87話:内緒の初ホラーはVRから④
なんか知らないけど一悶着あったみたい、ただ仕事もあるハル社長が三人に抑え込まれて(言い負けて)しまったので、恨めしそうに先輩達を睨みつけながら、事務所を出た。
帰り際に先輩達に優しくする必要はないんだと何度も言われたが、別に僕等の苦になる訳でもないし、仲良くなる事自体は別に悪い事じゃあないだろう。
「行きは楽じゃったが、帰りとなると少しキツイのう」
比較的になだらかになっているとは言っても、登っていくのは意外と大変だった。
「良い運動にはなるんじゃない。いつも家でゴロゴロとしているよりは健康的だよ」
「ぬぅ~、そうじゃがな……それは主のスタイルが良いから言える事ではないのか? 我とでは歩幅が圧倒的には違うのだぞ」
身長差もあるけど、確かにカミは子供と同じくらいの身長しかないからな、女性になっている今の歩幅からすると、一歩半くらいは違う。
「疲れたらおんぶでもしてあげようか?」
「それは遠慮する。なんか子供扱いされているように感じるからのう、絶対に嫌じゃ」
感じるって言うか、実際に半分くらいは子供扱いしている。
常識やら知識なんかで普通に子供とはかけ離れているけど、なんか子供扱いをしたくなるのだ。まぁ時々は僕よりも大人だなって雰囲気を見せてほしいね。
今でもそうだけど、神様だっていう事すら忘れてしまいそうになる。
「お二人は仲が宜しいんですね」
「紬は我の従者じゃからのう。こう見えても我の方が紬よりも年上なのだぞ」
えっへんと腰に手を当てて胸を張りながら答えるが、子供が自分を大きく見せようとしている風にしか見えないんだよね。
チラッと先輩達が僕の方を見て「本当かな?」という視線を送ってくる。
「まぁ本当ですよ。なんか知らないですけど僕の周りには両親含めて、私生活が壊滅的な人が多くて、面倒を見てあげてるんです」
「なんで紬の方が上目線なのじゃ?」
「気のせいじゃないかな。特に気にしなくて良いとおもうな」
半目になって睨んで来たので、すぐに視線を逸らしながら先頭を歩く。
「ここは神社? それにてはボロボロでちょっと不気味ね」
「もしかしてカミちゃんのプロフィールって、此処の場所を言ってるのかな」
「そうじゃ、一杯稼いで立派なモノに立て直すのじゃ」
「じゃあもしかして、この山ってカミちゃんのモノなの?」
「そうなるのう」
僕の家だと先輩達みたいな目で見られないからって、得意げになっているようだ。
この周辺の山々はカミの所有物と言うのは本当みたいだけどね。調べてもらっていたら続々とカミが所有しているという感じの書類が沢山あるらしい。
「あっちに見えるのが僕等の家ですね。寮と一緒になって見えますけど中はしっかりと別れているんですよ。この辺なら騒いでも大丈夫ですし、他の部屋に迷惑が掛からなように防音や空調なんかの設備もバッチリです」
ちょっと遠くに見える僕の家であり寮を、なんか驚きの表情で先輩達が見ている。
「寮母さんは紬姉様のお母様が?」
「あの、別に僕はお嬢様って訳じゃあないんですけど……と言うより、お姉様って……」
気にしないようにはしていたけど、なんか尊敬度と言うか菜々美さんの目から輝きが物凄くましている。このままだと変な誤解を招き兼ねないので、此処で何とかしたい。
「でもあの家は……大きすぎない?」
「別に我が家だけってことではないので。その辺は両親に聞かないと良く解らないです」
もう面倒な説明は母さん達に丸投げしよう。
「この寮って、住むのに条件ってあるんでしょうか?」
「さぁ? それらは母さんに聞けば分かると思いますよ」
「はいは~い、住んだら紬ちゃんのお料理食べられますか?」
「なんで僕の料理の話が出てくるのか、さっぱり分からないんですけど。出ないんじゃないかな……お泊りとかで作るってなったら、また別だとは思いますけどね」
基本的にはお手伝いさん達が作ってくれるはずだ。
寮の話になると、先輩達の目付きが物凄く鋭くなるのは何なんだろうか……物凄く怖い。
「まだまだこっちの家も片付いている訳じゃあないんですけどね」
多少なりと家が汚くなっていても大丈夫なように保険は掛けておかないと、父さん達が掃除しているとは思えないし、下手にしようものなら散らかっている事は確実だ。
チラッとカミの方を見て余計な事を言うなよっと圧を送る。
何も言わずに「分かっておる、アレは言わんぞ」という感じで頷きが帰って来た。
「そうですか? それにしては庭なんかも凄く整っている様に思いますけど」
お手伝いさん達が頑張ってくれたのだろう。
そう思って先輩達の話を半分くらいしか聞いていなかったが、本当に事務所へ行く前よりも綺麗になっているし、花壇にも花が植えられている。
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