【応募版】比翼は連理を望まない
安崎依代@『比翼は連理を望まない』発売!
序
空が、燃えていた。
暴政によって疲れ果てた都が。虚栄の絢爛に彩られた王城が。争いに敗れて転がる
「……
そんな灼熱地獄の中にいながらそれでも唇を開いたのは、隣にいるべき人物の姿が見えなかったからだった。
「永膳……永膳、どこだ、永膳っ!!」
もはや術を
それでも足は前に出る。焼けてひりつく喉は探し人の名前を叫び続ける。
「永膳……っ!!」
「
その一切が、力強い腕に阻まれた。それが求めた相手の腕ではないと分かっている私は、なりふり構わず前に出ようと身をよじる。
「やめろ涼麗!! 死ぬつもりかっ!!」
「離せっ!! 永膳が……っ!!」
「お前だって分かってるだろ涼麗っ!!」
決死の覚悟で私を止めた同僚は、そこまで叫んで少しだけ言葉を
わずかに詰まった呼吸だけでそれを察することができた自分が、憎かった。
「永膳が、生きてるはずないって……っ!!」
──そう、本当は誰よりも私が分かっていた。
永膳が、生きているはずがない。
なぜなら彼は、本来私が負うはずだった役目を果たすために、私の隣を離れたのだから。
この禍々しい炎のど真ん中で、生贄のごとく死ぬはずだった私の役目を、掻っ攫っていったのだから。
──それでも私は、認められない。
だって、永膳は。彼は。
……そう思った瞬間、ポツリと何かが頬に触れた。
私は思わずハッと空を見上げる。抵抗を止めた私の後を追うように、私を羽交い絞めにしていた同僚も顔を上げたのが分かった。
そんな私達を
燃え盛っていた炎が、あっという間に、押し潰されるように消えていく。
それはすなわち、術が成功した証であり……
「……っ、ぁ」
……術の対価に差し出された、永膳の命が消えた証でもあった。
永膳は、……私の比翼は、この国を救うために、死んだのだ。私が担うべき役目を奪い去って、私の代わりに、死んだのだ。
「うわぁぁぁぁあああああああっ!!」
多分私は、絶叫しながら泣いていた。
叫んでいたことも、泣いていたことも分からないくらいに、頭の中は真っ白だったけれど。
私はきっと、……
後に『
この大乱終結の影に『
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