第10話 王子なんてギルドからすれば大したものではありません!

「貴様!どういうつもりだ!娘が加盟してやると言っているのだぞ、さっさと手続きをせぬか!」


ナディアの父はついにキレてしまうが受付は断固として手続きを始めようとしない。ついには我慢の限界を迎えた彼は受付に対し、暴力を振るおうとしたその時だった。


「ゴホッ、ゴホッ。お父様、息が苦しいです。ゴホッ。」


「ん?ミナミ、息が苦しいのか?おい、受付!さっさと治癒師を連れてこい。娘を治療させてやろう、本来であれば金をもらってやるところだが今回はまけといてやる。ただで治療させてやるからさっさと連れてこい!」


突然の彼の狂言に受付の女性は固まってしまう。彼女は最近になって受付を任された人間であり、接客経験が少なかったのだ。そのうえ、治療をするのにお金を支払うのではなく、逆にもらおうとする目の前の人間の行動に頭が追い付いていなかった。


そんな困り果てている彼女を助けたのは受付嬢の一人でもあるシータだった。


「あら、いったいどうしたの?何か困ったことでもあった?」


「あっ、シータ先輩。実はこの人が・・・。」


そうして、先ほどまで対応していた受付嬢は助けに入ってきたシータにすべてを話す。そんな彼女の話を聞いたシータはナディアの父を見て毅然とした態度をとり、彼らを追い出そうとする。


「おかしいですね、ギルド長からすでにお話がいっているはずですよ。ギルドはあなた方への制裁として一切の治療行為を行わないと。


ここにいても当ギルドは一切の治療をいたしません。お引き取りください。」


まさか、ギルド長の言ったことが本当のことであると彼は全く理解していなかったのだろう。シータの言葉にカンカンに怒り出してしまう。


「お前、何様のつもりだ!私に楯突いてただで済むと思っているのか!お前たちなど私がその気になればいつでも潰せるんだぞ!ゴホッ、ゴホッ。」


「そうですか、私は上の決定を伝えたまでですので、あなた方が何をしようとも関与いたしません。」


「そんな!ひどいです。私はこんなに苦しい思いをしているのに治療をしてくれないんですか?ここは医療ギルドなのに、人を見捨てる行為をしてもいいと思っているんですか!私はレイン様の婚約者なんです。そんなひどいことをされたらレイン様に言いつけてしまいますよ!」


「それはあなた方の自業自得です。別に、あなたがこの国の王子の婚約者であったとしても関係ありません。報告したければお好きにどうぞ。


あなた方に報復をすれば王子が出張ってくるのは既に上層部の間で想定済みです。そのうえで、問題ないという結論に達しました。ですので、そんなことをしても無駄です。」


シータはギルド長から事前に彼らの話を聞いていたため貴族相手というのに毅然とした態度で対応するのであった。

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