聖戦のルール

 開催場所はドヴォルザーク帝国内。

 参加は帝国民であれば誰でも可能。

 ただし、守護者(ドラゴン族)の討伐クエストを受け、達成しなければ二次参加権は得られない。

 聖戦時のみに出現する『神器』を三つ探す。


 ①イズアール

 ②ルサルカ

 ③オラトリオ


 これらの争奪戦を行い、全て入手した者を“皇帝”とする。



「……アルフレッド、なかなか難易度高そうだぞ」

「ええ。討伐クエストは冒険者や貴族であれば、さほど問題はないでしょう。しかし、神器は別。まさに血みどろの戦いとなりましょう」


 ですよねー。

 ていうか、神器なんて出現するのかよ。

 確かに、そんな物を巡ってなんて殺し合いになること間違いない。


「死者が出るのか?」

「いえ、さすがに殺しは禁止です。ですが、過去に違反した者も数知れず。騙し打ちや裏切りは当然のことですね」


「おいおい、治安が悪化するんじゃないか」

「多少は荒れますね。ですが、聖戦中は相手と戦うことになっても倒す程度で問題ありません」


「なぜだ?」


「敵を戦闘不能にすれば、その時点で敗北者は参加権を喪失。その後に復帰して戦っても無意味となるんです。神器に触れることすら出来ないようです」



 なるほどね、その聖戦とやらは上手く出来ているんだな。

 納得しているとシベリウスが机を叩いた。



「親父! 僕はこんな戦いをしなくとも、ラスティに皇帝の座を委ねたいと思っているんだ!」

「取り乱すなシベリウス。しかし、ラスティ様の心は決まっておる。それはお前も分かっているだろう」


「……っ! そ、それはそうだけど」



 そう。俺は今更、ドヴォルザーク帝国の皇帝になるつもりはない。けれど、聖戦がはじまる以上……見過ごすこともできないかもな。


 もし悪者が皇帝の座につけば、魔王やニールセンのような支配者が現れてしまう。そうなれば国どころか世界が不安定になる。



「俺はなるつもりはないけど……そうだな。例えば俺が参加して勝利したとする。皇帝の権利を誰かに譲るとかどうだ?」


「残念ですが、ラスティ様。譲渡は許されません」


 キッパリ言われてしまった。それもそうだよな。神聖なイベントを穢すようなものだ。

 そんな中、大広間にスコルがやってきた。



「ここにいたんですね、ラスティさん」

「スコル、俺を探していたのか」

「はい、テオドールさんが呼んでますよ」

「テオドールが? また嫁自慢じゃないのか……」

「いえ、それがそうでもないみたいです」

「本当かなぁ。まあいいや、あとで向かうよ」

「じゃあ、わたしはこのままラスティさんのおそばに」


 俺の隣に座るスコル。そばにいてくれるだけで俺は幸せ。



「ラスティ、他に候補はいないのか!?」



 シベリウスが話を続けた。

 おっとそうだった。聖戦の話だ。


 スコルにも帝国の情勢を教えた。



「そんなことになっていたんですね」

「ああ、これから聖戦が始まる。スコル、皇帝になってみる?」

「え! わ、わたしは無理ですぅ」


 だよね。ていうか、スコルを皇帝にするはちょっと違う。シベリウスの言う通り、他の候補を探したいところだ。



「んー、やっぱりシベリウスがなるしか?」

「なんで僕なんだよ! 僕は無理だ……こんなリーダーシップのカケラもない僕では……ぐっ」


 自分で言って傷付いてるし。

 とりあえず、ラルゴの街でも歩いて探してみるかね――?

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