第17話 隠し事って難しい・・・てかできないよね

 明け方教都に無事戻ることができた。衛兵に見つからないように行くときと同じ窓に飛んで部屋に入る。


「よっこらしょ・・・」


 エリシアを自分に割り当てられたベッドに寝かして布団を掛ける。


「もうそろそろ朝飯だろうから俺は食堂の方に行くよ、ルーたちは留守番頼むよ」

「了解だ、さて少し寝させてもらうかな」


 ルーはそう言うとエリシアの足元で寝始めた。


「じゃ、ニルも休んでてな」

エリシアの頭を撫でて部屋を出ようとしたところでニルに呼び止められる。

「小僧・・・」

「ん?」

「エリシアを解放してくれてありがとう」

「仲間だから当然さ」




「ふぁ~」


 やっぱり眠い、身体能力とかいろいろこの世界に来てから上がったが、だからといって寝ずにずっと行動できるというわけではない。徹夜明けは最初がきつい昼前までこの眠気に耐えきれば一日はどうにかなる。


「随分と眠そうですね?神代君」


 眠そうにしながら空いている席に着いて朝食を食べようとしたら正面に座っていた白銀さんに声をかけられた。


「昨晩ちょっと寝付けなくてな」

「ほぅ・・・?それで夜中にお出かけですか」

「ングッ・・・」


 ちょっとなんで知ってるんですかね???出るとき窓から飛び出してるけど廊下に出たの一瞬だしバレようがない気がするんだが・・・


「いえ、昨晩神代君の部屋から人が出てきて窓から外に出ていったように見えたので人違いかもしれませんが」


 がっつり見られてたビンゴだよ白銀さん・・・けどどう言い訳したものかエリシアのこと伝えるのも今は目を覚ましてないから面倒だし。ここは半分嘘を伝えるか。


「最近ルーと散歩できてなかったから少し散歩に言ってたんだよ」

「ふ~ん・・・」


 そう言うと何故か白銀さんはジト目で見てくる。何故だ。


「どうしたよ?何か気に障ることをしたか?」

「い~や、仲の良い人に嘘をつかれるのが不満なだけですよ~」


 一瞬でなんかバレてるし!え、表情に出てた?いや出てないはず・・・ともかく知ってるぞ俺は、こういうのは完全に隠し通そうとすると相手が不機嫌になるって。


「いやその嘘ついてるのはそうなんだが・・・まだ話すことできないからもう少し待っていただけませんかね?」


 そう言うと白銀さんから少し負のオーラが和らいだ気がした。


「事情があるなら分かりました、絶対ちゃんと話してくださいよ?」

「は、はい」

「で、貴方に聞きたいことがあるんだけど」

「俺に分かることなら」

「坂本君が昨日の宴席で自分は勇者に選ばれたと言ってたのですが神代君も勇者ですよね?」


 え、坂本勇者なの?だからなんか俺を排除する力手に入れたとか言ってたのか・・・


「ん、そうだよ?仮にアイツが本当に勇者なら俺が先代ってことになるのかな」

「いや、神代君って勇者を引退したわけではないですよね?なのに坂本君も勇者ということになるとこの時代に勇者が二人になるわけじゃないですか。それって変じゃないです?勇者ってふつうその時代に一人みたいなのがお決まりじゃないですか?」

「それに関しては今回の召喚が坂本を呼ぶつもりだったのにうちのクラス全員巻き込まれただろ?だから俺らは本来呼ばれる訳じゃないから不確定要素とかバグみたいなものだと考えればいい」

「な、なるほど?」

「けど魔王に対抗するって言ったって聖剣は俺が持ってるし、聖女や賢者、聖騎士が今いるのかも知らんからな。聖女は代々引き継がれてそうだけど」

「聖剣まで持ってるんですか・・・」

「前の時に返す前に元の世界に帰されたからな、当時の上層部が悪い」


 思い返すともあれはちょっとどころかだいぶ名残惜しかったし。色々呆れるな。


「昔の時の装備とか貯蓄あるから俺的にはとっとと一人旅に出てもいいんだけどな、他に人が居ると行動しにくいし」


 そう言葉をこぼすとまた白銀さんから負のオーラが・・・


「一人で旅に出るんですか?」

「そのつもりだけど・・・」


 また怒らせてしまったぞ。白銀さんとか皆でいた方が安全だろうし俺みたいに周りとの関係シャットアウトしてるわけでもないからな俺一人・・・エリシアとか二人旅でいい気がするな。


「それでは、私には一人で居ろと?」

「白銀さん交友関係なんかと比べ物にならないくらい広くない?」

「あんな私欲にまみれた上辺だけの関係に何の意味があるんですか?」


 あ・・・不機嫌なのが拍車をかけて沸点低くなってらっしゃる。


「失礼、少し言いすぎました。今の言葉は忘れてください」

「あ、あぁ・・・」

「私的には神代君はごく少数の普通に接してくれる良き友人だと思っています。それにこの世界のことを教えてくれる先生です。まだ私は貴方から学ぶことがあると思うのですが?」

「良き友人とはありがたい評価だ。先生じゃないけどな。それじゃ白銀さん一つ約束をしよう。俺はお前が望む限り持てる限りの知識と技術を教える、それでお前が俺を必要とする間はお前と一緒にいるよ」


 最後の方は言ってて気恥ずかしくなって目をそらした。


「そんなのずっとに決まってますよ・・・」

「なんか言った?」

「いえ、なんでも?これからもよろしくお願いしますね神代君」

「こちらこそよろしくな白銀さん」


「そうそうそれと」

「?」


 先に朝食を食べ終えた白銀さんが席を離れるときに一言。


「寝不足は体に悪いので自室で寝ることをお勧めします。というかしなさい」

「は、はい・・」


 女性っておっかないなぁ・・・




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