第172話 失われた聖地と深淵の叡智
「ニャ、ここに居たのニャ」
「ニャット!」
お供えを終えて夕ご飯の準備をしていたら、何故か魔物の討伐に向かった筈のニャットがやって来た。
「何でここがわかったの!?」
「美味ャー飯の匂いがしたのニャ」
ああ成程、そういう事ね。
◆
「じゃあ魔物の方はもう大丈夫なの?」
私達はお互いのこれまでの状況を伝えあっていた。
「ニャ、この辺りの村から外れた場所に魔物寄せを撒いて魔物をおびき寄せて一掃したのニャ。新しくくる魔物もそっちに引き寄せられるから、あとは近隣に居る連中を纏めて叩くだけニャ。それが済んだらこの土地の連中が魔物達がやって来る原因の場所を調査して、良い感じに解決するのニャ」
なんか最後だけめっちゃフワッとした解決案だけど大丈夫なのかな。
「それで、おニャーの方はどうだったのニャ?」
「あ、うん、こっちはね……」
「……ニャる程ニャ。ニャー達が出かけた後で近隣に残っていた魔物に襲われたのニャ」
私はここに来るまでに起きた出来事をニャットに説明する。
「それでこの廃墟に残っていた祭壇にお供え物をしたら、結界が張られて魔物から私達を助けてくれたみたいなの」
「ふむふむ」
説明を聞き終えたニャットは成程と頷く。
「これもめぐり合わせだニャア。もともとここは今回の件が落ち着いたら連れてこようと思っていた場所だったのニャ」
「え!? そうだったの!?」
というかニャットここの事を知っていたの!?
「ここは失われた古い民の聖域なのニャ。この辺りで語り継がれてきた女神の巫女も、もとを正せばこの地に暮らしていた連中の話なのニャ」
へぇ、そうだったんだ。
「って事はニャットがこの土地に連れてきたのって、故郷を見せる為じゃなくて私をここに連れてくるのが目的だったの?」
「まぁそういう事にニャるのニャ。おニャーの力は不完全ニャ。突然思い出したように新しい力が使えるようにニャるのもおニャーが加護を完全に制御できていないからニャ。だからあのバ……女神に本当の意味で縁のある土地に連れてくれば、多少は制御が効くようにニャると思ったのニャ」
ほえー、そんなことまで考えてくれてたんだ。
「あっ、制御と言えば、さっき新しい力が使えるようになったよ!」
そうだった。さっきまで延々御供え物を備えていたおかげか、私は新しい力に目覚めたのである。
「ほほう、さっそく効果があったみたいだニャ。それで、どんな力なのニャ?」
「うんとね、検索機能が使えるようになったみたい」
「検索? 聞いた事にゃい加護ニャ」
まぁねぇ、これだけだと何が何やらだよね。
「それがね、私が何か作りたいと思ったら、それを作るのに必要な素材が分かるようになるみたい」
「ほほう、ニャルほどニャア……ってニャに!? そりゃどういう事ニャ!?」
ニャットが尻尾をブワリと立たせてこちらに詰め寄ってくる。
「ええと、例えば高品質ポーションを作りたいと思うじゃない。そうすると通常品質のポーションを複数合成する必要があるとか、蛇毒の解毒ポーションを作りたい時は普通のポーションと処理した蛇毒が必要みたいな感じで、必要な物が分かるようになったんだ」
そしてこの能力のキモは、私が作りたいものを具体的に理解していなくても良いというものだった。
こういう効果を持った品を作りたいと思ったら、ならコレだねって感じで自動的に欲しいアイテムを検索してくれるのだ。
「あと作りたいアイテムに必要な素材を作る為に必要な素材も分かるみたい」
うん、さすがにこっちは私も驚いた。
Aのアイテムを作る為にはBとCの素材が必要なんだけど、Bは持っているけどCが無い場合、Cの素材を合成する為に必要な素材を検索機能が教えてくれたのだ。
多分Cの素材を作る為に必要なD、Eの素材を作る為に必要な素材とかも分かるんじゃないかなコレ。
ニャットが無言で私の両肩をガッシリと掴んでくる。
「……カコ、分かってると思うが、このことは絶対、ぜーったいに」
「わ、分かってる。人には言うなって言うんでしょ?」
「ニャ」
ですよねー、さすがに私にも事の重大さは理解できるよ。
何せこの能力を使えば、それこそゲームのお約束、最高の回復アイテムエリクサーすらあっさり作る方法が分かっちゃうんだもん。
それこそゲームの攻略サイトを検索しているようなもんだよ。
そんな超絶レアアイテム作り放題人間が居るとバレたら、世界中の悪党に狙われちゃうよ。
最悪、もっと卑劣な事に力を利用されちゃうかもしれないしね。
「ああー、予想以上にとんでもニャー力が目覚めちまったのニャ……くっ気遣いが完全に裏目に出たのニャァ。こんな事ニャら連れてくるんじゃなかったのニャ~」
そう言って頭を抱えるニャット。
なんかゴメンねぇ。
「うーむ、どんどん安息の地探しが遠退いていってる気がするよ」
「誰の所為ニャーッ!!」
私の所為じゃないよ!? 勝手に使えるようになっただけなんだから!
「あっ、それなら私達精霊の郷に来る?」
「精霊の郷?」
と、話を聞いていたミズダ子からなんともファンタジーな申し出が。
「精霊の郷ってどんなところなの?」
やっぱ精霊が暮らす場所だし、凄く幻想的でキラキラしたところなのかな?
「私の郷は深海の底にある光も射さない場所にあるのよ。何にもないけど悪人もやってこれないわよ」
「「却下ぁぁぁぁぁ!!」」
そもそも水圧で死ぬわぁーっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます