俺らはゲームに本気なんです

伊豆クラゲ

1章

プロローグ

「な、な、ななんと! 視聴者の皆さんは既にお気づきだとは思いますが! とんでもない伝説が誕生しました!」


 その実況者は、多くの人の感情の高ぶりを代弁した。始まる前は誰もが、こんな結末になるなんて思いもしなかっただろう。

 このゲーム史に残る偉業を成し遂げた、一人の選手。


「全6試合の中でこんな、予想だにしない出来事が起こるなんて、思いもしませんでした。ですが、みなさん。大変申し訳ないのですが、まずは総合順位からの発表になります」

 

 その実況者も歴史的瞬間に早く立ち会いたいと、そわそわしているのを抑えながら、自らの仕事を進行する。

 そして、画面に映るのは全20チーム順位表だ。


「以上の上位10チームが、世界大会への進出を決めました!」

 

 長きに渡る予選を経て、今ようやくこのゲームの、初となる世界大会への切符を掴んだ10チームだ。

 色んな前評判があったものの、蓋を開けてみれば、予想されていた10チームがそのまま並んだ結果になった。リリースしてまだ僅かのゲームだからか、プロと言えども、実力差がはっきりと分かるものだった。

 だからか、始まる前から、消化試合なんて揶揄する人もいたほどだ。それほど、順当な試合が続き、予想通りに進んでいったのだ。


 たった一つ、10番目の一個下のチームを除いては。


「さあ、みなさん。お待たせしました。ついに個人キルの発表です」


 順位表に切り替わったと同時に、とある男の名前が一番上にあるのが分かった。

 


「なんとヴィクター選手! 下馬評を覆し‘たった一人でチーム「霧島」を‘総合順位11位まで押し上げました! その戦いはまさに鬼神のごとく、目の前の敵部隊なぎ倒していきました! いかがでしたか? 解説のダンゾウさん」


 すると実況者のすぐ隣にいる男が口を開いた。


「いやー、まさかこんな結果になるなって思いもしませんでしたよね。このゲームって3人一組のゲームなので、人数不利を覆すのって、相当な実力差が無ければ出来ないんですよ。それなのに、日本のトッププロ達を相手にこの成績ですからね」


 それも、そのはずで、その男が所属していたチームは、誰からもなんの期待すらもされていなかったのだから。しかも、メンバーは二人は体調の悪化で不参加とあれば、誰も見向きもしないのは当然だ。

 しかし、突然現れたダークホースは、選手には緊張を、視聴者に熱狂を与えた。


「今回はギリギリ残念な結果になりましたが、次が楽しみですね」


 誰しもが期待をしていた。新しく見出された一人の最強が、この先どんな熱いシーンを見させてくれるかを。

 

 しかし、その最強に次はないなんて誰も思いもしていなかった。



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