第51話 金髪さんからお手紙ついた。黒髪さんたら読まずに食べた(読みます)

「そういえば結構な時間、影世界にいたけどあまり魔力が減ってないな」

「わふ?わふわふう」」

「え?テトモコは減らないのか?」

「にゃー」


 初めから魔力が減らないだと?確かにテトモコには聞いたことなかったな。

 俺なんか初めて影入りした時に結構魔力を消費したぞ?

 種族に関係があるのかな?人間だと魔力を消費するとか。

 でも、それだと今回、魔力の減る量が少ない理由にはならないか……

 俺の魔力量が増えたことはあると思うが、明らかに消費量が少なく感じる。

 影世界に体が馴染んでいる?そんなことありえるのか?

 


 帰り道に考えていたが結局答えは出ないままフィリアの屋敷へとたどり着いた。


「お帰りなさい。ソラ君、ティナちゃん」

「ただいま戻りました」

「ただいまっ」


 出迎えてくれているサバスさんが俺たちに挨拶をしてくれる。


「帝都の街並みはどうでしたか?」

「あのね。人がいっぱいいて、物もいっぱいあって楽しかったよ」

「それはようございました。気になることがありましたら何でもお聞きください」

「あっ。それじゃー、これ何かわかる?」


 俺はローブのポケットに入れていたた金色の指輪を見せる。


「それは……指輪ですね。魔道具のようですが、すみません。鑑定はできないものでして、どんな物かはわかりかねます」

「そっか。どこかで鑑定してくれるところはある?」

「各ギルドで鑑定はしてくれます。ソラ君なら冒険者ギルドに提出すればしてもらえると思いますよ」

「それならよかった。また鑑定してもらうよ」


 やはり、魔道具みたいだな。

 迂闊に指にはめなくてよかった。

 鑑定もしてくれるみたいだし、買い取りの時に頼もうか。


「そういえば天使の楽園様宛てに手紙が届きました。差出人はエルドレート公爵家になります。フィリア様と一緒に帰ってきたところを見られていたようで……使者の方が手紙を渡してきました。」


 なに?エルドレート公爵家からの手紙?

 帝都にきてまだ数時間しかたっていないのだが。

 

「ありがとうございます。これの内容は?」

「詳しくは知りませんが、ただ謝罪のために帝都にあるエルドレート公爵家に訪ねてほしいと」

「それはどっち側の謝罪ですか?」

「話からすると、おそらくエルドレート公爵家側の謝罪のようでした」


 ふむ。あっちからの謝罪か。

 それなら聞いてもいい気がするが。

 俺の中ではあの夜襲は確実に公爵家からの攻撃だと考えている。

 なぜ、そんな敵地である屋敷に俺が行かないといけないのか……


「謝罪ならあっちから来いって伝えてください」

「それは……申し訳ありません。伯爵家側から公爵家を呼びつけるのは難しいです」

「それなら、ソラが呼んでいると」

「それではなおさら相手の気を悪くさせる結果になります」


 権力の世界はめんどくさすぎる。

 地位が高ければ、謝罪すらしにこないのか?

 そんな世界間違っていると思うんだが。

 悪いと思っている方が誠意を見せて謝りにこいや。

 貴族としてとか関係なく、人間として当たり前なことだろ?


 でも、ラキシエール伯爵家に迷惑をかけるわけにはいかないか。

 

「わかりました。手紙を読んで考えます」


 俺たちは晩御飯の声がかかるまで、与えられた部屋でゆっくりとする。


 エルドレート公爵家の手紙を開き中を読んでみる。


 そこにはこの世界の常識なのか、日々の過ごし方が最初の方に書かれている。

 そのあとに、決闘、従魔への謝罪が綺麗に取り繕われた言葉でずらずらと書かれている。


 うん。読みはしたが、この手紙で俺の心が動くことはなかったな。

 まさに、テンプレートのような謝罪の手紙。

 これを受けって誰が気持ちをよくするのだろうか?

 様式美として貴族には送らないという考えはないのだろうが、これではなにも解決はしない。

 ただただ事実を述べられ、謝罪されるだけの手紙に意味はあるのか?


 手紙の最後には会って謝罪したいとの言葉が添えられているが……


 さあ、どうしようか。


「ソラ君、ティナちゃん。食事の用意ができましたので食堂にお越しください」


 考えていると、メイドさんから食事への誘いの言葉が聞こえる。


「はーい。今行きます」

「ごはんごはんっ」

「きゅー」


 うちの子たちはテンションがあがり、ご飯への欲望を丸出しにしている。

 俺が扉を開けると、うちの子たちは早歩きで食堂へと向かっていく。


 食堂に行くと、すでにフィリアが席についていた。


「帝都はどうだった?」

「あー、楽しかったよ。目新し物が多くあったな」

「なにか買ったの?」

「いや今回は買っていないが」

「が?」

「エルドレート公爵家から手紙が届いたよ」

「え?ソラまたなんかしたの?」

「毎回俺が事件を起こすみたいな物言いやめてくれないかな?ただ決闘の謝罪をしたいから屋敷に来てくれとさ」

「ふーん。それでいくの?」

「正直悩んでいる。これって断れるのか?」

「断れない事もないけど、さらに関係は悪化するわね」


 だよなー。

 本当にただ謝罪されるだけだと問題はないんだが、

 夜襲の件を考えると迂闊に屋敷へと入るのは危険だ


 でも、敵を知るには中にはいるのが一番手っ取り早いのか……

 それに、呼びつけておいて、何かしてくることは考えにくいか?

 まあ、何もしてこなくても、あの金髪は死刑確定しているのだが。



「行ってみるだけ行ってみたら?謝罪されるだけでしょ?皮肉ぐらいは言われると思うけどそれは貴族としての性分として諦めなさい」

「それはそうだな。行ってみるよ」


 簡単に言ってくれるよ。

 ただ、フィリアが夜襲のことを知らないだけだからな?

 こっちは命を狙われたんだ。

 皮肉ぐらいですめばいいんだけど……


「フィリア、明日は暇か?」

「ん?明日は家にいるつもりだけどどうかしたの?」

「俺がエルドレート公爵家に言っている間、ティナと一緒にいてほしいんだ」

「それぐらいならまかせない。ティナちゃん。明日はいっぱい遊びましょうね」

「フィリアおねえちゃんと遊ぶの?」

「そうよ。チロも一緒に遊ぶんだから」

「わぁー。ティナ遊ぶ―」

「明日は頼んだよ。時間はわからないけどよろしく。ティナもおとなしく遊んでいるんだぞ?」

「うんっ」


 ラキシエール伯爵家にいるのなら安全のはずだ。

 護衛の騎士もいるし、帝都で頼りにできる存在がここしか思い浮かばない。

 ルイ……出張で明日ここに来てくれないかな?

 

 融通のいい強い友達を思い浮かべるが、まあ、無理な話だ。

 新幹線をこの世界でも普及させてほしい。


 それにしても、俺が単独で行動する時もあるかもしれないし、信用できる人を今後も見つけていかないとな。

 気軽にティナのそばを離れることができない。


「サバスさん。エルドレート公爵家に手紙を送ってもらうことはできますか?」

「はい。伯爵家で届けさせましょう」

「ありがとうございます」


 手紙の内容は。

 謝罪は受け取ります。明日の午前中に伺いますっと。

 

 こんなもんでいいだろ。

 貴族の手紙のやり取りなんぞ知らん。

 こちとらメールすらあまりしたことがない大学生だぞ。

 手紙の礼儀云々など習ったことないわ。


 サバスさんに一応手紙の内容を見てもらう。

 何とも言えないような顔しているが、納得したのかそのまま手紙を封筒にいれメイドに手渡した。

 

「では、届けてもらいますね」

「よろしくお願いします」


 さあーて、鬼が出るか蛇がでるか。

 

 明日の出来事を想像しながら、食事を口に運んでいく。  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る