第9話 モフモフと魔法の鞄
「と言う訳で実験の時間です!」
市場から帰ってきた私とニャットは、部屋のベッドに荷物を並べてゆく。
「一体何をする気ニャ?」
「こちらに取り出したのはお昼に買った魔法の袋です」
「さっきの詐欺のヤツだニャ。その金があればもっとマシな普通のカバンが買えたニャ。そんでおつりで美味い肉が食べれたニャ!!」
うん、重要なのはお肉のほうでしょ。
「うん、だから試したい事があって買ったの。ちゃんと本当の相場よりちょっと安くしてもらったから損はしてないよ」
「すぐ壊れるボロ袋を買った時点で損をしてるニャ」
「だからこれから実験するんだって」
何考えてるんだコイツって見てくるニャットを尻目に、私は引き続き市場で買ってきた品を並べる。
「そしてこちらが市場で買った頑丈で質の良い布です」
広げた布はジーンズの生地みたいに頑丈で、簡単には壊れそうもない。
そんな布が10枚ほど。
「それをどうするつもりだニャ? 言っておくが魔法の袋を繕っても治らないニャ。それは袋自体に魔法が込められているから、補強しても意味がないし、下手なことをしたら魔法が壊れるニャ」
同じように魔法の袋を直そうとして何人も失敗してたとニャットは言う。
「うん、それはさっきの話から予想してたよ。でもね、この魔法の袋に頑丈な質の良い布を……合成!!」
私は両手に持った魔法の袋と布を合成スキルを使って合成する。
「ニャッ!?」
一瞬ピカッと光ると、そこには布の姿はなく、魔法の袋だけが残されていた。
「そして鑑定!!」
私はさっそく残った魔法の袋を鑑定する。
『状態の悪い魔法の袋:すぐに壊れはしないが早く修理した方が良い』
よし、ちゃんと魔法の袋のままだね。
「今のがおニャーのスキルかニャ!?」
私のスキルを始めてみたニャットが目を丸くしている。
「そうだよ。更にこの魔法の袋をもう一枚の質の良い生地と合成&鑑定!!」
再び魔法のカバンを丈夫な布と合成し、鑑定する。
『すこし状態の悪い魔法の袋:中古の魔法の袋。あまり乱暴に扱うと壊れる』
「よっし、成功!!」
予想通り! スキルで良い布と合成すれば袋自体の強度も直るんだ!!
同じ素材同士を合成したら素材の質が良くなったから、布系の素材同士ならいけると思ったんだよね!
「成功って、まさかおニャーのスキルで魔法の袋を直したのニャ!?」
私の様子から魔法の袋を直したんじゃないかを察したニャットが問いかけてくる。
「うん、私のスキルを使って魔法の袋と質の良い頑丈な生地を合成する事で、袋の布地を強化したんだ」
「そんな事が出来るのニャ?」
信じられないとニャットが目を丸くする。
「へっへー、それを実験する為に買ったんだよ。あとは残った質の良い生地同士を合成!合成!合成!そして鑑定!!」
実験が成功した事を確認した私は、残っていた質の良い布同士を合成していく。
『最上級の頑丈な生地:この糸で作れる中では最高品質の生地』
「よしよし、あとはこの最上級に合成した生地を魔法の袋に合成!! そして鑑定!!」
『非常に状態の良い魔法の袋:新品同様の魔法の袋。非常に頑丈な生地を使っているので多少乱暴に扱っても壊れはしない』
私の狙い通り、魔法の袋は新品同然に修理が出来たのだった。
「やったー! 金貨一枚で新品同様の魔法の袋をゲットォーッ!!」
「ニャンと……」
ニャットは目を丸くするのを通り越してポカーンとしている。
「へっへー、私のスキル凄いでしょ?」
私は新品同様になった袋をニャットに見せつける。
「これは……トンデモないスキルだニャア……」
けれどニャットは驚きよりも難しい顔になる。
「おニャー、絶対人前で、いや誰かに見られるかもしれない場所でその加護を使うニャよ?」
と私に強く警告してきた。
「分かってるって。バレない様にこっそり使うから」
前にニャットに注意されたから、それについてはこっちも承知している。
けれどニャットはこちらの言葉を全く信用していないのか、眉をひそめてため息を吐いた。
「……ハァ、ニャーが守るしかないニャア」
いや何さその反応。ちょっと失礼過ぎない?
「でもこれで調味料を沢山入れられるから、旅の間も美味しいご飯が食べれるよ!」
「でかしたニャ!! おニャーは只者じゃないとニャーは思ってたニャ!!」
「お、おう……」
ニャットの受け入れポイントはあくまでご飯の事だけなのね……
さすが美味しいご飯と戦いの名誉しか興味のない種族だわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます