第7話 吸血姫は獲物を見繕う。
私は亜空間から外空間へ出た。
時間的に誰かに出くわすかと思ったが〈
最初は〈気配探索〉でもしようと思ったが予想外にこのローブの機能が優秀であることと空間の歪みですら一般的な者には認識が出来ないようだ。
亜空間とは時の止まった保管魔法と同じ扱いだそうだから、その中に生者が入ることは有り得ないということなのだろう。
つまり
「さーて、何か居るかしら?」
ちなみに今は食事としての魔物狩りの最中である。
普通に〈
すると目前に兎型魔物が飛び出した。
私はそれを見てすぐに〈鑑定〉した──
「あれは〈ブラッド・ラビット〉という魔物なのね。生き血を
のだけど、思った通り誰でも彼でも襲い来る魔物だったため生け捕りにせずその場でコンガリ焼き目を入れてあげました。
ようは右手人差し指の先から1センチ大の〈追跡型極小火球魔法〉を飛ばして肉だけを蒸し焼きとする、ある意味での〈調理魔法〉を行使したのだ。その効力は毛皮と骨と内臓等は完全な消し炭となり表面の肉だけがその場に残る魔法である。
本来の用途は
結果、周囲には美味しく焼けた兎肉が地面に敷設した〈物理防御結界〉上に転がり、私はその場で亜空間庫へと片付けた。〈物理防御結界〉は焼けた肉が土で汚れないようにするための敷物として利用したの。
本来の用途ではないけどこれも便利よね?
「しばらく肉には困らなそうね〜。あとは付け合わせの野菜とか薬草が手に入ればいいけど、何かあるかしら?」
そう、私は一人で呟きつつも森の中を
私が行使した魔法に気づいた者達が周囲に居たようで──
「今〈ブラッド・ラビット〉を狩った魔法、誰が
「知らねぇぞ。何もないところから急に湧き出して・・・焼けた肉だけゴロゴロと」
「その肉も一瞬で消えたぞ? あの分量だと、この辺の巣は
私の存在が
§
それからしばらくの間は狼やら妖精やらを相手どったが食事として食える者達ではなく単なる魔力源となり果て、問題の薬草の
(狼は肉が固すぎて食えそうにないわね。毛皮と骨が重宝するってあるけど全部消し炭だし意味がないわね。魔力もなぜか
代わりに戦闘時の経験値だけが無駄に貯まりBランクの魔物〈幻覚妖精〉が宿す魔核という小粒宝石も得られなかった。この魔核は希少かつ高価な素材のため貨幣を得るなら手っ取り早いと思い討伐したのだ。
だが、そのまま生命力と共に魔力を吸収してしまい最後は何も残らなかった。
〈
ちょこまかと飛び回るため照準自体が難しく魔力量が多く連射出来る高ランク冒険者以外は討伐依頼そのものを請けないという。
(魔力はいいのよ上限がないからどこまでも吸えるもの。でも食欲を満たす物としての極上のスパイスが欲しいのよね。でもそういう物に限って見当たらないのよね)
そう、思いつつも周囲を見回した私は、
(見張られてる? もしかして、さっきの狼って
ふと何かに気づく。
今はまだ〈
私は狼のことを踏まえ〈遠視〉スキルで相手を看破した。
(覗き見犯は誰かしらね? へぇ〜)
そこに居たのは例の城から使わせられた魔法使いの男達だった。何を思ってこんなことをしているのか謎だったが私は急ぎ足で彼らに近寄り、会話に耳を傾けた。
「うむ。
「魔導士長殿? 狼の方を見て参りましたが、なぜか迎撃されており〈
「何!? あれは
「ですが詳細鑑定しますと、魔力残滓からその魔法が判別出来たのです」
流石の魔法使いの男は絶句の極みだったのだろう。というか魔導士長なのね?
しかし、私が〈調理魔法〉としたあれは危険魔法の一種だったらしい。
私は彼の横に立ちながら思案した。
(気にも留めずに〈極小火球〉として使っていたけど、一発で大陸を消し去る類いの魔法だったとはね。とはいえ・・・彼も魔導士長となるだけの知識があるようね?)
すると魔導士長は思案気になるも首を横に振り、とんでもないことを口走った。
「一体何が起きておる? いや、
私は修繕されることが嫌だったため──
(現物が残っているのね。ならその記憶は
彼らの腕に触れ、該当する記憶の一切合切を〈
その直後、魔導士長達に変化が現れた。
「な! 私は何をしていたのだ?」
「魔導士長殿? どうなされたので?」
「いや、なぜこの場に来ているのか、はて?」
「え? そういえば私もなぜここに?」
行動方針となる記憶を消し去ったため一瞬で
それを見た供も意味不明と思ったらしく二人はその場から急ぎ足で立ち去った。
(肝心の記憶に関係するものは私の中で分解されて〈
私はその場を立ち去る者を見送りつつも、彼らが新たな研究テーマを見つけることを
§
そんな一幕の後、私は草原に出たのだが──
「野菜はっけん! 〈レタボウル〉? 植物系の魔物かしら。こっちは〈キャボウル〉?」
ゴロゴロと転がる緑色の丸い物体が襲ってきた。
流石に草原ということで焼くわけにはいかず、せっかくの野菜ということもあり、空間魔法を用いて縦横に切り刻み亜空間庫へとそのまま片付けた。
この魔物は切り刻んだ段階で普通のレタスやキャベツに変わるようなので待ちに待った野菜として肉のお供に重宝すると喜んだ私だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。