大賢者と共にダンジョンへ!?

 ボウガンの完成に満足していると、背後から俺を呼ぶ声がした。


「ここでしたか、ラスティさん」


 小走りで俺の方へやって来たスコルは、少し息を乱していた。


「今帰るところだった。迎えに来てくれたのか?」

「はい、ハヴァマールさんとエドゥアルドさんが起きられましたので、そのご報告をしに来ました」


「わざわざすまない」



 胸を押さえ、息を整えるスコル。

 今日は陽射しも強く、気温も高め。

 体力を奪うような日光が照り付ける。

 油断すると体調が危ういかも。



「良いんです。それより、その岩のように大きな弓はなんです?」

「ああ、これか。これは無人島開発スキルで作った『ボウガン』さ。自動で矢を放ち、敵を排除してくれる防衛設備だよ」


「な、なんだか凄いですね……」


 ちょっと引き気味のスコルは、黒々とした巨大な弓……ボウガンを見つめる。こういう本格的な武器を見るのは初めてなのかも。俺もだけどな。


 これさえあれば島を、家を守れる。


「うん、これで少しだけど防衛力が高まった。帝国という脅威が存在する以上、自衛していかないとね」


「そうですね、この島を守る為ですもんね!」

「そうそう、生活が脅かされないようにね。もちろん、スコルは俺が守るけど」


 そう当然のように言うと、スコルは固まった。……あれ? ちょっと唐突すぎたかな。これでも本気なんだけどなぁ。


「……ま、守ってくれるんです?」

「そりゃそうだ。大切な女の子だからね」


「…………ら、らすてぃ………さん。う……」


「う?」


「…………う、うれしい、です……」



 どんどん声が小さくなって、なんて言っているのか分からなかった。う~ん? なんだぁ? 顔が真っ赤だな。――ああ、そうか! これは“熱中症”だ。いかん、俺とした事がスコルに無理をさせてしまった。


 緊急事態だと思ったので、俺はスコルを“お姫様抱っこ”した。



「直ぐに家に戻るぞ、スコル」



 持ち上げた瞬間、スコルは――



「あうぅぅぅ……(幸)」



 ぷしゅ~~~~~~と頭から煙を出して――気絶した。あああああああああああ、スコルがあああああああ……!!!



 ◆



「――というわけで、スコルは倒れてしまった」



 俺は帰宅後、リビングにいるアルフレッド、ハヴァマール、エドゥアルドに事情を話した。ハヴァマールは、どこか呆れ顔で俺を見つめる。なんで、そんな目線を俺に向けるかなぁ!?


「それは兄上が悪い」

「お、俺かよ。なにもしてないけどな?」

「だろうな。スコルは幸せそうだし、まあ、大事でなくて何よりだ」

「そうだな。ケガなくて良かった」


「……だめだこりゃ」

「何がだよ!?」

「いや、もういいのだ。それより、緊急会議があるのではなかったのか」



 ――そうだった。肝心な事を忘れるところだった。これから、エルフの国『ボロディン』へ行くかもしれないという計画を話す。けれど、スコルが気絶していてはな……。



「スコル込みで話したい。そんなに急ぎでもないし、今日は見送るよ」

「そうか。では、余は温泉へ行く。兄上も一緒にどうだ?」

「行くわけないだろ! 俺は島開発を進めつつ、自分の力を試す為にダンジョンへ行ってみようと思う。それとストレルカに挨拶もな」


「了解だ、兄上。気をつけて行くのだ」



 元気よく手を振るハヴァマールは、立ち上がって温泉へ行ってしまった。朝風呂か、気持ちいんだよなあ。俺も入ってから行こうかな。いや、明日にしよう。今日は先を急ぐ。


「アルフレッド、俺は一人でも行く。エドゥアルドの面倒を――」



 護衛を頼もうと思ったら、エドゥアルドが俺の手を優しく握った。



「待って欲しいのです、ラスティ様」

「び、びっくりした。どうした、エドゥアルド」

「わたしもそのダンジョンへ行きたい……です」

「エドゥアルドも? 構わないけど――いや、パーティを組もう。君の能力に興味があるし、大賢者の力も見てみたい」


「良いですよ。わたしは、そのダンジョンが自分の作ったものか、この目で確認したいだけなので」



 そういえば、大賢者は“ダンジョン作成”能力があるとかなんとか。それが本当なら凄いや。ダンジョンを作るって……俺の『無人島開発』と似通うものがある。良い機会だ、大賢者とやらの能力スキル、見せてもらおうか。

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