演習成果
それから一週間。とにかく、大河たちは戦闘に明け暮れた。
「行っくでぇえ!」
先鋒は槍を構えて豪志が突撃していく。もちろん槍の先端は青い炎が燃えている。炎に怯む緑怪に押しの一手で、攻め入る豪志。
「あ、危ない!」
豪志の足元に根が生えて来た。それをすかさず燃える鎌で刈り取ったのは錬だ。錬は後方支援に徹していた。背後から襲われないか見張り、足元から根が生えてこないかチェックしている。それで助けられる場面は何度もあった。
「今や! 大河!!」
「ああ!」
豪志が引き付けている間に、大河が登っていた木の上から飛び降りる。顔の部分である大口を一刀両断にした。緑怪は青い炎に包まれる。豪志の槍では決定打に欠けるため、最後はほとんどが大河が止めを刺していた。
「よっしゃ! やったで!」
豪志が手を上げて差し出すので、ハイタッチする。錬は遠慮がちに叩いた。
「ふぅ。これで今日は三体目か」
「中々ええペースやん」
「二人とも、音を聞きつけて他の緑怪が来るかも……」
錬が油断せずに周りに目配せをする。
「大丈夫だぷー。マシンに見張らせているけれど、他にいないみたいだぷー。この辺りは狩りつくしたんじゃないかと思うだぷー」
それを聞いて錬も少し肩の力を抜いた。大河も刀を鞘に戻す。
「せやけど、俺たちかなり力をつけて来たんやないか? 作戦もええ感じやし。なんや、大河リーダーの素質あるんちゃう?」
「そんなことはないさ」
最初は一太刀入れて逃げるだけで精いっぱいだった。なるべくシェルターに降りる通路から近い場所を選んでいたが、それも少し離れた場所にまで来られるようになった。
「森の中を走るのも慣れて来たし」
錬が言う。大河たちはなるべく走りながら戦闘するようにしていた。障害物がたくさんあるが、それは敵も同じ。根を十分に生やさずに戦うためでもあった。
「武器も落とさないようになったぷー」
「初歩の初歩だけどな」
武器、つまり炎を絶やさないようにする。それだけで牽制になった。
「一対三なら余裕やし。なんなら、二体相手でも勝てるやん」
へへっと得意げに豪志は鼻の下をこする。
「ギリギリだぷー」
「でも、この調子なら司令塔取り戻しに行ってもええんちゃう?」
豪志のこの言葉に大河と錬は顔を見合わせた。
「でも、東側は緑怪は一体や二体じゃないんでしょ」
「まだ、次期早々じゃないか?」
錬と大河はあまり乗り気ではない。
「それに電波が届かないから戦闘マシンのサポートも出来ないぷー」
「なんや。そないなこと言っといたら、事態は好転せんで? 俺たちで緑怪を根絶やしにするんやろ?」
豪志の言うことに、大河はギョッとする。しかし、戦っている以上目標は緑怪をせん滅することになるだろう。そうでなければ、コールドスリープ装置で眠っている人々を起こすことはできない。
「……それなら、一度偵察に行ってみるか。無理のない範囲で敵の本拠地の様子を見に行くんだ」
「おお! ほな行こうで!」
「いや、今日は消耗しているから、また明日な」
この日は、三人早めにシェルターに戻ることにした。
次の日。空からは大粒の雨が降っている。
「今日は止めておくぷー?」
談話室で外の映像を見ながら、ぷーすけが尋ねた。
「緑怪は音に敏感なんだよな。これだけ雨音が聞こえれば、俺たちの足音もかき消されるんじゃないか?」
カメラのマイクにもザアザアと雨音が叩きつける音がする。それに外にいるのは何も緑怪だけではない。野生の動物も見られる。緑怪は何故か人間しか襲わないが、多少の足音ならば鳥やたぬきと思うだろう。
「せや! ええこと気づいたな、大河!」
豪志がにっかり笑んで、大河の肩を抱く。
「でも、その分足元が悪いし、炎も弱まるだろ。戦闘になったら不利だ。慎重に行こう」
錬がしっかりと頷いた。
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