聖騎士①

 ドヴォルザーク帝国は、世界最大の大国。レオポルト騎士団に所属する、その兵力のほとんどが聖騎士であり、度々起こる戦争では敵国を圧倒していた。


 そんな最強とも呼べる騎士がこの無人島に上陸していたとは……くそう、完全に油断していた。ハヴァマールの言っていた通り、俺を探し回っていたんだな。



 あの金髪……相手は、パデレフスキ伯爵ヨハネスか。“閃電”の異名を持ち、その名の通り『雷系』の技を得意とする。俺の目の前でその大技を披露した事があった。だから覚えていた。


 連れの騎士は二人。

 どちらも見た事がない。

 恐らく初対面。


 裸のスコルを拘束していた。チクショウ、あんな雑に扱いやがって。絶対に許さん。



「これはこれは、元第三皇子のラスティ・ヴァーミリオン様ではありませんか」

「ヨハネス……俺を探しに来たのか」


「当然です。今やドヴォルザーク帝国は危機的状況。あなた様が追放されてから、ハイパーインフレーションが起きた。つまり、物価が急上昇したのです。周辺諸国も同じような現象が……難民を多く出し、滅びかけている」


「だから俺に戻れと?」

「ええ、これは皇帝陛下の命令です」



 ふざけんな。勝手に追い出しておいて戻れ? 俺が消えたから国が衰退してヤバイ? 知った事か。俺はもうこの島で生きると決めたのだ。


「断る。それより、スコルを放して貰おうか」

「スコル? ああ、この美しいエルフの事か。そうか、この少女は聖女スコル・ズロニツェか……それは良い事を聞いた」


「なに?」


「エルフの国ボロディンからスコル・ズロニツェの捜索依頼が来ていた。見つけた者には、ベルリオーズ金貨を支払うと約束してくれた。ならば、連れ帰る」



 そりゃそうか。聖女が行方不明なんだ、国は慌て探すわな。帝国の力を借りるほどに焦っているようだ。だが、スコルは俺の傍にいてくれると言ってくれた。俺は、本人の意思を尊重したい。



 ……いや、これは誤魔化しだな。

 俺は、スコルに居て欲しいんだ。


 だから、もう一度、本人の口から聞きたい。



「スコル、助けてほしいか?」

「……たすけて、ください。わたしは、ラスティさんと一緒に……いたいです」



 その言葉を聞けて俺は安心した。

 なら、心置きなく戦えると。

 守るために力を行使する。



 ゲイルチュールを構え、スコルを捕らえている茶髪の騎士へ猛接近。あまりの速さに、ヨハネスももう片方の騎士もビビっていた。



「うおりゃああああああぁぁ……!!!」



 敵騎士の胴体に“穂先ピック”を思いっきり叩き入れ、吹き飛ばす。茶髪の騎士は、一瞬にして海の方へ吹き飛び、砂浜に激突。大きな砂飛沫を上げていた。


 よし、いっちょ上がり。



「ラスティさん……!」

「もう捕まるんじゃないぞ」

「はいっ、でも、ラスティさんが助けてくれますよね!?」

「当然だ。大切な仲間だからな!」



 スコルを抱え、一気に後退。

 ヨハネスと距離を取った。



「馬鹿な……私の一番弟子・ロマンが一撃で……! ありえない……仮にも聖騎士だぞ! ラスティ、お前にはそのような力は無かったはずだ!!」


「昨日、徹夜したからな。また能力値が上がったんだろう」

「!? な、なんの事だ……」



 無論、ヨハネスは知らんだろうな。俺には『無人島開発スキル』がある。このスキルのレベルが上がれば上がるほど“習得者の全ステータス値が10%上昇する”のだ。現時点で『Lv.6』なので60%上昇中。実際はいろいろプラスされているだろう。何にしても、この恩恵はかなりデカイ。


 そうでなければ、イノシシやゴブリンを倒せていない。



「おい、ヨハネス! クソ親父に伝えておけ……この島は、ドヴォルザーク帝国に負けない島国になるとな! 攻めて来ようものなら容赦はしないと」


「調子に乗るな、ラスティ! 貴様のような無能皇子は大人しく帰ってこればいいんだ!」



 ついに剣を抜くヨハネス。

 物凄い闘気だ。

 これが本物の聖騎士・・・・・・の気迫。

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