第11話


ヘビが大きな口を開けてかえるくんを飲み込もうとします。


ぎゅっと身を縮めるかえるくん。


そこに。


長い鋭い爪を伸ばした白い手が振り下ろされました。


まさか自分が攻撃されるとは思ってもいなかったヘビです。

振り下ろされた白い手に吹き飛ばされていきます。

飛ばされた先が水田であったヘビ。


フー!!

ニャー!!

水が嫌いな白い手の持ち主が、ここで少しの躊躇を。

これぞ、チャンスとばかり慌てて逃げていくヘビです。


危機一髪。


またも大きな動物に助けられたかえるくんです。


「ありがとう!

またねこさんに助けてもらったよ!」


「えっ?」


物おじもせずにお礼を言うかえるくんです。


「どんなねこだい?」


思わずシロもこう応えてしまいます。


「それはね・・・」


ここよりも川の上流で。

とかげに襲われたとき、ネコのキナコに救われたこと。

とても優しいねこだったこと。

川下に住む兄弟ねこのシロを気遣っていたこと。


「そうか、、キナコは元気だったんだ」


「えっ?」


「おれがその兄弟ネコのシロさ」


ニッと牙をみせて笑う姿はどことなくキナコの面影がありました。


シロは、かえるくんから兄弟ねこのキナコの元気な様子を知り、たいそうよろこびました。


こうしてかえるくんは新しいともだちシロに出会いました。


メダカと遊んだり、ほかのかえると遊んだりして楽しく過ごす毎日。

たまにはシロと話もします。

いつしか田んぼの稲も大きくなり。

朝晩、めっきり寒くなってきました。

たんぼの水嵩(みずかさ)も減ってきたようです。

めだかたちは流れのあるほうへ下っていきました。

かえるたちも土の中に潜って冬眠の準備を始めています。


「また春に会おうね」


ともだちになったメダカやかえるとお別れします。

風に冷たさを感じ始めたころ。

田んぼの水も完全になくなりました。

夕陽が稲穂を赤々と染めていきます。


秋です。


「そろそろ川へ向かわなきゃ」

かえるくんもシロにそう告げました。


「行くのか?」


「うん」


「じゃあおれが送っていくよ」

「そうだ、かえるくん。

お願いがある。

この鈴をキナコに渡してくれよ」


「俺は元気だよ。お前も元気だとうれしいと伝えてくれないか」


「うん、わかった!

ちゃんとキナコさんに伝えるね!」


シロから鈴をあずかります。

あずかった鈴を首からかけるかえるくん。

その鈴と変わらない大きさは、かえるくんの頭。

かえるくんが笑うと、鈴もコロコロと鳴きました。

まるでいっしょに笑っているようです。

シロはそんなかえるくんを頭にのせて

、河口まで連れていってくれました。


「また会おう」


シロはこう言って去っていきました。


「うん、ちゃんとこの鈴をキナコさんに渡すからね」




すぐ近くに大きな鉄塔も見える、橋の下。

朝晩、めっきり涼しくなりました。


ますます秋を感じます。


2日、3日と待ち続けるかえるくん。

かえるくんが鮭くんを待ち続けて何日めか。

ウトウト眠りかけているかえるくんです。


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