第8話 聖女の力は伊達ではない

「安心してください、私が皆さんを治して見せます。それに、芋の芽に毒があるのは最近、王都で知られるようになってきたことなんです。


王都ですら最近になって知るものが増えてきたのに、それ以外の場所に住んでいる皆さんが知っているはずがないんですよ。ですから、どうか学がないなんて自分を卑下しないでください。」


「そう言われるとワシらも救われますのじゃ。ありがとうございます。」


「さて、話はここまでにして私も治療をしないといけませんね。それでは、失礼します。」


そういうと、ナディアは村人たちを治療するために駆け出していく。患者を寝かしている場所では何人かの治療師と思われる人間が治療に専念している。


「すみません、私は医療ギルドから依頼でやってきたものです。私にも患者さんを治療させてください!」


「た、助かる!そっちにいる人たちを見てくれ。こっちは連日の治療でそろそろ限界だ!」


「分かりました。すぐにかかります!」


それから、ナディアは自身の持てる力を最大限に発揮し、食中毒を起こした村人たちをどんどん治療していく。あまりの速度に他の治癒師達は治療の手を止めてしまうほどだった。




「いやぁ~、本当に助かったよ。君、凄いね!正直な話、ここにいる人たちは全員助けられないと考えたこともあったけど、君のおかげで全員助けることが出来たよ。本当にありがとうね。」


「私はギルドの依頼で来ただけなんですから、お礼を言われる必要はありませんよ。それに、あなたもギルドの依頼で来ているだけではないのですか?」


すると彼は照れくさそうに頭を掻き始める。


「いやぁ、実は僕、この村の出身でね。確かにギルドの依頼で来たけど、依頼が無くても来ていたんだ。みんな家族みたいな存在だし。だから、君のおかげでみんなが無事に助かった時は本当にホッとしたよ、本当にありがとう!」


「先ほども言いましたが、お礼は不要ですよ。この村は皆さん、お互いを大切になさっているのですね。私もこんな村に住んでみたいものですよ。」


「君ならみんな大歓迎だよ!親切だし、治癒師としても優秀だ。君さえよければ、本当に住んで欲しいくらいさ。」


村の住人たちはナディアに感謝しており、本心からナディアにこの村に住んで欲しいと考えていたのだ。


「ありがとうございます。もしも、気が向いたときはよろしくお願いしますね。」


こうして、ナディアの依頼は完了し、村を後にするのであった。しかし、ナディアはこの村に来ていたために知らなかったのだ。王都のギルドで緊急事態が起こっていることを。その原因はナディアの妹であるミナミが原因であることを知るのは少し、後の話である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る