第22話 お出掛けデート(同居~ズは見逃さない!)③

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 私・黒崎柚葉は魔女だ――――。

 以前は「黒之魔女フィア」と呼ばれていた。私の姉がかの有名な「白之魔女リジェ」だ。

 私はサキュバスを依代とする魔女で、若くて逞しい男の精力を月に何度かは吸っている。

 もちろん、事件にはしたくないので、死なない程度だ。

 それに今、勤務している聖天坂学園という学校は、その点、学生が多く、いくらでも気づかれずに精力を喰うことができるので、私の命が尽きることはない。

 姉は私とは違って、死神を依代としているため、精力を喰わなくても生きながらえる。

 その代わり、人の命に対する扱いも煩雑であると言わざるを得ない。

 それは、もはや玩具を扱う様に近い。

 壊れたら捨てる、だ。

 私はそんな姉を慕いはしているものの、尊敬の念は持ち合わせていない。しかし、姉は魔王が勇者によって倒されたときに、なぜかその存在そのものが消えてしまった。

 が、普通、術者が亡くなれば、呪いが解呪されるはずなのに、神楽や摩耶に掛けられた呪いは解けている様子がない。

 「白之魔女リジェ」が何を考えているのか分からない……。

 とにかく、私ができることは、転生組の呪いを解除することだ。とにかく、今、目の前でイチャラブ……というかすでにセックスの前戯のようなことを公衆の面前で続けている神楽と摩耶の恋路を成就してやること。

 これが私としては、姉が行ったことに対する償いにもなるかもしれない……。

 ―――――何て真面目なことを考えていたけれど、ちょっとあの二人は異常かもしれないと今、気づき始めている。

 隣にいる、洞泉と藍那が明らかに興奮している。

 そりゃそうだ……。

 目の前にいるバカップルこと、神楽と摩耶の2人は、夕陽の見えるロマンチックなロケーションの中で、周囲を視線……といっても周囲のリア充どもも、気にせずに乳繰り合っているので、気にはしていないようだが、とにかく公衆の面前で前戯を始めていたりするのだから……。


「せ、先生!? あ、あれはやり過ぎなのでは……?」


 私の隣で、純粋初心な洞泉が顔を赤らめて両手で顔を覆っている。が、目の部分を開けていたら、それは凝視というものになるのだぞ!?

 さらにその隣りの藍那は前世でも神楽とセックス経験があるからか落ち着いてはいるものの、恥辱の展開に興奮気味だ。

 頼むから股に手を伸ばすの止めろ! ここで自慰行為は禁止だぞ!

 それにしても、やはりおかしい。

 神楽とのキスによって、転生組女子(摩耶、洞泉、藍那、久遠寺)は一時的に強制的な性的欲求という発情状態になる呪いが「白之魔女リジェ」から掛けられた。

 洞泉は一人で興奮状態を自慰行為によって抑え込んでいるようだ。

 藍那は自慰行為や神楽を襲うなどして解消している。

 久遠寺は洞泉同様に自慰行為によって抑え込んでいるようだ。

 ところが、それくらいで収まらないのが摩耶なのである。

 摩耶は以前、部室棟崩壊事故のときもそうだったが、彼女の性欲はおかしい。自慰行為で止まっているとはいえない。

 そこで私の推測だが、摩耶友理奈は「白之魔女リジェ」によって愛を成就できないように二つの呪いが掛けられたと言ってもよい。

 まずは、強制的な性的欲求という発情状態になる呪い。これはかなり脳内がエッチのことしか考えられないようなレベルまで引き上げられたものを呪いとして出されたのだと思う。

 そして二つ目が、神楽とセックスをすると、摩耶の命が潰えるというもの。

 この二つの呪いが、摩耶を確実に死に至らしめるような構図になっているのだ。

 そこで私が考えたのが、果たしてどこまでやってしまったらアウトなのか……ということ。

 挿した瞬間にアウトというようなことはないと思う。それならば、自慰行為でバイブなどを使った時点でアウトということになる。

 では、でしてはいけないのか? と、考えたとき、普通に高校生ならばコンドームは使うだろう……。とはいえ、それだけで抑えられるのであれば、コンドームでし放題ということになる。んんっ、失礼。言葉がちょっと酷かったような気がする。

 そこでひとつの結論に至った。それは、神楽のモノを摩耶に挿入したことが魔力探知でも引っかからなければよいというものだ。

 では、どうすればいいのか。


「ところで、黒崎先生のアイデアって何ですか?」

「んふふ。神楽のモノが摩耶に挿入されているということを別のものを挿入しているという偽装を行うことにしたの」

「ええっ!? それってどうやるんです!?」

「んふふ。すでに神楽には私から一箱、コンドームを渡してあるの。このコンドームはね。魔力をふんだんに込められていて、魔力探知が回避できるようにしてあるの。だから、二人はお互いでエッチな行為をしていて、普通に感じあっているんだけれど、呪いにとっては、バイブを挿入しているくらいにしか分からないっていう偽装をしてあるの」

「な、何だか、黒崎先生の能力の無駄遣いですね……」

「無駄遣いって言うな! これも立派な黒魔術なのよ」

「でも、それだけで大丈夫なんでしょうか……」

「うーん。だから、彼女の身を守るために、神楽から摩耶に渡してもらうはずのものにも少しばかり細工をしておいたのよね」

「細工……ですか」


 洞泉が私を疑心暗鬼の表情で見てくる。

 私はニヤリと微笑み、


「安心しなさい。摩耶は死なないわ。呪いを解呪するわけではないけれど、きっと守り切ることはできるはずだから……」

「その言葉、信じるで。ところで、先生、そのコンドームは何個入りを渡したんや?」

「え? 普通に六個入りよ」

「ほうほう、そうなんかえ……」


 藍那が何やら考え込み始める。

 一体、何に問題があるというのだろうか。


「ところで、あの二人が絶倫で6回で終わらんかったら、どないするつもりなん?」

「「…………え?」」


 私と洞泉は、目を点にしてしまう。

 いや、6回だぞ!? 普通、それ以上は無理だろう! どんな性欲の持ち主なんだよ!


「若いっていうのはすごいことなんやで……」


 シミジミと虚空を見上げて、悟りを開こうとする藍那。だが、頬に一筋の汗が流れているのを私は見逃さない。


「ちょ、ちょっと待て。藍那は神楽と何回くらいしたことがあるんだ?」

「現世では1回やで。でもな、前世では10回ほどは逃がしてくれへんかったわ……」


 いや、ポッと頬を赤らめて恥じらってんじゃないわよ!

 あ、洞泉が気を失いかけてる!? 白目を剥いて、「十回……十回……。耐えれるかな……」などと呟いている。


「さ、さすがに今のアイツにはそこまでは……」

「そんなん分からへんよ。だって、あの子らにとってはなんやし……」


 そ、そんな馬鹿な……。

 そんなことなら、大箱タイプを渡しておくべきだったのか!?

 いや、大箱タイプにしたら、私の魔力が底を尽きてしまうではないか!?

 正直、6枚入りでも十分、魔力量としてはカツカツだったのだから……。


「さ、さすがにそんなにはやめてくれよ……、神楽……」


 私はさらにイチャイチャ度が増す二人を後ろから見つめながら、呟いた。

 摩耶は神楽に舌を絡めつつ、蕩けた表情で神楽を受け入れる準備が為されつつあった。

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