鉄製造スキル

 出現した『鉄製造』スキルを使用。

 テーブルが青白く発光した。

 なんて輝き……宝石のようだ。



「ハヴァマール、どうすればいい」

「鉄鉱石をテーブルの上に置くのだ」

「分かった、やってみるよ」



 俺は、アイテムボックスから『鉄鉱石』を10個取り出してテーブルの上に置いた。その瞬間、鉄鉱石が形を変えていく。グネグネと変化して『鉄』の塊となった。


 こんなアッサリと完成するのか!



「わぁ、鉄が出来ちゃいましたね……!」



 近くで見守っていたスコルが感心する。俺も同じ気持ちだ。こんなアッサリ完成してしまうとは。なら、残りの鉄鉱石70個も鉄に変えてしまおう。


 同じ手順でひたすら『鉄』に変えていく。魔力も何も必要なく、物の数秒で鉄が出来上がっていく。なんてこった、鍛冶屋ブラックスミスがこの状況を見たら、失業だと泣いて怒るぞ。



 ――作業を終え、鉄を80個入手。



「ふぅ、完成だな。こんな簡単に作れてしまうとはな」

「そうだろう、兄上。ワークテーブルは万能で、生活に欠かせない存在だ。これから、重要なスキルとなるので、使いこなせるようにしておくのだ」


「ああ、助かったよ。お前はよくやった、ハヴァマール」


 なんとなくハヴァマールの頭を撫でた。


「あ、兄上ぇ……」

「おうおう、可愛い奴め」

「うにゃぁ~」


 甘えた声を出し、ハヴァマールは気持ちよさそうに目を細めた。褒めていると、スコルがボソッと独り言をつぶやく。


「う、羨ましいです……」

「え?」


「わたしも何か貢献こうけんしないと、ですね……!」



 なぜか燃え上がるスコル。

 どうしたんだろう。

 う~ん……?



「さて、兄上。鉄が出来た以上は『武具』でも『日用品』でもなんでも製造可能だ」


「ああ、まずは調理器具だ。包丁、鍋、フライパン、お玉杓子たまじゃくし、ナイフ、スプーン、フォークを作る」


「包丁、鍋、フライパンは鉄2個。その他の小型器具は、鉄1個で済む」

「そんな少量でいいのかよ!?」


「うむ、それだけワークテーブルが万能なのだ」



 なんて能力だ。

 これがあれば、もう生活水準が一気に並かそれ以上となるぞ。……よーし、まずはお試しで『包丁』を作ってみるか。


 能力を発動し、鉄2個を置く。


 数秒してコトンと『包丁』が完成。

 そんなアッサリ!!



「マジィ! 楽過ぎて変な笑いが出るぞ」


「がんばれ兄上。どんどん製造して、我々の生活を豊かにしてくれい!」

「わたしも応援していますよ、ラスティさん!」



 二人から応援され、俺はやる気が超アップ。どんどん製造していった。



 ……その結果、鉄を23個消費して、包丁1個、鍋1個、フライパン1個、お玉杓子たまじゃくし1個、ナイフ4本、スプーン4本、フォーク4本をゲットした。




 これでもう最低限の料理は可能となった!



「スコル、調理器具が完成したぞ」

「おぉー! こんな風に道具を生み出せるだなんて、ラスティさんが魔法使いさんのようですよ。奇跡を目の当たりにしている気分です!」


 大興奮するスコルは、感激して包丁を振り回していた。ちょっと危ない人だぞ!


「その調理器具は全部、スコルのものだ。いつもありがとうな」

「え……でも」

「だって、これから料理してくれるんだろ。頼りにしているぞ」


「…………ラスティさん。はいっ、わたし……頑張りますから」



 あれ、俺……なんか胸がドキドキする。スコルの純粋な笑顔が素敵すぎて……まぶしくて。なんでだろう、今はスコルが世界一可愛いと思えた。


 ……どうしてしまったんだ、俺。



「良かったな、兄上」

「あ、ああ……。なんか顔が熱い」



 働きすぎて……風邪を引いたかな。

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