素敵なプレゼント
ワークテーブルを展開し、釣り竿の製造を選択。
木材15個と糸10個を放り投げ、スキルを発動する。すると、ピカッと青白い光に包まれて『釣り竿』は完成した。
「これでエサを括りつけて釣りができるわけか。コイツは面白い」
残りの作業は明日にして、俺は自室へ戻った。いよいよ明日は船旅。早めに寝て早起きしないと――。
◆
ついにこの日を迎えた。
いち早く起きた俺は準備を整え、先に庭で釣り竿の準備をしていた。あとはエサだ。本の知識によれば虫を使う。そうだ、虫だ。
庭を
つるはしを手に持ち、庭を掘っていく。少し掘っただけでミミズが出てきた。コイツを使おう。保管用に小さな木箱でも作れば持ち歩ける。ワークテーブルで木材を使って作成。小さな木箱へ保管した。
「よし、これで作業は完了だな」
手を払っていると、背後から気配がした。
「おはようございます、ラスティさん」
振り向くとそこにはスコルがいた。深緑の優しい瞳をこちらに向け、両手でスカートの
――そうだ、丁度いい。
「スコル、ちょっとここで待っていてくれ」
「……? はい」
スコルを庭で待たせ、俺は自室へ。ワンピースを後ろに隠して再び戻った。
「お待たせ、スコル」
「あの、両手を後ろにして……何か持っているんですか?」
「うん。スコルにプレゼントがあるんだ」
「プレゼント? わたしに?」
「いつもお世話になっているからね。はい、新しい洋服だ」
「え……これって」
丁寧にワンピースを受け取るスコル。その刹那には、大粒の涙を雨のように流していた。
「ス、スコル!?」
「……だ、だって、こんな素敵なプレゼントをして貰えるなんて思わなかったので……。これ、どうしたんですか?」
「ハヴァマールの裁縫スキルで作って貰った。アイツもスコルに世話になっているからって
理由を伝えると、スコルはまた泣き出した。めちゃくちゃ嬉しそうに泣き、笑った。その姿を見て、俺は胸がハラハラもドキドキもした。もしかしたら気に入って貰えなかったんじゃないかって――そう思ったけれど、この反応は間違いなく感謝していた。
「ありがとうございますっ。すっごく嬉しいです!」
勢いよく飛びついてくるスコル。俺の首に腕を回し、ずっと喜んでいた。ここまで喜ばれると贈った
「……って、うわッ!」
スコルの勢いが強すぎて後ろへ倒れてしまった。
「あ、あぅ。ごめんなさい」
「いいよ。スコルが嬉しそうで俺も満足だ」
「はい、とっても嬉しいです」
倒れままスコルを抱えていると、ちょうど誰かきた。
「何をやっとる、兄上とスコル」
「よぉ、ハヴァマール。起きたか」
「物音がしたんで何かと思ってな。それより、抱き合って何を……はっ、まさか! もうそのような関係に……!」
「違うって。それよりお前、パンツ丸見えだぞ」
「にゃっ! み、見るな、兄上!!」
押し倒れて見上げる状態なんだ。完全な不可抗力である。顔を真っ赤にするハヴァマールは、今にも俺の顔面を踏みつけてきそうだったが、そんな暴力はしてこなかった。
「それより、スコルのワンピース姿が見たい」
「わ、分かりました。ちょっと恥ずかしいですけど、着替えてきますね」
のそのそと俺から離れ、スコルは自室へ戻っていく。俺は起き上がって不満そうなハヴァマールの相手だな。
「あ、兄上……」
「偶発的事故だ、許せ」
「も~、兄上のばかばか」
ぽかぽか殴られるが、まったく痛くもない。ていうか、可愛すぎかっ。
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