第6話 制裁と呪いの始まり

現在、ナディアとの話を終えたギルド長は彼女が貴族家から脱退し、現在は敵対関係にあるということをギルドの上層部に報告を行った。その結果、上層部から下された処置は、今まで調子に乗っていたナディアの元家族たちに制裁を下し、今後は一切の要求も拒否するということだった。




場所は変わり、ギルド長はナディアの元実家を訪れていた。


「ということで、ナディア様はあなた方と法的に他人ということになりました。そのため、今後一切、あなた方に支払うお金はございません。それと、今回の一件は上層部の方でかなりの悪質な行為ということで意見が一致しました。


そのため、医療ギルドはあなた方に関係している領地から撤退することになりましたのでお忘れなく。治療が必要だとしても我々に頼らないでくださいね。」


「貴様、なんだその口の利き方は。私は貴族である娘をお前たちギルドなんかに加盟させてやったんだぞ!貴族がギルドに加盟したのだ、その礼に金をもらって何が悪い!」


「はぁ、これはナディア様が苦労していたというのも分かる気がするよ。とにかく、上の決定はお伝えしましたから。」


ギルド長はこれ以上、彼に話をしても無駄だと、そそくさと去っていく。その後ろではいまだに怒りをあらわにしているナディアの父が叫んでいるが。




ギルド長が去った後、彼は未だにギルドから金をもらう当てが外れイライラしていた。しかし、彼には秘策があったため、すぐに気を取り戻す。


彼の秘策はナディアの妹であるミナミだった。ミナミさえ、医療ギルドに所属させればまた、ギルドから金をもらうことが可能であると考えていたのだ。


しかし、彼は理解していなかった。ギルドが今まで彼の家に金を支払っていたのはナディアと敵対しない為であって貴族の娘がギルドに所属しているからではない。


そのため、仮にミナミがギルドに加盟したとしても、金をもらえるはずなどないが、ナディアが類まれなる能力を持った治癒師ということを知らない彼はそんなことを知る由もないのであった。




そのころ、王城ではとある変化が訪れていた。最近になって体調を壊すものが急に増えてきたのだ。その中にはナディアの元婚約者であるレイン王子もいた。彼は男性でもあり、まだ若かったため少し風邪を引いた程度の症状で少し休めば治ると治療医に言われていた。


しかし、その症状は城で働いているメイドたちにも広がっていたのだ。彼女たちは普段から少しくらい熱っぽくても休むことが許されない、それが王城で働くということだからだ。そのため、彼女たちの症状はだんだんと重症になっていき、寝込むものまで増えてきていた。


そんな彼女たちにはまだ誰も知らない共通点がある。それは、王子の婚約者であるミナミが城にいる間に世話をしている者たちだったのだ。


彼女の呪いは誰にも知られずに、しかし、確実に広がっていくのだった。

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