第23話 立て直し
「なんとか間に合ったな」
正面の触手を全て防ぎつつ魔力切れを起こして倒れそうになった白銀を支える。
目測100m程離れた位置でどこから持ってきたか分からない趣味の悪い髑髏の椅子に座るリッチを見つけた。
「あのリッチ多分イラだよな・・・完全にエリシアが浄化したと思ったんだが生き延びてたか」
「お前は味方なのか?」
気づくとカリュアス団長が近くまで寄ってきていたがこちらの様子を怪訝そうに窺がっている。なんで疑うように見られてるのかと思うと東門でコートを着たまま脱いでないことに気づいた。だが今脱いで他の人に正体がバレるのは面倒くさい。カリュアス団長はまぁOK?
「カリュアス団長、俺です。神代です」
「レイなのか?」
「はい、訳ありなんで顔隠させてもらってます」
「あぁ・・・」
「これから俺の言うことを速やかに実行してくださいね?」
ルーとニル、エリシア以外はイラとの戦闘では邪魔になる。とは言えこの場に居ないからどうしたものかエリシアはまだ目が覚めてないだろうから抜きで考えないと
「今すぐに生きてる人全員連れてここから退いてください」
「それはできん」
「大丈夫ですから!」
この頑固者め、リベルと同じような事言うのはやはり血か。
「お前はこの場に残るのだろう?そんなこと俺は認めんぞ。お前になにかあったら...」
カリュアス団長が話すのに熱くなって周りの注意が疎かになっているところにまた触手が飛んできた。まぁ落とすから問題ないけど。
「何をごちゃごちゃ喋ってる?そんな暇はないぞ」
喋る暇が無いのはそっちの方じゃないかな?
「団長、白銀さんのこと任せます」
「あ、おい!」
団長に白銀さんを預けて前へと駆け始める。触手をすれ違いざまに体を風で補助して手前、右、左と順に全て斬る。
「む?」
少しイラが眉を顰めるが正体に気づく前に一気に仕上げる。
『エアリーアクセル』
残り50mを10m程まで一足跳びに近づいて、人間でいえば心臓があるところにある核を貫こうとするが流石に髑髏の杖で弾かれる。
「チッ」
「お前は他の連中と少し違うらしいな、腕がいい」
「・・・・」
「だんまりか?」
こっちは喋ったら身バレするんだよ。しかも昔より若干強くなりやがって、これじゃ直ぐ決着つかんぞ。剣と杖で何合と斬り結ぶがなかなか隙ができない、こいつ
『生前の恨みをここで晴らせ下僕共よ』
さらに手下を増やして囲むように攻めてくる。
『鬼焔灼陽』
雑魚なら燃やせばいい。周りの雑魚を火力にものを言わせて焼き尽くす。ただぱっと見でさっきのところで何人かアンデッド化させられたけど、完全にアンデッド化せず氷漬けになってる人達はエリシアが治療できるから治療の時まで氷を解かさないようにしないとな。
「お前はいい素材になるから我の仲間にならんか?あの方の下で働けば何でも意のままだぞ?」
「断る」
少し言葉を発したが、イラは特に正体に気づいたそぶりは見せない。それもそうか。普通の人間なら千年も経ったこの世界に居るわけがないものな。
あれから半刻程お互いに仕掛けるがどちらも状況を変えるような決定打を与えることができず戦局が膠着状態となる。ただマズい要素があるとするとこちらの聖教騎士団から貰った剣の寿命が尽きそうだということ。流石に流通品より少し上のグレードでも相手が天災クラスのバケモンの攻撃だといくら強化しても限界がくるのはこちらの方が先。
パキンッ
とうとう杖とうちあっていた剣が寿命を迎える。俺の得物が無くなったのが好機だとイラが攻めに転じてくる。無数の突きをバックステップで回避しながら。
『
両手に高出力の槍を作り出し、撃ち込む。
「ぬぅ・・・」
イラが避けるために回避したところで俺も仕切り直すために距離を取る。当初は絶対に後のことが面倒になるから使うつもりがなかった聖剣を異空間から取り出す。後の面倒ごとより今はこいつを仕留めないとこの国が滅ぶ。
華美な装飾は施されておらず、シンプルな見た目であるがアンデッドに対して最高の特効武器だ。
俺が持ち替えた武器を見たイラが驚く。
「お前、そいつは聖剣か?何故お前が持っている?」
イラの疑問に俺は頭のフードを取り払いながらこう答える。
「何故かって?俺が勇者だからだよ。それ以外にあるか?イラ」
俺の発言にさしもの四天王も驚いたようだ。だが直ぐ、に先ほどとは比べ物にならないほどの圧を発しながら俺を睨みつけてくる。
「小僧!なぜ人であるお前が千年も経ったこの世界にいる?」
「さぁ、どうしてだろな?またお前らがたくさんの人間に危害を加えようとするからじゃないかな?」
「お前が居ようが関係ないあの方の目的の為にここで死ね!」
『かの因縁を断つ為の憎悪よ、肉を蝕み、骨を腐らす闇となれ』
初見の魔法・・・呪術に近い類の技、広範囲の生者をアンデッド化させようとするが後ろに居る騎士団の人達にまで危害が及ぶので正面から対抗する。
『神の
闇には光、二つの世界がお互いを呑み込もうと浸蝕しあう。
「「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」
お互いの火力は拮抗しているのか光と闇が消えるのは同時だった。なら核を聖剣で浄化するまでだ。
先ほどとは違い、得物が壊れる心配をしなくていいので強気に攻めていく。
「ぬぅ・・」
「お前なんかにこの国の人の生活は壊させはしない」
力で押して杖を押上げるようにして弾く。杖を構えなおそうとするところに今度は上から打撃を加えて下に打ち付ける。イラがバランスを崩した瞬間背後に回る。
「これでお終いだ」
聖剣でイラの核のある位置を貫いた。
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