第19話 お出掛けデート(ランチでピンチ!?)①

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「な、なあ……友理奈……」

「な、何よ……?」


 私は濡れた髪を祐二から貸してもらったタオルでグシグシと拭く。

 バンドウイルカにしてやられたわ……。

 まさか、あんなに水をかけてくるなんて思ってもいなかった。

 結果的に、私たちはずぶ濡れ。


「お前、今日、そんなエッチな下着着てたんだな……」

「――――――へ?」


 私は間抜けな声を上げると同時に、視線を下に落とす。

 今日着てきた服は、江奈とセレクトした服だった。上は白っぽい色で、ずぶ濡れになったおかげで、下着がうっすらと透けている。

 ちなみに下着も江奈セレクトだったりする。




 私の家でデート服をセレクトした日のこと―――。

 私は江奈と選んだ服を着合わせしてみて、姿見でポーズを取ったりしてみる。


「ありがとう、江奈! これで服装もばっちりだね」


 私としてはとても満足だ。

 今まで自分ではしたことのないようなカジュアルな着合わせだ。

 私にとって、普段着と言っても、どちらかというとお嬢様感のぬぐえない服装だった。

 うん! 動きやすいし、この服装だとスニーカーとも合いそうだ。

 しかし、江奈はそれだけでは満足しなかった。いや、するはずがなかった。

 江奈は私の全身をじっくりと眺めた後で、両手をパチンッ! とたたいて、


「友理奈は本当にそれで満足なの?」

「え………? う、うん。だって、これで街中でもお嬢様感は無くなっていいかと思うんだけど」

「うん。確かに、お嬢様感はなくなったよ。でも、『女』としてそれでいいの?」


 江奈は私に顔を近づけて、意味深なことを言い出す。

 いや、普通に服装としては女の子らしさは十分に引き出されていると思う。

 そもそも私に魅力がないとでも言いたいのだろうか……。

 自分でいうのもなんだけれど、私はそこそこ可愛いと自負しているのだけれど、こういう言い方をされると少し膨れてしまう。


「あ~、怒っちゃダメだって……。そういう意味で言ったわけじゃないからさ」

「じゃあ、どういう意味よ?」

「友理奈はあたしにとって、恋の好敵手ライバルなのは分かってはいるけれど、これは敵に塩を送るつもりで言うわ。祐二は案外キスとかは積極的かもしれないけれど、エッチに関しては奥手だと思う!」

「あー、それは思うかも……」


 私は微妙な顔をしながら、納得してしまう。

 確かに最近は私が彼の布団に的にお邪魔すると、キスはしてもらえる。

 でも、いざ、私の体に触るとなると、どうしても抱きしめてくれるだけで、エッチなことはそれ以上してこない……。


「で、でも、まだ付き合い始めたばかりなんだし、これは普通の距離感なんじゃないの?」


 そう。私たちはまだ高校生なのだから、健全なお付き合いをしなくちゃ……。

 で、でも―――――――。


「じゃあ、紗理奈先輩とはエッチしちゃってるけど、いいの?」

「がぁ――――――――――――――――んっ!!!」


 そうだった……。祐二の童貞は紗理奈先輩がもらっちゃったんだよね……。

 私たちが頑張っても、あの淫乱女紗理奈先輩には「初めて」という点では敗北者なのだ。

 じゃあ、私たちにとって、次なる行動は……となると、祐二に誰がいち早く自分の「初めて」を捧げるのか、ということになるのである。

 とはいえ、そこには乙女心というものもある。

 自分から祐二を襲ってしまえば、早く初めてを捧げることができるけれども、それは何とも味気のない話だ。

 やはり、祐二にリードしてもらって、自分は甘える感じで彼に初めてを許したいのである。

 が、そんな悠長に言っていられるわけもない。

 だって、今、すでに同じ屋根の下に住んでいるわけだから、誰だって彼に手を出すことができる。

 目の前にいる江奈だってそうじゃないか。

 彼女も幼馴染という立場ではあったものの、今は祐二のことを恋愛対象として見ているわけだ。

 だから、こうやって手伝ってくれているとはいえ、隙あらばきっと祐二を手に入れようとするだろう。

 この間の勉強会のように…………。

 あれはしてやられた。まさか、あんなにべったりくっついて勉強できるなんて……。ああ、羨ましい!!

 だから、私は後手を踏んではいけない。常に先手を取り続けるくらいの気持ちを持っていないといけないわけだ。


「わ、私も、そ、その……自身の魅力を引き出したいです」

「うんうん! 素直でよろしい! 実は、あたし、すごい武器を見つけちゃったんだ!」


 はて? 我が家に祐二を堕とせるような武器などあっただろうか?

 私は思案顔になりながら、江奈の方を見る。

 江奈は不敵な笑みで私に近づいてきて、背後に隠してあったものを、バーンッと取り出す。


「そ、それは………!?」

「友理奈ってば、すっごくエッチで大人な下着を持っていたのね……」


 含み笑いをしながら、チラチラと私の目の前に下着をちらつかせる。

 私のクローゼットの奥に履かずに片付けてあった下着を見つけられたのだ。

 ふ、普通の下着ならば、こんなに焦る必要もない。でも、この下着だけは看られたくなかった。

 色は黒で、ブラジャーはフリルが付いている。それだけならば、普通かもしれない。

 問題はその生地が網のようになっていて、私の双丘の先端を隠す気がないようなデザインなのだ。


「これはこれは……さすがのムッツリスケベな友理奈……。めちゃくちゃ攻撃的ね」

「だ、誰がムッツリスケベよ!」

「ふふふ、知ってるわよ。週末の通い妻の平日の情事を……」

「ううっ…………」

「友理奈の隣があたしの部屋だから、よく聞こえてくるのよねぇ……」

「―――――――!?」

「そんなに乳首が気持ちいいの?」

「お、お願い! それ以上、攻めてこないで!」

「じゃあ、この下着で過ごしちゃえばいいじゃない」

「ええっ!? これを上下とも付けるの!?」

「そりゃ……まさか、友理奈ってノーパン派!? それはもはや露出狂と一緒……」

「ちーがーうー!! 私がそんな変態な趣味持ってるわけないでしょ!」

「いや、あながち……」

「持ってない! と、とにかく……こ、この下着を着ればいいのよね?」

「そうよ! きっとこの下着を着たままで、ホテルに行けば、奥手な祐二くんであっても、獣に化けると思うわ!」

「………け、獣!?」


 私は手渡された下着を見つめながら、思わずゴクリと唾を飲み込んだのであった。

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