第17話 威厳なんて捨ててしまえ
メイドを救うことが出来ず、王子が絶望の淵に立たされている中、ヘイル王子の従者であるロドストはナディアの存在を思い出す。
「ヘイル様、こうなれば解呪を行えるのは医療ギルドで解呪を行ったナディア様、ただ一人です。私がどうにかして説得を試みますのでおまちください!」
それを聞いて驚くのは解呪師の方だった。
「ま、待ってください!この呪いを解呪できたものがいるのですか?」
「はい、同様の症状で寝込んでいる人間が医療ギルドにも大勢いたのですが、その方によって解呪され全員、完治したという報告を受けています。」
「信じられません、ここまで強力な解呪を行える人間がいるというのですか?失礼ですが、本当にその患者たちは呪いだったのですか?ただの似たような病気ということではないのでしょうか?」
解呪師がこう言ってしまうのも無理はない。それくらいにメイドにかけられた呪いは強力だったのだ。医療ギルドで解呪を行ったナディア本人も気が付いていないことだが、こんな強力な呪いを大した疲労もなく、何人も解呪すること自体が異常なのだ。
「おそらく、本当のことかと。実際に、その方が解呪を行うまではこの症状の原因は一切分かりませんでした。その方のおかげでこの病状の原因が呪いであると分かったのです。」
「なるほど、確かにそのような話であれば解呪を行ったのは本当のようですね。しかし、いまだに信じられないですね。そんなことが出来るのであれば世界一の解呪師と言っても過言ではありません。私などではなく、なぜその方にお願いしなかったのでしょうか?」
解呪師からしてみればナディアとレイン王子の関係を知らない為、当然の質問であった。
「実は、複雑な事情がありまして。」
そう言うと、ロドストは解呪師に何故、ナディアを呼ぶことが出来ないかを説明する。
「あぁ、確かにそれは難しいですね。私もそんなことがあれば協力しませんよ。」
「貴殿の言う通りだ、そんな仕打ちをされれば私だって協力などごめん被る。しかし、彼女は私の大切な部下なのだ。その彼女を治すことが出来るのであればどんなことだってするつもりだ。
ロドスト、そのナディアというものの場所に案内してくれ。私が直々に頭を下げて治療をお願いする。それでも彼女が拒否するのなら土下座でも何でもしてやるさ。」
「ヘイル様、なんていうことを言うのですか!そんなことをするのであれば私がお願いしに行きます。あなたは王子なのですから、そのようなことをされては困ります。それに、もとはと言えばレイン王子が原因なのです。ヘイル様が気にされる必要はありません。」
ヘイル王子が土下座までしてナディアに依頼をすると言い出し、ロドストは焦ってしまう。王族が土下座をするなどしてしまえば、今後、王族としての未来は無くなったも同然だからだ。
「いや、ダメだ。王族の私が頭を下げるからこそ、意味があるのだ。ロドストを向かわせて頼んだところで私のことなどレインと同じ王族と思われるだけで断られてしまうかもしれない。
そうなってしまえば部下を救える望みは無くなってしまうのだ。それだけは避けたい、部下の命を救えるのであれば私の土下座の一つや二つなど安いものだ。」
どれだけ説得を試みても一向に折れることのないヘイル王子に最終的にはロドストの方が折れてしまい、ヘイル王子とロドストの二人でナディアに依頼しに行くことが決まったのだった。
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