「お風呂一緒に入ろっ!」という発言の後の食事は、まったくと言って、味を感じなかった。

 ああ、最初の濃厚クリームシチューの味を続けたかった。

 なぜならば、前には満足げな江奈の姿。

 そして、横にはジト目で殺意で俺の精神をゴリゴリと削ろうとする友理奈。

 さらに周囲には、「あらあら……」という感じながらも何か事情を知っているであろう表情の久遠寺さん。「ウチも一緒に入りたい」と言いつつも、黒崎先生に脇腹を殴られて、撃沈している藍那先輩。最後に無言ですべてを悟りの境地のような表情で俺を見ている黒崎先生(確か、あなた仏ではなく魔女でしたよね!?)。

 こんな状態だった。

 1学期中間考査で約束したことだったので、こればかりは仕方ない。

 とはいえ、友理奈のいる場所でいうことはなかったのではないか!?

 結局、俺は江奈の提案を飲み込まざるを得なかった。

 あれ? でも、あのとき、久遠寺さんとも約束したけど………。まあ、そんなことは今はどうでもいい(……のか?)として、取り敢えず、久々の幼馴染とのお風呂……とはきもちがなれない。

 だって、江奈は幼馴染といえども、もう高校生だ!

 小学生の時に一緒に入ったね~! というお子様の延長線上で入るにはいささか問題がある。

 そ、そう。彼女の体形は一気に大人の階段を上りつつあるのだから―――。

 ぼんやりと服装から想像できる体形がふわふわと頭のなかに描かれる。なんとも、エッチなシルエットだ。

 い、いや、ダメだ! 俺は何てことを……考えているんだ。

 女の子の裸を見たのは、先日、友理奈をラブホテルで愛し合ったときに見た。触れた。そして、味わった。藍那先輩や黒崎先生とは何度か、事を交えたことがあったが、これは明らかに俺が襲われている立場で、女の子と触れ合うなどというものではなかった。

 俺はどう乗り切ればいいのだろうか。

 友理奈が妨害に来るだろうか、とも思ったが、夕食後はダイニングから姿がなかった。

 その場にいた黒崎先生に訊くと、「ちょっと空気を読んで、縛り付けておいた。今頃、藍那とSMプレイでもしているだろう」と何とも恐ろしい発言に一瞬引いてしまった。友理奈が新しい窓を開いていないことを願うばかりだ。

 そんなことを考えているうちに、脱衣所兼洗面所に人影が現れた。


「ゆ、祐二くん……」

「え、江奈か?」

「う、うん……」


 江奈はさすがに幼馴染の俺であっても、肌を見せるということに戸惑いがあるのだろう。恥ずかしそうな返事に空気が少し重くなる。

 俺はどういう声をかけてあげればいいのだろうか――――。

 シュルシュルと衣擦れの音がして、服を脱いでいることが伝わってくる。

 俺は思わずゴクリの唾を飲んでしまう。

 と、同時に約束したとはいえ、友理奈という彼女がいるのに、こんなことをしていいのだろうか、という罪悪感にさいなまれる。

 浴室のドア越しに肌色の人の姿のシルエットが映し出される。


「お、お兄ちゃん、入るね!」

「お、お兄ちゃん!?」


 思わず俺は尻もちをつき、開かれたドアから入ってきた江奈の裸体を下方から見上げるようにマジマジと見てしまった。

 だって、江奈は、タオル一枚もつけずに入ってきたんだから――――!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る