第7話「北方紛争(前編)」
「ねえ、ノースランド王国連合には何を着て行けばいいのかしら?」
マリー・ウェストランド皇后が話しているのは北方に位置するノースランド王国連合の話しでそれは三つの王国の国家連合だった。
「やはり北方は寒うございますから、厚手のドレスなど御召しになった方がよろしいかと」
侍女はマリー・ウェストランド皇后の七色のナイトドレスを着付けつつそう提案した。
七色機士団結団式典のその夜、マリー・ウエストランド皇后の誕生式典が静かに始まろうとした時の事だ。
マリー・ウエスランド皇后はウエスランド円卓帝国に加盟交渉中のノースランド王国連合への七色機士団レインボーナイトコーアを連れ立った表敬訪問について侍女と暖炉の前で話していた。
そう、この時まではただの表敬訪問の筈だった……。
***
「皇帝陛下!!!!」
「皇帝陛下はどこにおられますか!!」
「大賢者様!!」
「大賢者様はどこにおられますか!!」
突如近衛の伝令官が王宮内を駆け回る!
「ルイ・ウエストランド皇帝陛下!!」
「アンブローズ・ウィザード導師!!」
「ルイ・ウエストランド皇帝陛下はどこにいらっしゃる!!!!」
「アンブローズ・ウィザード導師はどこにいらっしゃる!!!!」
近衛の伝令官が出会う人全てに問いただしお前も探せとばかりせき立てる、近衛の伝令官がこうも慌てているのは尋常な事ではない。
「何事か」
ウエストランド円卓帝国、ルイ・ウエストランド皇帝は静かにしかし強い意思在る口調で近衛伝令官の前に現れる、どの様な時でも皇帝は慌てふためいてはいけない、その後ろにはルイ・ウエストランド皇帝と共にいたアンブローズ・ウィザード導師が皇帝がその職務をしっかり果たしていると見つめ、扉の後ろに控えていた。
「ルイ・ウェストランド皇帝陛下、イーストランド連邦が北方、ノースランド王国連合スヴェーア王国に進行いたしました!!」
スヴェーア王国はイーストランド連邦のルーシ帝国に東部、南部が国境を接しており、最近になって同国境線で緊張状態が続いていた。
「何処からだ?」
ルイ・ウェストランド皇帝は冷静だった、ルーシ帝国がノースランド王国連合スヴェーア王国に進軍する場合、三つのルートが存在すると事前にアンブローズ・ウィザード導師に伝えられていたからだ。
一、ノースランド王国連合スヴェーア王国とルーシ帝国国境線、南部地域と東部地域からの陸づたいの北西進行。
ニ、イーストランド連邦、ルーシ帝国およびイーストランド連邦西部スエビ三公国から北方、スエビ半島南部に広がるスエビ海(北方内海)の東西に別れたスヴェーア王国領沿岸部へ上陸、更に北、スヴェーア・フィン湾(北方半島湾)へと進む海上進行。
三、北極海からのノースランド王国連合ノルマン王国を超えての航空進行及び、北極を通過しての弾道進行。
「全て……全てからです……」
そう言った近衛兵の伝令官は顔面蒼白だった。
「……円卓会議を召集する、皆を集めよ」
ルイ・ウエストランド皇帝は気を失いそうになる、しかし家臣の前でそうは行かない、皇帝として振る舞はなければならない。
「陛下、私も
アンブローズ・ウィザード導師は倒れそうなルイ・ウエストランド皇帝をそっと支え、耳元で「一つ一つ紡ぐのです」と小さく呟いた。
***
巨大なドーナツような木の大テーブル、三百人からの王族貴族の集う西側政治軍事の中心、この場所でウエストランド円卓帝国の重要な政策が全てが決まっていた。
「やむおえん、円卓機士団を出すべきだ」
「……確かにそれしかないだろう」
「イーストの指揮官は?」
「ウラジーミル・スーズダリ大公国のアレクサンドル・ウラジーミル・スーズダリ大公だ、巨人機、ロケットナイト、いやあちらではロケットロボットだったか? 新型の二足ロケット巨人機、ロケットロボットrr-11-a[シルバーナイト]を自ら飛ばして来たらしい」
「この前の新型巨人機、ロケットナイトRK-5A[パラディン]RK-6A[サジタリウス]の試験に現れた無人槍付きも来ておるらしい」
「まさかネロ・ロームルス卿が小突いたせいか?」
「奴も円卓に入れれば良かった」
「円卓が引っ掻き回されてろくな事にならん」
「ネロの事はもういい、どうにもならん」
「しかし加盟手続き前とはいえ、北方、ノースランド王国連合を見捨てるわけにはいかないぞ」
「アーサー王のお考えは?」
すでに円卓会議にはブリテンのアーサー・ブリテン王、ランスロット・レイク卿も席に着いていた。
アーサー・ブリテン王は金の短髪にラフなスタイル、手には聖剣エクスカリバー。
ランスロット・レイク卿は銀の短髪に銀の全身鎧その手には、銀色に輝く湖の妖精剣ダーム・デュ・ラック
「俺が出るという事はウェストランド円卓帝国が国外紛争に介入して、イーストランド連邦、ルーシ帝国のイヴァン・ルーシ皇帝と全面戦争になるという事だが?」
それは大陸の大半を占めるウェストランドとイーストランドによる戦争、つまり世界大戦を意味していた。
「何とかノースランド王国連合だけで収まらんか?」
諸侯たちは考える。
「スヴェーア王国を見捨てて条約を結べは収まるかもしれん」
「我が国を見捨てるとおっしゃるのか!!」
スヴェーア王国グスタフ・スヴェーア王の全権代理大使が語気を強める。
「そうは言ってない、そもそもスヴェーア王国を見捨てただけで収まるという保証はない」
「加盟手続きを終えても、ノルマン王国、デーン王国と進行されるかもしれんし、その先だってあり得る」
「世界大戦か……」
この円卓会議で決まる結論はすでに見えていた、このあとはルイ・ウエストランド皇帝がアーサー・ブリテン王を指揮官とするウエストランド円卓帝国最強の機士団、円卓機士団の派兵を提案し、円卓会議がそれを承認決議するだけの流れだ。
***
「困りますネロ・ロームルス卿!!」
円卓会議議場を警備する近衛兵の慌てた声が場内にも届く!
「邪魔だ~~♪ 余は~~♪ ロームルス永世皇帝なるぞ~~~~♪♪」
ネロ・ロームルス卿、この人自分のこと永世皇帝とか言ってる!
「そうよネロおじさま言っちゃって♪」
マリー・ウェストランド皇后がネロ・ロームルス卿を煽る、二人は仲良しだ!
「ソウダネロオジサマ!」
ヘラクレス・トゥエルブ卿は相変わらずライオンの着ぐるみだ!
「マリー・ウエストランド皇后陛下おやめ下さい、ヘラクレス・トゥエルブ卿もお願いいたします!!」
円卓会議会議場外でなにやらもめ事が起こっている、そしてそのもめ事のヌシに円卓会議諸侯全てが心当たりがあった。
「いいから開けてレラクレス♪」
「イイカラアケテヘラクレス!」
「なんだか~~♪ 楽しく成って来たぞ~~~~~~~~~~~~~♪♪♪♪♪♪」
円卓会議会議場の大扉が開き円卓会議諸侯らがもっとも会いたくない人物を連れだちマリー・ウエストランド皇后が現れた。
もちろん会いたくない人物とはネロ・ロームルス卿の事だ。
***
「ルイ・ウエストランド皇帝陛下、私が行きます!」
マリー・ウェストランド皇后は円卓会議議場で堂々と言いはなった。
円卓は騒然となる「その手があった」円卓会議諸侯には頭のかたすみにその考えを持つものも居た、しかし馬鹿げている。
「私が私の式典機士団レインボーナイトコーアと共に予定通りノースランド王国連合に向い、何事もなく表敬訪問を果たして参ります」
確かにこれなら全軍を上げた全面戦争にはならない、あくまでもマリー・ウエストランド皇后の式典機士団レインボーナイトコーアが表敬訪問中に戦闘に巻き込まれ応戦したと、かたち上は言い張れる。
何せ表敬訪問は予定してた行動でマリー・ウエストランド皇后はわがままマリーと呼ばれる自分勝手な皇后とされている、その程度の外交的わがままを通せないのならマリー・ウエストランド皇后に巨人機開発実験団のレオナルド・D・マイスター団長も七色機士団の機士達もしたがいなどしない、そもそもここにネロ・ロームルス卿を連れて来てる時点でネロ・ロームルス卿に対してですら自分勝手を貫ける実力を示しているのだ。
「しかしマリー、危ないよ」
ルイ・ウェストウェスト皇帝が止めようとするが、今さら止めるのは無理だ、わがままマリーだ。
「アーサー王、ランスロット卿、モードレッド卿とガラハッド卿では力不足ですか?」
マリー・ウェストランド皇后に言われ、アーサー・ブリテン王とランスロット・レイク卿は互いを見つめ苦笑いをする、モードレッド・M・セイクリットソード卿はアーサー・ブリテン王の子らしくガラハッド・G・L・セイクリットソード卿はランスロット・レイク卿の子らしいのだがいろいろあって家庭事情が複雑なのだ!!
「無論モードレッドとガラハッドならやれるさ、なあランスロット」
アーサー・ブリテン王はこう言うと軽快にうなづき、ランスロット・レイク卿は肩と口角を少し上げた。
「じゃ決まりねネロおじさま」
「ネロオジサマ!」
「さあ~~♪ 円卓よ~~♪ 道を示せ~~♪ 国の威信を示せ~~♪ 余の邪魔だてすれば~~♪ そのものには~~♪ 永遠の苦行が訪れるだろう~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
***
「では議決をとりましょう! 式典機士団、七色機士団レインボーナイトコーアのノースランド王国連合への表敬訪問を決行し、その際すべての権限をマリー・ウエスランド皇后陛下に与え、それに必要とされる予算及び、兵装及び、補給物資全てを無制限に与えると!!」
アンブローズ・ウィザード導師が円卓を導く、ルイ・ウエストランド皇帝にはマリー・ウエストランド皇后を止める力もアンブローズ・ウィザード導師の手のひらから逃れる手段もなかった。
歴史の歯車は人の意思で動くのだ。
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