島を防衛せよ

 相手の出方を伺っていると、ブラームスは海賊たちに指示をしていた。



「おい、海賊共! 僕の金貨や船を狙った罪を許してやろう。ただし、そこのラスティを生け捕りにしたらな!」


「おぉ、マジか」「あの少年を捕まえればいいんだな」「やってやらあ!」「それで見逃して貰えるなら安いな」「けどよぉ、また矢飛んでくるかもだぜ」「大丈夫だろ、この人数なら!」



「いいぞ、お前たち! ラスティの手足を折るくらいは許してやる。やっちまええええええッッ!!!」



 アホ共が向かってくる。

 ボウガンの威力をその身をもって経験したはずだけど――馬鹿なのかな。殺意を漂わせて襲ってくる以上、俺はもちろん、攻撃を開始した。


 丘にあるボウガンが海賊共に標準を合わせて、矢の射出を開始。肩や足に命中させた。さすがに殺しはナシだ。



「ぐぉぉぉ」「うああああ」「いでえええええ」「あ、足があああああ」「うあああああああ」「どこから矢が飛んでくるんだよォ!!」「やっぱり無理だあ」「逃げろぉぉお」


 そして、また海賊共は退散していく。いい加減に学べよ! 結局、海賊たちは蜘蛛くもの子を散らすように海へ逃げていく。



「戻って来い馬鹿共!!」



 焦るブラームスだが、もう遅い。海賊たちは泳いで行ってしまった。あんなに必死に泳いで……もう二度と来るなよ。

 さて、これでブラームスが孤立した。


「どうする、ゴミ兄貴」

「ふん、まさかこの僕が一人だと思うか? 海賊たちは、海に浮かんでいる軍艦か捕まえるだろう」


「なんだと……?」


「僕は海の支配者で“提督”なんだよ。ほら、海を見るといい……あの戦艦達を」



 海の方へ視線を向けると、そこには七隻の戦艦がいた。な、なんて数だ。しかも、大砲をこちらに向けている。いつでも撃てるって事か。



「……ブラームス、本気か」


「あぁ、本気だ。この島を更地にするなど容易たやすい。嫌なら金貨を全て返し、帝国へ戻ってこい。今なら、痛い目に遭わせず無傷で迎えてやる。むしろ、丁重に扱ってやる。金貨も分けてやるし、美人な女も紹介してやるぞ! どうだ、魅力的と思わないか」



 ゲス野郎め。そんなあめむちなのかすら曖昧あいまいすぎる条件などクソだ。ヤツに下るつもりは毛頭ない。それに、俺には守るべき仲間がいる。島の主として毅然きぜんとした態度で挑む。


「断る。ブラームス、お前には分からんだろうが、俺にとってはこの島が国そのものなんだよ。生活を脅かすのであれば容赦ようしゃしないぞ」


「交渉決裂か……。分かったよ、ラスティ。お前の国とやら、ぶち壊してやる!!」



 右手をかかげ、戦艦に合図を送るブラームス。一斉に大砲が放たれ、大ピンチを迎える。くそう、さすがのサンダーブレイクでも、この数は……む?


 後方から何か飛んできて、俺は気配を察知してソレを受け取る。



「兄上、聖槍・グングニルだ!」

「ハヴァマール……ありがとう」



 魔力の塊となった槍が俺の手に収まっていた。よし、これで大砲を……お? 更に、俺は能力がアップしていた。



「ラスティさん、わたしの支援も受け取ってください! キリエとグローリアです!」

「スコル、ナイス!!」



 ステータス補正がアップし、力がグンと上がった。聖槍と支援スキルがあれば勝てるぞ。



「ぼっちゃん、この私をお忘れですか!」



 アルフレッドの手には『黄金の箒ゴルトブルーム』が握られていた。そうだ、そうだった。こっちには最強の執事がいるんだぞ。俺とアルフレッドの力を合わせれば余裕だろ。



「ラスティ様、このわたくしもお忘れでは!?」



 空から降ってくるストレルカ。大精霊・オケアノスの波に乗ってきたようだ。なんて登場の仕方をしているんだ。



「ストレルカ! 来てくれたのか!」

「海が荒れているようでしたので、何事かと心配して来たのです。戦艦が七隻とは物騒ですわね。お力をお貸ししますわ!」



 よっしゃあ!!

 これなら撃退できそうだぞ。ちなみに、エドゥアルドは島を探索中で不在。残念だが、今はこの戦力で十分だ。



「仕方ない、この私も手伝おう」

「ブレア、君も戦えるのか」

「任せろ。この眼帯は伊達だてではないのだよ」



 そういえば、ブレアはずっと眼帯をしていた。海賊なのだから、そういうファッションなのかと思っていたけど、なにか秘密があるらしい。


「先にどうぞ」

「ありがとう。では、この眼帯の能力・エンシェントアイを見せてやろう」



 すっ……と、ブレアは眼帯を外す。

 その次の瞬間、目から莫大ばくだいな魔力が放たれた。


 ドゴォォォォっと凄まじい轟音ごうおんを立てて大砲を破壊していく。――って、なんだそりゃあ!?

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