伝説のモンスターテイマー

 ベルリオーズ金貨を15000枚手に入れた。1枚で10万ベル相当なので、単純に15億ベルとなる。これだけあれば、なんでも買えるな。


 ブレアの方にも15000枚の金貨を渡す。合計すると30億ベルあった事になる。それだけの額をあの兄貴が溜め込んでいたとはな。そして、それをこんな形で俺が入手し――共和国へ流れる事になろうとは想像もしなかったろうな。


「ありがとう、これで共和国は今よりはマシになるだろう」

「そりゃ良かった。あとはグラズノフ共和国へ帰るだけだな。明日、船が出るからストレルカに頼んで寄って貰うしかない」


「そうしてくれると助かる」


 こちらに害がなく、普通に帰ってくれる分には俺も友好的だ。海賊がまさかの共和国の姫さんだとは思わなかったけど、おかげで金持ちになれた。



 ◆



 ブレアを家に招待し、臨時で部屋を貸し与えた。


「す、凄い部屋の数だな……。よく建てたものだ。建築士でもいるのか?」

「俺には『無人島開発スキル』があるのさ。その能力で作った」


「む……無人島開発スキル? そんなスキルは聞いた事がない」

「それもそうだろうな。世界で唯一、俺しか覚えていないスキルだしな」

「いったい、何が出来るんだ?」



 スキルの大まかな説明をブレアにした。終始、驚きながら俺の話に耳を傾けていた。



「――というわけで、家も作れるし湖を設置したりもできる。今は、ワークテーブルのおかげで家具類の作成も可能になった」


「便利だな男だな、君は。……ふむ、ラスティと行ったか、君にちょっと興味が沸いた」


 透き通った赤色の瞳を俺に向け、そんな風に視線を向ける。あのルビーのような瞳には、不思議な魔力があるような……姫様なだけあって、なんだか引きつけられる。



「ま、まあ……部屋は好きに使ってくれて構わないから。しばらくは休憩しているといいよ。食事になったら呼ぶから」


「部外者である私にそこまで気を遣わなくていい」

「いや、金貨を分けて貰った礼もあるし」

「しかし……」


 そこでブレアのお腹から“グゥ~”と音が鳴った。廊下に響き渡るほどで、あまりに恥ずかしかったのかブレアはお腹を押さえて赤面していた。


「無理するなって」

「う、うぅ……。で、ではお言葉に甘える」

「それでいい」



 ――ブレアと別れ、俺は島開発を進めた。エルフの国へ行く前に『糸』を作る。


 一階へ降り、ハヴァマールを探す。……リビングにはいないっと。



「スコル、ハヴァマールは何処にいる?」

「あ~、ハヴァマールさんなら食堂ですよ~」

「そっちか」



 俺は食堂へ向かった。

 中へ入ると、そこにはラズベリーを楽しむハヴァマールの姿があった。どうやら、おやつを食べていたようだな。



「ここにいたのか」

「兄上~。もー、あのブレア姫に構ってばかりでつまらなかったぞぉ!」

「む? ハヴァマールは、あの姫様を知っているのか」

「もちろんだとも。グラズノフ共和国も聖魔大戦に大きく関わった国のひとつ。テイムマスター『テオドール』の出身地でもある」


 テオドール?

 ああ、あのルドミラの手紙に名前が記されていたな。仲間のようだけど、テイムマスターねえ。よく分からないや。


「そいつは強いのか」

「強いも何もない。世界を滅ぼしかけたモンスターの半分を手懐けた人物だぞ。ご先祖はだいぶ苦戦したようだ」


「半分って、どれだけの数をペットにしたんだか」

「そのおかげで畜産、馬車や竜騎兵が発展したと言っても過言ではないな」


 すげぇ人物じゃないか!

 なぜ、帝国にだけ伝説の人物が集中しているか疑問だけど――多分、世界聖書だろうな。くそう、こんな事なら内容を全部見せて貰えば良かった。



「ルドミラがこっちへ来る予定だし、そのテオドールも来るのかなぁ」

「――結局、こうなるのか」

「そういえば、魔王と勇者は敵対関係だよな。会ったらまずいよな」

「いや、余は先代の能力を引き継いだだけで、世間が勝手に魔王認定しているだけだ。余には世界を支配しようなど考えてもいないし、興味もない」


「分かっているよ。こんな可愛い魔王がいてたまるか」


 俺は、ハヴァマールの銀の髪を撫でる。気持ちよさそうに目を細める我が妹。まあ、いざとなれば俺が守ればいいか――。

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