第3話 外野の吸血姫。
その後の私はステータスを〈鑑定〉した。
「えーっと、なになに? 総魔力量は三千万か。スキル使用時の消費量は微々たる変化ね。従来の〈
種族はともかく日中を歩ける者という意味で伝説となるのは仕方ないだろう。
この世界の該当種族は夜の世界でしか活動していないそうだから。
夜の世界というか夜の世界の方が長いらしいけどね?
私達が召喚されたこの世界〈ルーティラス〉は空に浮かぶ島・浮遊大陸に住まう者たちの世界という。この大陸の周囲には三つ月と二つの太陽が存在し、夜は闇精霊が支配する〈
暦は地球と同様に一週間が七日という日々が繰り返され、その七日間の内、闇夜が三日続き、その狭間の二日間を除く。
日中は二日間という不可思議な暦となっているそうだ。
曜日という観点ではそうなのだろう。
日付という認識はないみたいだから、この辺は私なりの主観時間で捉えるべきなのかもしれないけれど。
〈(
ようは火曜と水曜が昼間。
金曜から日曜が夜という感じなのだろう。
狭間の月曜と木曜だけが夜と昼の境という朝焼けと夕暮れが一日中続くらしい。
主なる属性も火精霊と光精霊が日中を
狭間の二日間は
それぞれの属性精霊は〈
私の全属性はすべての精霊の加護を与えられており〈
「〈
私は暇を持て余しながら、この世界の基礎知識を紐解いた。
パッと見、斜め上を見上げて
今、意識下で読んでいるのは通貨関連の基礎知識ね。
通貨単位は〈リグ〉と呼ぶらしい。
主な種別は〈鉄貨・大鉄貨・銅貨・大銅貨・銀貨・大銀貨・金貨・大金貨・
それからしばらくして総勢四十人+教師四人の付与が終わったのだろう。
今度は時間停止したまま別の空間へと飛ばされた。
飛ばされた直後、頭が割れるような痛みが一瞬だけ発生して私は困惑した。
(痛っ・・・何、今の? 頭痛? 久しい痛みね。状態異常回避完了?)
私は痛みの後に自身の視界に表示されたこの世界の言葉を読み取った。
異世界言語の翻訳まで含まれるのだから凄い技能である。
まぁ〈瞬解〉っていうスキルのおかげなんだけどね。
見ただけで理解出来るスキルだ。
ただ、その単語に私自身は怪訝になった。
この〈状態異常回避完了〉という単語の意味が理解出来なかったのだ。
書かれていることは理解できるが意味不明という扱いだった。
(何をもって状態異常があったの?)
そう、思った直後、
(
足下に見える魔法陣から該当魔法を〈解読〉し〈
逃れるための術ともいうけど、ただレジストしたという反応が伝わったように思えたので、私は周囲に居る者達に感づかれないよう自身の存在を〈希薄〉した。
これは後付けの〈隠形〉スキルではなく生来の〈希薄〉スキルね?
俗に言う霧化とは異なり無意識下の範疇に隠れるという物なの。
霧化は血で作った衣服か全裸でないと出来ないから人目に触れるところではやらないけど。ともあれ、その後は色々とあれだった。
見ていて痛々しいというか女神様の意図とは
私は人族ではないけど。
§
開口一番は白い神官服を着た老人の言葉だった。
「ようこそお越しくださいました、勇者様方!」
「おう! 来てやったぞ!」
受け答えは
「では、我らの願いを聞き届けてくださいますか?」
「魔族を殺せばいいのだろう? 問題ない、俺達がおまえ達の代わりにやっつけてやるよ! その見返りは貰うがな?」
「当然でございましょう。姫殿下との婚約は是が非でも願うばかりです」
言葉にすればよくある異世界召喚物の話ね?
でもこの世界の魔族に該当する種族だと、吸血鬼族、オーガ族、ゴブリン族、有翼族、夢魔族、淫魔族等が当てはまるのだけど彼等の言う魔族は、とある人族達のことを魔族と呼んでいるの。
(本当の意味での魔族ならここに居ま〜す!)
あえて手を挙げてもいいけれど。
気づかれてないのでそのままスルーした。
では、なぜ〈魔族を殺す〉の話に落ち着くかといえば、この第八十八浮遊大陸よりも中央に位置する〈ルティルフェ〉の奪還もとい侵略が今回の主目的らしい。
言うなれば異世界人に殺させて自分達は蚊帳の外で美味しいところだけ持ち去ろうということだろう。その見返りの姫殿下との婚約も「願うばかり」とあり叶わない物としてぶら下げた
すると、馬鹿が軽快に宣言し周囲の学生達もその言葉に賛同しつつ大騒ぎした。
「任せろ! 俺達勇者パーティーで魔族共を根絶やしにしてくれるわ!」
普通ならこの世界に来たことを問いかけるはずが誰も彼も疑問視せず受け入れ、殺すことへの
これも最初期に施された
見たところ全員レベル1なのでレジストどころではないことが分かる話でもあった。というかレベル1で魔族を殺すとは片腹痛い話よね?
すると・・・一人の魔法使いが現れ神官に対して耳打ちする。
「うぬ? 一名足りぬとな? まぁさして問題はなかろう。我らの術から逃れられる者などおらぬのだ。それに間違いは一度や二度は・・・あったからのぉ」
「は! ではこの四十四名のレベル上げに尽力致します!」
「では頼んだぞ」
しかし、その話は私に対する話だった。
彼らの言う「逃れられる者はいない」とする自信はどこからくるのか謎だったが気づかれてないのなら気にするだけ損だろう。
その後、私を除く四十四名の勇者達は魔法使いに連れられて、あさってへと歩んでいった。この場に私という魔族を残して。
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