第13話
河口近く。
待ち合わせの鉄塔近くの橋の下。
ついウトウト眠り込んだかえるくんです。
自然界において。
不防備に寝ることはぜったいに危険なこと。
そんな危険があふれる中でついついウトウトしてしまうかえるくん。
そこへ。
いきなり。
1羽のカラスが襲ってきました。
鋭い爪のカラスが、かえるくんをつかもうとしたその瞬間。
掴んだのは白の鈴。
それでも。
チリンと鳴った鈴にも、かえるくんは気付いていません。
絶体絶命!
危ない!
そのときです。
川面からジャンプする大きな魚の姿が。
大きなその魚は、大きなカラスよりもさらに大きな姿です。
どーん!
カラスに体当たりをする大きな魚。
これにびっくりして慌てて空中に逃げ飛ぶカラス。
間一髪の危機を逃れるかえるくん。
何が起こったのか分からず、目を白黒するかえるくんですが、すぐに状況を理解しました。
目の前の大きな魚にお礼を言うかえるくん。
「助けてくれて、どうもありがとう」
おじぎをするかえるくんに、その魚は近づいてきて。
ほっぺをスリスリ、スリスリ。
「かえるくん、帰ってきたよ」
「えっ!?」
「鮭くん?」
大きな魚はよく見れば、故郷のブナの森の色。
丸い瞳には小さかったころの面影も残る鮭くんです。
かえるくんの何倍も何倍も大きくなった鮭くん。
ふるさとのブナの森の色をしています。
(鮭くんはブナの木のようになって帰ってくる)
亀じいさんの言った言葉を思い出すかえるくん。
鮭くんはまさしく、ブナの木のように大きくなっていました。
となりには同じくらい大きなメスの鮭ちゃんもいます。
「久しぶりね、かえるくん。」
「鮭ちゃん?」
「そうよ」
鮭ちゃんもかえるくんにほっぺをスリスリ、スリスリしてこたえます。
「その鈴は?」
鮭くんが尋ねます。
「これは猫のシロさんから預かった鈴だよ!
キナコさんに渡すんだ」
と、先ほどのカラスが空中で羽ばたきながら、再びかえるくんを襲おうとしています。
今度は5羽の仲間のカラスを連れて。
「さっきはよくもやってくれたな!」
「こっちは6羽」
「鮭もかえるも食ってやる!」
6羽のカラスが、かえるくん、鮭くん、鮭ちゃんを囲んで空中から威嚇します。
「鮭くん、危ないから早く逃げよう」
「大丈夫だよ、かえるくん」
「そうよ、心配しないで」
四方からカラスが襲ってきます。
鮭くんと鮭ちゃんがにっこりと笑ったそのときです。
どーん!
どーん!
どーん!
どーん!
ほぼ同時に、空中のカラスに体当たりをする魚たち。
びっくりして川に落ちそうになるカラスたち。
6羽のカラスは慌てて上空へ逃れます。
あちこちでジャンプをする魚たち。
それは川面が真っ黒になるくらいの鮭の大群です。
その数の凄さに、あわてて逃げていくカラスたち。
春に川を降って行ったたくさんの鮭が戻ってきたのです。
そんな鮭の大群の先頭にいるのが鮭くんです。
鮭くんが言いました。
「さあ帰ろう」
「うん、帰ろう」
かえるくんが大きな鮭くんの背中に乗ります。
リンリン、リンリン。
軽やかに鈴が鳴ります。
さぁ帰ろう。
ふるさとに向けて最後の旅が始まります。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます