第2話 テトモコ

 手紙を読んで得た記憶では。

 

 ログハウスは死の森という場所の中心に存在し、人間が住んでいるところからはかなりの距離があるらしい。

 そして、死の森の魔物はこの世界で比較的上位の存在らしく、森の中心に向かえば向かうほど強くなるみたいだ。


 そう、俺の近くにはこの世界でもほとんどの人がかなうはずがない魔物が生息している。

 なんて不幸なお知らせなんだろうか。

 お祈りメールか?


 神様。こちらは命がかかっているので、そんな簡単にお祈りしないでくれませんかね?


 それに、どうせ転移させてくれるなら町の近くにしてくれればいいのに。

 救いと言っては何だが、結界で守られた土地には魔物や人が入ってこれず、入るのには俺の許可が必要らしい。

 結界の許可とか意識だけでできるというファンタジーのごり押し付きだ。


 結界広げることができれば、森を抜けれるのではないか?

 俺も最初はそう思った……


 試してみたが、そんなことは不可能だった。うんともすんとも言いません。


 俺にできることは本当に結界への入場許可だけみたいだ。



 ログハウスはベットがある部屋とリビングがある部屋の二部屋で構成されている。

 トイレやキッチンは魔道具というものらしく、魔物の落とす魔石を燃料として動かすことができるらしい。

 キッチンの水も流れるようで、飲み水として飲んでみたが今のところ異変は感じない。


 飲み水を確保できるのは非常にありがたい、

 水を確保しなくちゃいけないとなるといきなり難易度が跳ね上がるからな。

 

 キッチンにはマジックボックスが設置してあり、日本で食されている野菜や肉、塩、コショウなどの調味料が入っていた。


 マジックボックスは不思議な箱だ。

 記憶として知識はあるのだが、信じられないほどの有能さだ。

 マジックボックスに手を入れると、頭の中でゲーム画面のように内容物が羅列されれる。

 そして、欲しいものはイメージするだけで、マジックボックスから取り出せることができる。

 それに加え、箱の中身は腐らない、時間停止機能付き。

 箱の中にはありがたいことに数年生活する分には十分な食料が入っていた。




 衣服の問題も部屋のクローゼットに十着ほどかけられてあったので解決した。

 サイズは子供サイズで今の俺が着て少し大きいと感じるものだった。

 神様というだけあり、そこらへんの調整はされているらしい。


 そこまで気配りができるなら、なんで俺が子供の姿なのか教えてほしいんだけど……


 上を見上げ神様に願うが、神様からの返答はない。



 家の探索を終えたので、一度ベットに腰掛ける。


 神様から与えられた影、風魔法について実験してみたいのだが。

 最優先事項は俺の前にお座りしている黒猫と黒犬についてだな。


 家を探索をしている間もずっとついて来ていたもふもふな黒猫と黒犬。


 神様の手紙によると黒猫はアサシンタイガーという魔物で主に影魔法と水魔法のスキルを使用し戦闘行う。


 黒犬はシャドーキングウルフという種族で影魔法と火魔法のスキルを使用し戦闘を行う。


 どちらも、この世界では上位の存在らしく、個体数も多くはない。

 神の使徒として生まれたばかりだが、魔法や戦い方などは知っており、従魔として優秀らしい。


 こらから一緒にいることになるし、コミュニケーションは図っておこうか。


 俺は二匹に近づき、膝の上に乗せ撫でていく。


「ねえねえ、二匹には呼び名はあるの?」


 撫でている手をとめず、二匹に聞いてみるも、少し弱く鳴き首を横に振る。


 名前はないと。


「じゃー、俺が決めていい?黒猫のキミはテト、黒犬のキミはモコだ」


 最初は何を言っているのかわからないといった表情をされたが。

 何回も言うことで理解ができたのか、目をキラキラとさせ見つめてくる。

 黒いしっぽがふりふりと揺れているところが目に映る。


 どうやら気に入ってくれたらしいな。


 日本ではペットを飼ったことがなかったが、ずっと考えていたペットを飼ったら付けたい名前ランキング一位と二位を使ってみた。

 反応がいまいちだったらあと八個ほど予備があったのだが、本人が気に入ってくれているみたいなのでそのままでいこう。



「テトモコはどんなことができるんだ?」


 二匹に聞いてみると、待ってましたといわんばかりに胸をはり、ドヤーとした顔を見せる。

 意味はないがとりあえず撫でておこう。

 可愛い子は何回でも撫でればいい。


 少しすると、テトモコが俺に近づいてきて、いきなり、床に沈むように消えた。

 

「えっ??テト!モコ!」


 テトモコが床に消えた?なんだ?どうゆう現象だ?

 動揺しているがとりあえず二匹の名前を呼んでみる。


「にゃー」

「わふ」


 後ろから二匹の声が聞こえ振り向くと。

 部屋の隅にテトモコがいるのを見つけた。

 瞬間移動?


「にゃーにゃにゃにゃーん、にゃんにゃん」

「わん、わんわん」


 おそらく、テトモコは説明してくれているんだろうが、まったくわからん。


 名前を聞いたときにも感じたことだが、テトモコはちゃんと俺の言葉を理解している。

 テトモコと意思疎通できることを知れたのは大きい。

 あとは俺がこの子達の意思をくみとるだけなんだけど。

 んー。どうしたもんかね。


「テトモコの種族だからできることなの?」


 俺はとりあえず、YesかNoで答えれる質問をしていく。

 二匹は少し考える素振りをして、弱く鳴き首をふる。

 違うけど少し迷っているような答え方だ。


「影魔法?」

「にゃん」

「わふ」


 今さっきより元気に鳴き頷く。どうやら正解らしい。

 種族的に影魔法が使えるからYesともとれるが、種族関係なく影魔法が使えるとできることなのでNOということかな。

 影魔法ってことは俺も影に入ることができるってことか。


 どうやってはいるんだろう?



 てか、神様よ。影魔法を与えるだけ与えて、なぜ、使い方や内容を教えてくれないんだ。

 手紙の記憶の中につけておいてくれてもいいじゃんか


 ケチなのか?

 それとも自分で考えろってことなのか?

 今までにない概念を自分で研究しろってか?


 さすがにハードすぎるだろ。


 まあ、今、愚痴っていても何も始まらないので、テトモコに視線を移す。


「ほかにもいろいろやってみせて」


 テトモコにお願いすると、ズボンの裾を加えて、外へ外へと引っ張る。

 俺は連れられるがままにログハウスを出る。


 そこからはテトモコによるファンタジー発表会だった。


 初めにテトから披露してくれた。さきほど見せた、影に入り、影から影への移動。      

 テトが十匹ぐらいに増えたと思ったら、水玉を生み出し、木に直撃させることで粉々にしていた。

 また水玉を浮かべたと思ったら、水玉が猫のような形に代わり、水猫を自由自在に空中で走り回らせた。

 最後にと、初めから黒いテトだったが、虚無を連想させるような黒い影を纏い、縦横無尽に走り回った。


 披露を終えたテトはどうどう?と体をすり寄せてきたので、もちろん黒い毛並みを撫でまわしたよ。


 テトが終わると次はモコのターンだ。


 モコは、テトが見せてくれたように影移動、影纏いをした後に、木を加えて影に落とし、影から出すという収納のようなことをした。


 その時ににゃーと悔し気に鳴き、でろーんと寝ころんだテトがいたが。

 どうやら俺に見せ忘れたらしい。

 その後「あたしもできるもん」というように、俺の近くで影収納を披露し、右足を俺の靴上にのせてきた。

 もちろん可愛かったので、首周りをなでてあげたよ。


 モコは火を操ったり、吐いたりすることができた。


 火を吐いた時は驚いて、口周りをみせてもらったが、毛が縮れていることもなく、「なでてくれるの?遊ぶ?」とでもいうように目をキラキラさせたモコがしっぽを振っていたので、心配して損をした。


 最後にと、モコはぐんぐんと大きくなり、三メートル級の狼に変身した。

 大きくなった体に乗せてもらったが、スピードがですぎて身の危険を感じたのですぐにおろしてもらった。

 モコに乗るには練習が必要なようだ。


 テトモコの発表会が終わった今はすでに日が落ちようとしている。

  

 異世界転移をしてから何も食べていないこと思い出すと、急激に空腹を感じる。


「ごはんにしよっか」


 そうテトモコに告げ、家に入っていく。


 んー。テトモコのごはんどうしよっか。

 まあ、俺が作ったやつが食べれなかったら、その時は生肉か、焼き肉をあげてみよう。

 簡単に肉と野菜のいため物をつくり、テトモコの皿にのせてあげる。

 テトモコは匂いをかぐとすぐに顔を突っ込み食べ始めた。

 夢中に食べてる姿をみて安心したよ。


 どうやら、人間の食べ物でも満足してくれるみたいだ。

 料理人みたいに凝った料理はできないが、家庭料理の範疇であればなんとかできる気がする。


 しかも、こんなにうまそうに食べてくれるなら作り甲斐もあるな。

 体全体でうまさを表現してくれてるよ。

 もふもふのしっぽがとまらない。

 あー。見ているだけでも癒される


 食べる量は俺の三倍ぐらいだけど、俺が頑張ってつくればいいだけだ。

 ただ、俺が予想した食料在庫の年数は半分ぐらいになりそうだが。




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