調理器具を作成せよ!!

 アイテムの所持量については、これで話がついた。部屋に戻ろうとすると、お腹がグ~と鳴った。そういえば、もう夜になる。


 どうしようか考えていると二階からスコルが現れた。


「あのぅ、ラスティさん。そろそろお夕食の準備をしたいんですけど、台所使ってもいいですか?」



「構わないよ。材料はイノシシ肉とサザエとラズベリーだがな」

「では、家の完成記念にパーティにしましょう」

「そりゃ名案だ。スコルに任せるよ」

「はいっ、お任せください」


 台所へ向かうスコル。しかし、直ぐに落胆していた。どうした事かと俺は向かった。原因は直ぐに判明。


「これは……」

「調理器具が何もないんです……。これでは料理できません」


 包丁もなければ俎板まないたすらない。フライパンも鍋もない。つまり、スキルを持つ俺が作らないとダメってわけか。


「兄上、お察しの通りだ。調理器具の作成にもワークテーブルが必要。直ぐにレベルを上げないと不便のままだぞ」


 いつの間にか隣にいたハヴァマールがそう言った。そうか、もうちょいレベルアップしないと、いくら家があっても肝心な部分が不便なままだ。今度は生活道具が必要だ。食べていくうえで調理器具は特に重要。



 死活問題だ!!



 今までは木の棒で肉をあぶったりして何とかしたけど、台所ともなるとそうもいかない。



「分かった、スコル。悪いけど今日のところは外でバーベキューだ」

「そんなー…、お料理したかったです」



 しょんぼりするスコルの表情を見ると、俺はもうちょっと頑張らないとなぁと思えた。そうだな、美味い料理を食うために調理器具を開発してやるッ。



 ◆



 外にある『キャンプファイヤー Lv.1』を囲み、イノシシ肉を焼く。

 俺の作った木製ベンチの右側にはスコル。左側にはハヴァマール。俺は女子二人に挟まれていた。……なんだこの距離感。


 アルフレッドは少し離れた場所で肉を焼いていた。そんなプチパーティな雰囲気の中、俺はみんなに事情を説明した。



「聞いてくれ、みんな。今日は『家』が完成し、寝床は確保した。だが、依然として食に関しては不便のまま。これは由々しき事態だ」


 険しい表情のアルフレッドが口が開く。


「ラスティ様、それはどういう意味でしょうか」

「そうか、アルフレッドはあの場になかったな。さっき、台所を確認したんだ。すると、調理器具がない事が判明した」



「な、なんですと――――――!?」



 それは大問題だと手をワナワナ震わせるアルフレッド。事の重大さを物の数秒で理解してくれた。そうだ、生きる上で必要なのは『食』。



 せっかく台所なんて素敵なものも追加されたんだから、美味いものは食べたい。士気を上げる為にも美味い料理は必須だ。



「というわけだ、今日はもう遅いので調理器具の開発は間に合わない。明日にしようと思う。だから、みんな悪いんだが……手伝ってくれ!」



「もちろんですよ! わたし、お料理が大好きなんです。その為なら、ひと肌でもふた肌でも、全裸にだってなります!!」



 本当に服を脱ごうとするスコルを、俺は止めた。やめいっ!



「ラスティ様、必要とあらばいつでもご命令を。このアルフレッド、あなた様の任務は必ずや完遂いたしましょう」



 目を赤く光らす最強の執事。頼もしすぎるな。アルフレッドは、人生経験も豊富。サバイバル術だって心得ているはずだ。もっと知恵を借りよう。



「兄上、余も脱ごうか!!」

「なんで嬉しそうに脱ぎだすんだ、ハヴァマール!」



 ヘンタイ妹と、ついでにヘンタイエルフを止めた。二人とも美人だから、俺の身がもたん。



「兄上、兄上ぇ~♡」

「頭をスリスリしてくるなっ」

「兄妹ではないかぁ~♪」



 ハヴァマール、意外や甘えん坊だった。まあいいか、兄妹らしいし。――って、スコルがムッと膨れて、まるで対抗するように俺の腕にからみついてきた。



 あ~、もうメチャクチャだ……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る