2020年1月23日(木)-2

(しかし六歳になって多少しっかりしてきたとはいえ、まだまだ人見知りもすごいし、ちゃんと眼科の検診受けられるかなぁ?)


 娘と二人で診察室に移動しながらも不安で胸が微妙にもやもや。


 だが娘はわりと平然として、優しげな看護師さんについて歩いて行き、まずは小さい丸の中を見る機械の前に座らされる。


「その紙のところに顎を乗せて、ここにおでこをくっつけてね。それで、その穴をのぞくと、遠くにおうちがあるんだ。それを見ていてくれる?」


 と看護師さんに言われるも、娘は顎を乗せるのはまだしも額をつけるのがよくわからず困惑気味。もう一人の看護師さんに後頭部をそっと押さえられつつ、じーっと穴の中をのぞいていた。


 どうやらピントが合ったりぼけたりする過程がおもしろかったらしく、見ているあいだも終わってからも「赤い屋根の家があったの」と楽しそうに話していた。


 次に問題の視力検査。

 就学前検診では黒いしゃもじみたいなのを自分で持たされ、穴が空いている方向を指で指すという感じだった。


 しかし、当時の娘はやり方がよく理解できなかったようで、何度も首をかしげていた。

 おかげで検査の進みも悪く、また検査していた先生が「その子よくわかっていないみたいだから教えてあげて」とほかの先生を娘につけたこともあり、よけいに緊張して訳がわからない状態になっていたのだ。


(おまけに受付が今からはじまりますというタイミングで、鼻血出したしな)


 当時のことを思い出してつい遠い目をしてしまう。


 まさに今から個人情報を書いた紙を受付に提出しますというタイミングで、娘はなんと鼻血を出してしまったのだ。

 水道に近かったので列を抜けてすぐに手を洗い、ポケットティッシュをこよりにして鼻に突っ込むことで事なきを得たが、その後ずっと鼻にティッシュを突っ込んだままの移動になった。


 おかげで眼科検診の後に続いた、歯科検診や内科検診や耳鼻科検診などを受けるのに教室を移動するごとに「あれ鼻血出しちゃったの!?」と驚かれる羽目になったという……


(○子本人だって出したくて出したわけじゃないのに。洋服も白を着ていたからちょっと汚れちゃって、ホントあのときは気の毒だったわ)


 そんなことを考えているうち、娘は片方のレンズだけ真っ黒なフィルターを入れられた眼鏡をかけさせられていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る