第64話 事後、そして… 4

 帝都法皇クロノ家本宅。


 末席傍流だった騎士ロディマス=クロノは順調に陞爵を重ね伯爵位となりました。


 本家当主たる姉上法皇キティアラが発起人となって開かれた陞爵記念パーティは、王太子ルシアン殿下に宰相ルキアル閣下、皇女リスティア殿下も御出でになる、帝国史にも残る宴となったのです。


 主役のお二人の、初々しくも引き攣った笑顔がとても印象的でした…。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「終わった~」

 疲れてベッドにひっくり返ったロディを見て苦笑しつつカミーユも、流石に今夜は気疲れが酷く感じていました。


「ミルクティー飲む?」

「ぜひ!」


 彼の為に手早くお湯を沸かす。

 フフ、まるで新婚初夜みたい。そう思って赤面してる私も、側から見ればお笑い種なのかも。


「はい」

「サンキュ」


 ベッドに腰掛け直しロディはお茶を飲む。

 マナー的にはどうだろ。でも、ここはくつろぐ処だよね。


「カミーユも大変だったよね。そのドレス、窮窟じゃない?」

「まぁね。じゃ着替えてくるね」

「ここで着替えたら?」

「エッチ!」


 私は着替える為に隣の部屋へ。

 確かに、着替えを見られる事も抵抗ないし、その、そのままベッドに押し倒されても多分受け入れる。

 拒む理由なんか無い。


 でもロディは照れ笑いで見送ってくれたし、成人前の婚前交渉は後々面倒な事にもなりそう。


 夜着とまではいかなくとも、ゆったりとした普段着で部屋へ戻る。


 彼は寝てた。

 礼服脱いで下着姿で。しかも脱ぎ散らかし。


「だらしないですよ、伯爵様」

 床の礼服をとると、取り敢えず畳む。

 とは言えクローゼットの中に入れる訳にもいかないよね。


 うん?

 何か視線を感じてベッドを見る。


 彼が嬉しそうに、やや赤面してコッチを見てた。


「起こしちゃった?」

「いや、その。ごめん、服。その、なんかさ、本当にカミーユが奥さんみたいで」

「うん。私も、そのつもりだよ」


 応えてから、やっぱり私も赤面。


 束の間の、幸せな一時を私達は過ごしたの。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


 西の国境。

 モルド辺境伯の領地は、今ベルン王国と国境を接している。先のミリシア・ベルン戦争で決着した新たなる国境線。

 クルタイ平原の先には、古い迷宮がある。

 地下50階を誇るこの迷宮の名は『ドリガナ迷宮』と呼ばれ、迷宮守護者ダンジョン・ボス銀獅子シルバーレオと呼ばれるランクSの魔物。


 その迷宮に異変有り!

 オレへ名指して依頼が来たんだよ、また。


「異変って?」

「魔物の凶暴化と攻撃力UP、種類も増えてるらしい。今迄確認出来なかった種類が急に、ここ数日で見かけていると」

「それ、前にも言った『迷宮核晶石ダンジョン・コア』への細工じゃ?」

「そう思う。彼処の魔物のランクは元々高い。魔物暴走スタンピードが起こった日にゃどれだけの惨事になるか」

「それを止めろ?それとも確認?」


「両方だろ。よ、またご一緒するぜ」


 振り向いた先にいたのは『裁きの刄』の皆さん。

「向こうで『光速』とも合流する。が、ラスボスが銀獅子って分かってるからなぁ。頼むぜ、主戦力」


 銀獅子相手。

 多分、従魔含めての総力戦だよ。


「どうよ」

「勝てるとは言い切れませんが、抑え込む位は出来ると思いますよ」

「充分すぎるよ」

「ホント、驚きだわ」


 「あ、今回は国境での話だからさ。コッチだけじゃなくベルンにも被害が及ぶかもしれない。だからアッチからも腕利きを出す事で話がついてる。王国随一の冒険者だそうだ」

「それ、まさか」

「『地上の星』って言っていたが、彼等も異世界人エトランゼなんだよな」

「ええ。我々の世界でもTOPクラスの実力を持つパーティですよ。マジか」


 『地上の星』との共闘?

 状況としては有り得るけど、マジで?


 後でカミーユに話したら、自分も行きたいって。承諾出来る訳もないし、一応確認した。オレの正体がバレた時にカミーユの状況はどうするかって。カミーユは話しても良いって言ってた。ビーナスとは同じ学校で仲良かったし、転生とは言え自分がこの世界レムルに生きてる事を知れば安堵するかもって。


 まぁ、バレないに越した事はないけど。


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「元はミリシアの街とは言え、善良な民の街。王国としても見殺しには出来ない。人民の避難及び街の守護に近衛師団を1個送ります。その上で迷宮探索及び原因究明。場合によっては迷宮守護者ダンジョン・ボスとの戦闘と迷宮核晶石ダンジョン・コアの破壊を依頼します」

「勿論ですよ、ハンス王太子殿下。此処は依頼ではなく命令でも構いません」

「貴方方は王国の家臣ではありません。王国に手を貸してくれる冒険者です。よろしく頼みます」


「「「「「御意」」」」」



「噂のテイマーと共闘か。面白くなってきた」

「同感」

「銀獅子相手って、どうしようかと思ったけど、どうやら勝機見えてきたジャン」

「皆の護に専念出来そうね。うん、『光速』は流石に迷宮守護者ダンジョン・ボスとの戦闘には加わらないでしょうし、なら10人?何とかなるわ」

「儂も単体攻撃呪文だけを考えれば良いのぅ。フム、魔力も何とか持ちそうじゃな」


 ロディマス=カロン・クロノ。

 お前が、もしジュピターならば、俺の戦いに合わせられる筈。この共闘はまたとないチャンスだ。


 実に楽しみだよ。

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