いざ、オフライン会場へ 3
「あ、来た!」
最後のニシが到着して、会場の最寄り駅に4人が集まった。二日間と短い期間のため、皆荷物は少ない。よくよく考えると、この間のテツとの方が長かったのか。
「久しぶりだね」
タイガがそう言うが、違和感しか感じない。決して間違った使い方ではないが、毎日一緒にいる人達にこの言葉はなんだか合わないな。
こういった時に、適切な言葉とはあるのだろうか?
「俺とヴィクターさんは違うけどな」
テツがタイガの肩に肘をかけながらそう言う。
「ついこの間まで一緒だったからな」
まさにそのとおり。俺達はなおさらだ。
「と言っても俺たちが集まったのも2週間ちょっとくらいだけどな」
ニシに言われて思い出す。確かにそうだった。俺はあのあと色々あったから、かなり前のような感じがするが、まだそれしか経っていなかったのか。
「じゃあ、そろそろ行きますか」
最後に到着したニシ以外は、地面に置いてある荷物を持ち、タクシー乗り場の方へ向かう。 確か領収書さえあれば、後日チームに振り込む手筈らしい。俺達の場合はチームに所属していないので、代表選手のところに振り込まれるらしい。
真っ昼間だということもあり、すぐにタクシー捕まった。2台に分けようかと思っていたが、タイガが「一緒がいい」と言うので、少し窮屈な思いをして、皆一緒に乗った。
一番デカいテツが助手席に、テツ、タイガ、俺の順番で後ろの席に座った。
運転手におじさんには、会場を言うだけで、伝わったので楽だった。
「楽しみだね〜」
まるでこれから、遠足に行くかのようなニュアンスだ。
「お兄さんたち、何しに行くの?」
タイガの発言に、運転手さんが反応した。
「大会だよ!」
「ええ~、なんの大会ですか?」
タイガの返答に少し疑っているようだ。俺たちの服装的にも部活ではないと予想がつくだろうし、まず同年代にはみえないだろうからな。
「フォージの大会です!」
果たして、それで伝わるだろうか? 野球やサッカーのよう誰でも知っているスポーツとは違い、ゲームの、しかもタイトル名を言っても伝わらないだろう
「なんですか? それは?」
案の定だ。
「おっちゃん、俺達これからもゲームの日本一を決める大会に出るんだ」
横にいる運転手の方を見ながら、テツは簡潔に分かりやすい説明をする。
さすがだ。みんなと会えてテンションが上がって、より精神年齢が下がったタイガとは大違いだ。
「へぇ。今どきはゲームの大会なんてあるんですね。しかも、日本一なんて。お兄さんたち凄い強いんだね」
「まあ、それほどでも」「そうっす」
「そこ、ストレートにそうですって言うのかよ」
「強いんだね」って言われて嬉しかったであろう、タイガとテツの反応が面白く、つい声にでてしまった。
「うちの息子も、ゲームばかりやってるけど、そのうちお兄さんたちみたいに、プロゲーマーってやつになれるのかね?」
「………いやー、どうですかね?」
タイガとテツが一瞬黙ってしまったため、俺が変りに返答する。恐らく「プロゲーマー」という単語に反応してしまったのだろう。俺たちはプロチームに所属していないため、厳密に言うとプロではない。だからといってそこで強さは変わらない。
だけど、ゲームについて詳しくない人に、それを説明しても上手く伝わるかどうか分からない。そのため、なんと言えばいいか分からなかったのだろう。
「僕たち、ODDS&ENDSっていうチーム名なんです。もしよかったら息子さんと応援してくれると、嬉しいです」
さすが、年長者だけあってしっかりとした、大人なの振る舞いに驚く。しかも、ニシのこの発言で一連の会話が終わったた。
この後社内では特に会話をすることなく、目的地に着いた。駅からも大した時間ではなかった。
3人が先に降りて、トランクから荷物を取り出している間に、俺が会計を済ませる。おつりと領収書をもらい、俺も車から降りようとしたときに。
「頑張ってくださいね」
運転手さんが、体の前で控えめなガッツポーズをしてそう言う。
「ありがとうございます」
会場の入り口に着き、本人確認を行って中に入った。規模は2000人くらいの場所らしいが、実際は配信やら機材の関係でそこまで人は多くないらしい。
前日までは、実際にプレーする場所には入れないらしいので、一旦は控室に行く。
案内された部屋のドアを開けると、想像していたより広かった。ゲーミングPCが4台並んでいるのと、別に机とソファがある。まだ関係者しかいないものの、設営準備などの関係で、ぱっと外に出られないらし。
だけど見た感じ、そこまで不便を感じずに、プレイ出来そうだな。
荷物を隅に置き、パソコンの前に行く。
「座る順番どうする?」
一番端のパソコンの前に、座ろうと椅子に手をかけた時に気づいた。
4つあるうちのどこに座るかだが。
「無難にヴィクターさんとタイガが真ん中でいいんじゃない?」
確かに主な指示を出すのは俺がほとんどで、戦闘のコールはタイガだ。とはいえ、ヘッドフォンをつけて、ゲーム内音声でやり取りをするのだから、あまり変らないような気もするが。
「じゃあ、テツがタイガの隣でニシが俺の隣でいいかな」
「そうですね、それでいきますか」
それぞれが、今ので決まった配置に座り、デバイスのセットやゲームない設定をし始める。
「いよいよ、本当に始まった感じがしますね」
タイガが俺の方を向きながら言った。
その後俺達は、普段通り、個人練習の後チーム練習をした。控室を使えるのが、20時までだったので、普段よりはかなり早い時間に切り上げる必要はあったが、質のいい練習が出来た。
デバイスはそのままで、宿泊の荷物だけを持ち会場を出る。ホテルはすぐそばだったので、歩いて向かいその日は終わった。
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