第6-1話 ダメージ床整備領主、街領主に昇格する
「キャンペーンの効果は凄いですじゃ! 移住の申し込みがこんなに!」
毎日大量に届く、移住申請書に村長が目を回している。
人口流出に悩む帝都、中央政府が打ち出した帝都からの移住者に対する税金、それを全額補填するとアピールしたカイナー村のキャンペーンは大当たり。
ここ数か月毎月1000家族レベルの移住申請があり、カイナー村の人口は1万人を超えた。
開拓した住宅地も瞬く間に満杯になり、新たに広い住宅地を追加した。
住宅の建築ラッシュで村に2軒しかない大工は大忙し、他地域からの応援も呼んでいる。
移住者が払う毎月の税金と、住宅地の分譲費用で、カイナー村の財政は大きく潤ったのだが。
「カールさんっ! ”ダメージ床参式”で新しい農地開墾、完了しましたっ!!」
「にはは……わらわの”ばくえん”で、雑草処理とどじょうかいりょう、やっておいたぞ!」
土で頬を汚しながら元気よくビシッと報告するのはアイナとサーラだ。
彼女たちには”ダメージ床参式”を使い、新たな農地の開墾を担当してもらっている。
アイナがうおおおおおおっ! と”参式”を地中に埋め、私がダメージ床を発動、掘り起こされた土と雑草ごとサーラが爆炎のブレスで焼き尽くす。
炭になった雑草は農地の肥料になるというわけである。
その後、アイナと村人たちがまたうおおおおおおっ! と耕して完了である。
彼女たちのお陰で、物凄い勢いで農地が広がっていった。
これは、移住者たちの仕事を作ることと、いざという時のために食料を自給できる体制を整えておくことが目的である。
「村長、もう一つ朗報があるぞ!
先月から申請していたが、昨日正式に承認された。
カイナー村は、来月から”カイナーの街”になる!」
「おお、まことですかっ! ついに……!」
人口や経済力の基準を満たしたので、帝国政府に申請しておいたのだ。
”街”という箔が付くし、帝国からの交付金も増えるので一応やっておくか、というヤツだ。
「さーて、次の策だな……」
カイナー村のために新型の”ダメージ床”を開発したんだ……そいつを試すため、私はアイナたちを連れて郊外の農地へと向かった。
「……ん、これは申請書類に埋もれてましたが、カール様への書状ですかな?」
移住申請書の中に交じっていた一通の書状……カール宛と書いてあるそれを彼の机の上に置くと、村長は急いでカール達を追いかけたのだった。
*** ***
「カールさんっ! 次はどんなダメージ床なんですかっ!?」
今度はどんな面白いものが見れるのかと、拳をぐっと握りながら尻尾をぶんぶんと振るアイナはわくわく顔だ。
ここは郊外のトマト畑。
畑のトマトはたわわに実っているが、まだ熟していないのか、実はすべて緑色だ。
「ふふふ……アイナよ、まずはコイツを畑の四隅に刺すんだ」
私は4本の”ダメージ床四式”をアイナに手渡す。
「これは……”弐式”とちょっと似てますね?」
形が”弐式”と似ているので、効果も似ているのかな? 期待と少し違う感じに、ハテナを浮かべているアイナ。
確かに、形状は”弐式”と似ている。
棒の先端についている”網”は、より大きく、メッシュがより細かくなっているが。
「ふふん、効果は全然違うぞ? まずは設置してみよう」
「あ、了解ですカールさん! えいっ!」
うなずいたアイナはダッシュすると、四隅に”四式”を設置してくれる。
「よし……発動、”ダメージ床四式”!」
パアアアアアアアァァ……
私が起動の術式を発動させると、畑の四隅に設置した”四式”の網が、緑色に発光し、淡い緑の光がトマト畑に広がっていく。
「ふわぁ、きれい……って、えええええええっ!?」
繰り広げられた光景を見て、アイナが驚きの声を上げる。
「トマトが……熟していく……?」
成り行きを見守っていたトマト農家さんも呆然としている。
その間にもどんどんとトマトは赤く熟していき……数分後にはすっかり収穫できる状態のトマトが出来上がっていた。
「よし、停止!」
ダメージ床を停止させる私。
”四式”の効果をドヤ顔で説明する。
「この”ダメージ床四式”は、特殊な魔力を発生させることで、農作物の成長を促進できる……放置すると熟しすぎて枯れてしまうから、私のコントロールが必要だがね」
「す、すっご~~い! これでアイナの大好きなイチゴも食べ放題じゃないですかっ!」
「領主様……素晴らしいですね……畑一枚ずつ順番に熟させることで、安定した作物の供給が可能になります!」
さすが農家さんは私の考えを正確に把握してるようだ……これで人口が急増することによる食糧問題も解決できるだろう。
ダメージ床シリーズによる強固な防御と、村人たちの戦力増強、食糧生産の向上による完全自給体制の確立と、カイナー地方は着々と最強地方への道を歩んでいた。
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