第30話 裂かれ惹かれ
憎い憎い憎い。
私の大事な人を。私の大事な物を。
こいつらは。いや、こいつが奪った。殺した。
私のことをクソ生意気に見上げてるのも憎い。
「ティ〜ミスぅー!! もうこんなことやめて話し合おうのじゃぁ!!」
トッティ。いいえ。ちんちくりんが私に向かって叫んできた。
なんなのこいつは。
なんで話し合いをするなんて言っているの……。そんなことする必要はない。私は彼が死んだ、この惑星ごと吹き飛ばして死ぬする。そのせいで幾千万もの命を犠牲にしたとしてもそんなことどうでもいい。
私はもう神ではない。
ただの亡霊を追いかける悪魔なのだから。
「黙れ!! お前となんか話すことはない!! 死ねぇ!!!」
私は作り上げた秘術を、ちんちくりんめがけて投げつける。あいつが死んで、秘術が地表について、私も死ぬのだと思った。
だが、
「ぐっ……。のじゃぁあああ!!」
ちんちくりん秘術を手に持って跳ね返そうと、踏ん張った。
地面が凹み、ちんちくりんは叫ぶ。
こういうことになるのだということは想像できた。
一応、こいつは上位神の娘。秘術など粉砕させる力を持っている。
なのでは私はあえてためておいた力を使って、ちんちくりんごと押しつぶそうと思いっきり力を使う。
だが……。
「んな!? なんで私があんな奴に押されてるの……!?」
そう。押されてる。それはありえないこと。
こいつがいくら力を持っていたとしても、その力は到底私には届かないもの。
こんな小娘ごときに押されるはずがない。
私は勘違いだと思った。
「変わったのはお主だけではないのじゃ!! それ……ふがぁ〜!! なのじゃ!!」
「ク、クソっ!!」
ちんちくりんの掛け声に、秘術が少しこちらに押し返された。これは完全に押されている。
意味がわからない。なんで。どうして。
そして、またたく間に私の目の前にまで自分が作った秘術がきて………。
「わしのかちなのじゃああああ!!!」
ちんちくりんは叫んだ。
それと同時に私はあきらめた。
私が作り上げたものだが、私にはこれを解除させることはできない。なので死を受け入れ、押し返すのをやめた。
とも思ったのだが……。
「のじゃ??」
ちんちくりんのバカみたいな声が聞こえてきた。その声は目の前の現象が理解できていないような困惑した声だった。
五感がまだある。ということは死んでいない。
どうして死んでいないのか謎だが、私は恐る恐る目を開ける。
「はぇ!? なに?? 何が起こったの!?」
私は思わず叫んでしまった。だって、目の前にあった秘術がなくなってたんだから。
私は困惑していると、「ふふふ……」と言う聞いたことのある声がした。その声は私の後ろから聞こえてきた。
「――――」
私は油断しすぎたと思い、後ろを振り返る。そこにいたはトッザのことを引きずってきた男。
そして前髪をくるくるとイジっている人差し指には、トッザがつけていたはずの解除の指輪がはめられていた。
すっかりこの男のことを忘れてた。
「あなた……。なんで私のすることを邪魔するのよ!! さっきも言ったでしょうが。黙ってなさいって!!」
「そんな攻撃的なこと言うんじゃないよハニー☆」
「ハ、ハニー??」
私は急に甘い言葉を言われてクラっとした。その言葉は、トッザが私のことを呼んでいたときの言葉。
「そうさ☆ 君は俺のマイハニーさ☆」
「ッチ。キモいんだよ!!」
私はトッザのことをバカにされたような気がして、思いっきり男の横腹に蹴りを入れる。
すると男は「ボゲェー!!」と言う、気持ち悪い声を出しながら地面にめり込んだ。
ざまぁ見ろ。キモい男。
私が地面にめり込んだ男を見ていると、ちんちくりんが「あやつ、一体何したかったんじゃ……」と男の方を哀れんだ目で見ながら呟いていた。
本当、この男はちんちくりんと同類ね。
「あなたのお仲間。あなたに似てバカね」
「なぬー!! わしはバカじゃないのじゃ!! バカなのはあのでぶ男なのじゃ!!」
ちんちくりんは、「ふんがー!!」と猫のように威嚇しながら私に反論した。
「ふふふ……ふはははっ!!」
「な、なんじゃ……。何が面白いんじゃ!!」
ちんちくりん。いいえ、トッティは急に笑いだした私のことを見て困惑している。
もう……。あんなにも凄まじい憎い気持ちはなんなんだったんだろう。今は申し訳ないという気持ちが強く、憎い気持ちなんて嘘みたいになくなっている。
はぁ……。私はまた間違いを犯しちゃったみたいね。
私は地面に足をつけてトッティの目の前に行く。
「もう、あなた戦う気が失せたわ……。私は降伏する。私はあなた達に負けたわ」
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