元皇子に敗北した聖騎士

 新しい食材もゲットして、次は……そうだ。『糸』だ。



「ハヴァマール、質問なんだがココナツの外皮を使って『糸』を作れないだろうか」

「外皮を? その発想はなかったな~」


 目を白黒させるハヴァマールは、興味深そうに俺の話に乗った。



「出来るのか?」



「可能か不可能で言えば“可能”だろう」

「おぉ! どうやって作るんだ?」


繊維せんいがもう少しあれば作れるかもな」

「よし、そうと決まればココナツをもっと消費しないとな」

「そうだな、糸は何かと使う必需品。何とか確保したい」


 そうと決まれば、ココナツをもうちょい採っておくか。俺は再び梯子はしごを使って、ココナツを取りまくっていく。



 必死になって作業を進めていれば――

 ココナツが山積みになっていた。



「も、もう積み上がりません~…」



 ヘトヘトになってしまったスコルは、地面に尻餅をついた。おっと、いかん。恐ろしい数になってしまった。



 ココナツ66個入手。



 これだけあれば食にも困らないし、繊維せんいもたくさん取れるだろう。さっそく、外皮をむしり取っていこうと思ったが――疲労が溜まった。


 スコルからヒールを貰おうにも本人もクタクタ。これ以上は、無理させられないな。少し休憩にしようと腰を下ろした時だった。



「ラスティ!! ラスティ・ヴァーミリオンはいるか――!!」



 浜辺の方から男の声がした。

 それが島中に響くようだった。

 なんて声量だ……!



 ていうか、この声は……まさか!



 急いで向かうと、そこには金髪の男が立っていた。聖騎士ヨハネスか。また性懲しょうこりもなくこの島に来やがったか。



「ヨハネス、お前一人か」

「そうだ、ラスティ! ひとつ言い忘れていた!!」



 血管がはち切れそうなほど怒っているヨハネス。なんだ、逆ギレか? この前は、アルフレッドを前にして勝手に降参したクセに。



「なんだ、言ってみろ」

「……わ、私の『ライトニングレイピア』を貸してください……」



 ヨハネスは、急に態度を改め――土下座して懇願する。って、なんだそりゃあ!?



「はあ?」

「あれは、ドヴォルザーク帝国の皇帝陛下より賜りし宝剣。それを失くしたとあっては……騎士の名に傷がつく。だから、頼むッ!」


「うるせえ、敗残兵。お前はとっとと帰って、クソ親父に報告でも何でもしやがれ! ここはお前の居ていい場所ではないんだよ。てか、不法侵入すんな」


「くッ! 言わせておけば……! ラスティ、この島はドヴォルザーク帝国の領海だぞ! むしろ、島を不法に占拠しているのはお前の方だ!」



 ――そうだったのか。

 道理でこの馬鹿騎士が船で容易くアクセスできるわけだ。という事は、割と近いのか。思考を巡らせていると、ハヴァマールが反論した。


「ふざけるな、聖騎士! その逆だろう! 島は、我が一族の『楽園』だ。決して帝国のものではない。今やラスティが王である」



 珍しくハヴァマールがキレてるな。てか、初めて怒っているところを見たな。



「銀髪の猫耳メイド!? なんだ貴様! むぅ? その顔、どこかで見た覚えが……」

「しまった……! ついに勢いで人間に顔を晒してしまった」

「むむぅ。に落ちんが、まあいい。宝剣を返せぬというのなら、こちらにも反撃の用意がある」



 反撃だと?

 前はアルフレッドにビビっていたクセに、今度は何か策があるというのか。そうか、そうでなければ、一人でノコノコやって来ないか。


 俺は、相手の出方を伺いつつ聞いた。



「一応、聞いておこう。その反撃とは?」

「よくぞ、聞いてくれた! それはだなぁ――」



「今だあああああああああ、くらええええええええ、この梯子はしご攻撃をォ!!」


 近くの木に立てかけてあったを梯子はしごは手に取り、『ビヨーン』と激しい勢いで伸ばす。そのままヨハネスの体躯ボディに目掛けて伸ばした。



「ぶふぉおおおおおおおおおッッ!!!」



 結局な威力でヨハネスは吹き飛ぶ。

 海に投げ出され、波にさらわれていった。



「どうだ、二連伸縮式階段梯子の威力!! わははは!!」


「くそおおおおおおおおおおおお、ラスティ!! 次はもう許さんからなあああああああああ…………うああああああああああああああ……!!!」



 運が悪いことに、ヨハネスはサメ系モンスターに襲われていた。海には危険な生物がいるんだな。勉強になったよ。

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