大賢者のスキル・ソウルリフレクター Lv.3
意気込んだところで、俺はシグチュールを構えた。
突っ込んでくるマーダースライムは、ハサミでこちらを狙うが――俺は
相手は闇属性。なら、聖属性が効くはずだ。
「スコル、頼めるか!」
「分かりましたっ。――ホーリークロス!!」
両手を向けるスコルは、聖属性魔法を放った。十字架の光が一瞬でマーダースライムに激突。浄化を始めた。
『――――ッッ!!』
かなりダメージを与えたようだ。
だけど、まだ決定打ではない。
「よし、エドゥ。トドメを頼む」
「うけたまわりました」
その間、俺はマーダースライムの激しい攻撃を何度も受け流した。くそっ、ハサミは反撃し辛いな。
テレポートを繰り返すエドゥは、タイミングを見計らっていた。
よし、あとは息を合わせるだけだ。
俺は、シグチュールでマーダースライムをぶっ飛ばした。
「今だ!!」
「ソウルテレキネシス!!!」
エドゥの十八番だ。ソウル系大魔法が大炸裂し、マーダースライムを粉々に粉砕した。見事に弾け飛んで粉微塵になった。
……やっぱり、大賢者の力はすげぇな。
「ふぅ、お疲れ」
「いえいえ、あれほどのモンスターを受け止めるラスティ様も凄いです」
「そうなのか?」
「ええ。あのマーダースライムは、スライムの中でも最上位の存在。一匹倒すだけでも、本来ならギルド三十人規模が必要ですから」
そうだったのか。
今の俺たちは、たった五人――いや、六人だからな。
って、そうだ。
「シベリウス、お前は結局、案山子じゃないか」
「…………(ガクガク)」
青ざめて震えているシベリウスは、バケモノでも見るかのような目で俺を見てきた。
「おいおい、大丈夫かよ」
「ラ、ラスティ。お前……こんなのを相手にしてきたのかよ」
「そうだが。今まで散々戦ってきたよ」
「すげえな、おい!! ラスティ、お前をただの皇子だと侮っていた。許してくれ」
ブンブンと頭を下げるシベリウス。そんな謝らないでもいいけどね。
あと、そうだ。
「おい、ハヴァマール」
「うにゃ……」
妹の頭をポンポンと優しく叩く。
ハヴァマールは、はにかんでちょっと気まずそうだ。
「少しは活躍しろ」
「余、余は……本気を出し過ぎると周囲に影響が出過ぎるのだ」
「そうなのか」
「うむ、風属性最強の大魔法・ライトニングボルテックス然り……。時と場合を考えねばならないのだ」
「そうか。それなら仕方ないか」
「その代わり、頭はいっぱい撫でていいのだ!」
「そうさせてもらうか」
ハヴァマールを可愛がっていると、全員が集まった。
みんな無事だ。このまま先へ進もう。
* * *
度々現れるマーダースライムを撃破しながらも先へ進む。
濃霧が強くなって視界不良だ。
「……ラスティさん、怖いです」
俺の服を引っ張ってくるスコルの手は震えていた。俺は安心させるべく、スコルの手を握った。
「大丈夫だ、俺がいる」
「……はい。嬉しいです……」
スコルは何かを言おうとしていた。
だけど、霧の先で何か物音がしていた。……なんだ、激しい音だ。
『――、――――、――!!』
立ち止まると、エドゥが守護魔法である『ソウルリフレクター』を発動してくれた。
[ソウルリフレクター][Lv.3]
[魔力消費量:150]
[効果]
透明な魔法の壁を生成して展開する。自分・パーティ・ギルド単位で守護できる。このリフレクターの耐久値はスキルレベルによる。
物理攻撃と魔法攻撃の両方を防御する。
Level.1:リフレクター耐久値10000
Level.2:リフレクター耐久値20000
Level.3:リフレクター耐久値30000
Level.4:リフレクター耐久値40000
Level.5:リフレクター耐久値50000
「この先、戦の臭いがしますので」
「マジか。ということは国境まで来たのか」
霧が晴れていく。
すると、俺たちは崖らしき場所にいることが分かった。その下で……恐ろしい光景が広まっていた。
交わる剣と剣。飛び交う魔法。モンスターの群れ。凄まじい数の屍。まさに死屍累々だ。だが、意外にも帝国の聖騎士が持ちこたえているようにも見えた。
「こ、これが戦場なのですか……」
俺もだが、ストレルカも初めてみる戦場に恐怖した。これほど凄惨だとは……。だが、帝国の聖騎士は必死に戦っていた。血みどろになりながらも。
「ラスティ様。向こうに団長の姿が見えます」
エドゥの指さす場所を見ると、そこには飛竜に乗るルーシャス・スナイダーの姿があった。あの老体は間違いない。ここで戦っていたのか。
「ルーシャスに挨拶をしていくか。それから、俺たちはラファエルとニールセンを探す」
それとも加勢すべきか……。
この戦況、どう見ても悪くなってきている。
敵は多くの闇属性モンスターを従えているし……。そうか、あのマーダースライムも、神聖王国ガブリエルのテイムモンスターだったのか。
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