第二十八話 高知のお祭りなのです!
「いやぁー、美味かったのぅ。鰹のタタキに串揚げ、酒も飲めて最高じゃったわ……」
「ウツボのタタキもなかなか美味しかったのです!」
「人もいっぱいで賑やかだった」
「やっぱり高知といえばここだね!高知の美味しいものはここ、ひろめ市場で楽しむにかぎるね!」
夏独特の蒸し暑さの中、ひろめ市場で夕食代わりに様々な高知名物の料理を楽しんだ四人は、ホテルへと帰る道中楽しそうにそう話していた。
「でもヘグちゃんがおじさん達と飲み比べ始めた時はびっくりしたのです」
「酒は騒いで飲むに限るからの!飲めや歌えやじゃ!」
「ふふっ♪静かに飲むのもいいけれど、騒いで飲むのもいいよね。さて、皆明日は早いから今日は早く寝るんだよー」
「何かあるの?」
「ふふふっ、それは明日になってのお楽しみだよ。さっ、そうと決まればささっと帰ろーう!」
そう言う水無月を先頭に、四人はホテルへと戻るのだった。そして次の日────
ドンチャンドンチャン……
「おぉー」
ヨイサーヨイサーヨイサーヨイサー……
「おぉー!」
カチャン!カチャン!カチャン!カチャン!
「うおぉー!」
「「「祭りだー」!」」
揃いの浴衣や法被といった衣装に身を包み、聞いてて盛り上がる音楽と共に手に持つ傘や提灯をもって踊る、四国三大祭りの一つである年に一度の夏祭り、よさこい祭りへと四人は来ていた。
「凄い凄い凄いのです!皆可愛くて綺麗なのです!」
「皆息ぴったりに動きが揃っておる。元の世界で王族のパレードというものは見た事があったが、そんな物比較にならぬ熱量じゃ」
「それに、踊ってる皆も、見てる人も、凄く楽しそう。これは水無月が見せたかったのも納得」
「日程が合ったのは本当にたまたまだけど、その土地土地のお祭りは見せられるなら絶対に見せたかったからね。異世界との時間のズレにちょっとだけ感謝しないと」
「あ!次のグループなのです!わぁー!あっちの浴衣も可愛いのですー!」
「む、こっちはこっちで先のとは違う踊りに衣装じゃな!これは見てて飽きないのぅ!」
「ん?」
「どうしたのロクラエルちゃん。何か気になる事でも?」
「あれ、持ってる物だけは前の人達と同じだったから」
「「持ってる物?」」
「うん。あのカシャンカシャン鳴ってる奴」
そう言ってロクラエルが指さす楽しげに踊る人達の手には、何やら木で出来た持ち手のついている先の大きい物が握られていた。
「言われてみれば、色は違うけど前の人達が持ってたのと同じようなものじゃの」
「振る度に音が鳴ってるって事は楽器の一種なのです?」
「お、ノルンちゃん正解。あれは鳴子って言ってね、木の板に木片とか竹が付けられてて、ぶつかる事でこんな風に────」
カシャンッカシャンッ!
「「「おぉー!」」」
「音が鳴るっていう仕組みなんだよ。よさこい祭りは曲に合わせて踊る自由なお祭りだけど、この鳴子を持つこと、そしてよさこい鳴子踊りのメロディーを曲に入れる事だけはルールなんだよ」
「なるほどのぉ。じゃから曲が全く違ったり、踊りが違っても統一感が出るのか」
「歴史を感じるのですー!」
「鳴子、結構楽しい」
「というかその鳴子、一体いつの間に買ったのです」
「ふふふ……昨日しれっと買っておいたのだ」
「じゃが、こうも楽しげに踊られると……なんだか妾も踊りたくなってくるのぅ!」
「わかる。私もあそこで鳴子鳴らしてみたい」
「アタシもなのですー!みーちゃん、なにか参加する方法はないのですか?」
「こういうものは何日も前から入念に練習とか準備を積み重ねてやるものだからねー」
「い、言われてみれば……」
「確かにその通りなのです」
「残念」
「でーもー、なんとこのよさこい祭りなら参加出来ちゃうんだなー!」
「「「えっ!」」」
「皆も乗り気だし、飛び入り参加するとなれば早速行動しよう!皆はぐれないように着いて来てねー!」
そう言って三人が先導する水無月について行っていると、ある一つの学校の前へと案内され、そこで飛び入り参加の受け付けを済ませ、教えてくれる人の元へと案内される。
するとそこには────
「はいはーい!お待たせしましたー!私が今回のよさこいを教えるー……ってあぁ!」
「こんにちは」
「また会ったのぅ」
「昨日ぶりなのです!」
昨日桂浜を案内してくれた女の子が居たのだった。
「また皆さんと会えるなんて、まっこと嬉しいです!というか、ここに来たって事はもしかして────」
「はい!よさこいに飛び入り参加しに来たのです!」
「という事なんだよね。だから三人によさこいを教えてくれると助かるよ」
「わぁー!参加してもらえるなんてすっごい嬉しいです!勿論、一生懸命教えさせて貰いますね!それじゃあ早速やっていきましょーう!」
「「「おー!」」」
その後、数時間みっちりと女の子の手解きを受けた三人は、舞台にて楽しそうによさこいを舞い踊るのだった。
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