2020年1月22日(水)

「ごめん、やっぱり月曜から山梨に泊まりで行ってくれって会社が」

「えええええええええええ!?」


 ということで夫は泊まりがけの出張に再び出かけ、結局ワンオペ育児になってしまった今週である。

 やはり育児をしたことのないオッサン上司どもには、未就園児とか幼児と一緒に一週間ワンオペ育児を強制的にやらせるイベントを社会全体で推進するべきだ……。


 そんなことを思いつつ、しかたなく子供たちと過ごして三日目の朝。


「ママ~、朝よぉ」

「あ、あぁ、うん、おはよ……」


 息子に揺さぶられて起きたとはいえ、まだスマホの目覚ましアラーム鳴ってないんだから7時前だろどうせ……と思いつつ、スマホをたぐり寄せ時間を見て、目ん玉が飛び出しそうになった。


 現在時刻7時40分。


「ひょぉえええええ!? あと20分で幼稚園バスきちゃうじゃん!?」


 ナゼに7時に鳴らなかったスマホのアラームちゃん!


(はっ、そういえば昨日○市が時計のアプリなんかいじくっていたような……)


 確かストップウォッチ的なやつで遊んでいたと思っていたが。あのとき間違ってアラームの予約を解除しちゃってたのか……!


「……ええい、そんな原因なんてどうでもいいわ! 子供たちほら起きろ! ほら今すぐこれに着替えろ!」


 一月の肌寒い空気の中でエアコンをつける余裕もないまま、布団から起き上がった子供たちにそれぞれの着替えを放り、わたしも急いで靴下をはき、ズボンだけ着替える。

 上はパジャマのまま丈長のダウンコートを羽織り、髪だけとかしてマスクをつけた。


 二人ぶんのお鞄にカトラリーとランチクロス、コップ、紐付きタオル、遊び着を放り込み、水筒を用意する。

 母のただならぬあわてぶりに、いつもは着替えに二十分もかかる子供たちが、ちゃんと服を着込んでのたのたとやってきた。わたしは即二人に園服を着せ、コートを着せる。


「あああ~! 体温忘れてた、急いで計って!」


 幼稚園ではプールの時期の6月から8月、インフルエンザが流行る12月から3月まで検温が義務づけられている。

 プールの時期と違って冬は体温を測っていなくても、特に風邪などの症状がなければなにも言われないが、まだまだお休みが多い時期だけに、やはりこういうのはちゃんとしておかないと。


 そうして朝一だからか低い体温を体温表に記入して、鞄を背負った子供たちを玄関に急かす。自分は冷蔵庫からチョコと一口チーズをひっつかんでダウンコートのポケットに入れた。


 園バスがやってくるのは8時02分。バスを待つ場所に到着したときは7時57分だった。急いでポケットからチョコを取りだし、子供たちの口に放り込む。


「ごめんね、今日はこれが朝ご飯代わりね」


(とはいえ、こいつらヘタしたら朝ご飯食べないときも多いからな……)


 この寒い時期に唯一食べられるのがアイスという感じで、なんならガリガリ君だけ食べて出かける有様だ。ガリガリ君に比べればチョコのほうが栄養価は高いに違いない。


 そうして子供たちが食べ終わる頃に、園バスがカーブを曲がって入ってきた。

 何事もなかったように先生に挨拶し、二人をバスに送り込む。息子はまだ口元がもぐもぐと動いていたが、全力で見ないフリをした。


 おかげで「行ってらっしゃ~い」と遠ざかるバスを見送る頃には、もうぐったりと疲れ切ってしまった。

 起床から20分でよくやったよ、自分。もう二度とこんなことを起こすまいと思いつつ、明日はきちんと鳴るようにスマホのアラームをセットし直すのだった。

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