第52話俺の血が騒いでる


「はぁぁぁぁっ!!」

『ギギギッッ!!』


 数分――


 ミルクは呼吸をつく間も無く矢を振り回し、指で数えれる程までにモンスターの数が減っていた。


「ミルク!! もうそろそろ逃げれんじゃねぇか!?」


 リンとナナミに相変わらずしがみつくリクは、真紅のナイフ片手に大声をあげる。


「でもそれじゃ、リクくんが2人を運ぶことになっちゃうから! もう少し減らして――いっ!」

「ミルク!?」


 ほんの一瞬チラリと三人の方を向いたミルクに襲いかかったのは、リトルオーク。小デブな体型とは裏腹に敏捷性に長けたモンスターだ。


『ブォォォッ! ブォッ!』

「くぅぅ、こんのぉぉぉ!!」


 左腕を殴られたミルクは、歯をありったけ噛み締め、全力で手に召喚した矢をオークの脳天に振りかざす。


『ブォッ!?』

「くっ、速い!」


 突如振るわれた矢に驚きながら後退するオークに舌打ちしながら、ミルクは、背後から迫っていたゴブリンに、分かってるよ! と、ノールックで後ろ蹴りを御見舞し、体制が崩れたゴブリンに向け矢を突き刺す。


「ミルク……武闘系もいけるのか……?」


 すかさず振るわれた回し蹴りによって若干揺らいだゴブリンは、ふっと青白いオーブとなって消えていく。

 その一連を見ていたリクは気づいてしまった。


 今なら俺でも行ける臭くね?


 と、


「良しミルク! 交代だ! なんかもうちっこいのしかいないし俺がやる!」

「いやでも!」


 大型モンスターが消えた今、小型モンスター程度なら行けるのではと、先程のゴブリンを見て確信した。

 一応俺だって男、それにナイフだってある。いける! そう思ったのだ。というか思いたかったのだ――


「やっぱり私が……!」

「ダメだ! 正直俺は弱い! この先大型モンスターが来たら俺は戦えない! だから今は安静にしててくれ! これは俺のためでもある! 分かるな!」

「確かにリクくんの言ってることは合ってる……けど」

「大丈夫だ、とりあえず2人を守ってやってくれ、俺はあのチビデブ倒す!」


『ブォッ! ブォッ!』


 茶色の肌を揺らすリトルオークを見ながら、リクはナイフ片手にミルクとスイッチし、二体のリトルオークと三体のゴブリンを視野に入れた後、俺のナイフが血を欲っして騒いでらァ。と笑みを浮かべながら真紅のナイフを輝かせ、キメ顔で口を開く。



「さぁ女の子3人を守る俺の英雄譚を綴ろうかぁっ!!!」

『ブォォォォォ!?!?!?!?(きっしょこいつ)』←後にリンさんに翻訳してもらいました。フィクションです。フィクションだからな!?!?By大久保陸。


 そんな厨二病極まりない発言にモンスター含め、その場にいた誰もが共感性羞恥を煽られ凍りつき――



《絶対零度魔法ヘンタイノキワミの派生魔法、チュウニノキワミを獲得しました――》


 効果

 心底から凍てつかせ、最大一分間最低五秒間動きを止めることができる。尚効果は相手の理解力、言葉の浸透力に比例します。



 まーた、余計な魔法覚えちゃったよ。

 

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