第2話中編①
数年ほど前。
マリーが可憐な少女から大人の美しい女性へと変貌しかけようとするそんな時期。
その時を境目に段違いにマリーは、彼女の美貌に惹きつけられた男性から告白を受けるようになった。
だが、大人しい性格だった彼女は母親にどうすればいいのか、告白を受諾するか否か――悩みを相談すると、母親の表情が一瞬曇った。
そして、マリーの頬に手を添えて言った。
「いつのまにか貴方
予想外の母親の返し。
告白を断るのは理解できるにしても、雲隠れまでする必要があるのか。
納得のいかないマリーに、人差し指と中指の二本をマリーの両瞼にかざして母親は詫びるように言った。
「誰も……マリーを愛していないわ。彼らは……その……貴方の
魅了? 錯乱?
「わ、私そんな事してない!」
いきなり何を母親は言っているのか。
そもそもマリーは『魅了』を含めて魔術を一切勉強したことがない。
魔術を行使するなど、故意にしたくてもできない。
「――えぇ、勿論よ。マリーはそんな悪い子じゃないわ。これは
「そ、そんな……。い、嫌……。どうしたら……」
否定したいが、母親の重苦しい口ぶりからして事実なのだろう。
そこに愛はなかった。
偽りの愛。
浮かれていた自分に、伝えられた知りたくなかった事実。
自分には生涯『無償の愛』など注がれないのだろうと考えると、目の前が真っ暗な気分になり、マリーは絶望した。
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