第26話 瀕死の貴族なんて怖くない

「おい!ナディア!ミナミがこう言っているのだぞ!なぜ話を聞かない、さっさと解呪ができるのであればミナミを解呪しろ!もはや貴族ですらなくなったお前の元にこちらがわざわざやってきてやったのだぞ!そんな奴との話など後にしろ!」


ナディアは最も忌むべき存在から知り合いであるシータを馬鹿にされ、彼をにらみつける。ナディアからすれば彼らの会話など、聞く価値すらないものなのだ。


「何であなた方の話なんて聞かなければならないんですか?聞く価値なんてありませんね。ここは私がヘイル王子から頂いた家ですのでさっさとどこかに消えてください。」


「ナ、ナディア様!さすがにマズいですよ。この人たちは貴族でナディア様は平民なのですよ。そんなことをしてしまえばマズいですって。特に王子までいるんですよ。」


突然のナディアの発言にあたふたするシータだが、ナディアは止まらない。既にナディアの父は爆発しそうだがナディアはそこにさらに燃料を投下する。


「大丈夫ですよ。どうせこの人たち、城にいられなくなって誰にも介抱されないと分かったからこんな死にそうな、なりをしてここまでやってきたんですよ。だって、そうでないとここまでボロボロなのに本人が来るはずがないですよ。


王城でメイドに介抱をされながら誰かに私を捜させるはずです。ですが、それもできていないということは誰も彼らに近づかなくなったということです。それもそうですよ、誰が好き好んで呪いをまき散らす人間や、それを連れてきて自分たちに呪いをうつした人間の介抱を行いたいという人間なんているんですか?


むしろ、呪いにかかっている以上、自分もうつってしまうのではないかという考えが働いて誰も近寄ろうとしませんよ。」


「うぐっ、どうしてナディアがそれを。」


「おねえちゃんはいなかったはずなのに。」


レイン王子やミナミの反応からナディアの推測が正解であるということは誰の目にも明らかだった。そんな彼らの反応を見てナディアはほら見たことかというような顔をする。


「ねっ、シータさん。この二人の表情を見れば一目瞭然です。どうせこんな事だろうと思いましたよ、人間の性格がすぐに変わるわけがないんです。」


そんなナディアの説明に納得しているシータではあるが問題はそこではない。


「そうではないですよ、相手は貴族なんですから。そんなことをすれば後でどんな難癖をつけられるか分かりません。」


「大丈夫ではないですか?この人たちは城にいる大勢の人間の信頼を失っているんです。そんな人間が何かを言ったところで子供が道端で叫んでいるのと変わりませんよ。誰も耳を貸そうとしないでしょう。」


「その通りだ!もはや彼らの言い分など、すべてが戯言だ。」

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