殿下、私よりも妹を選ぶというのならそれで良いですが、もちろん呪いも一緒に引き取ってくれますよね?

創造執筆者

第1話 裏切りと絶縁

私の名前はナディア、私には将来を約束した人がいる。でも、今日、私はその人に裏切られた。


「ナディア、僕は君を愛すことが出来ない!君よりもミナミのことを守ってあげたいんだ!」


私の裏切ったのはこの国の王子の一人であるレイン様だ。そのことに私はショックを受けるが驚くことはそれだけではない。彼が言う、私よりも守ってあげたい人であるミナミとは私の妹だからだ。


彼女は昔から病弱で周囲に甘やかされて育てられてきた。私達の両親でさえも私のことなど放置して彼女のことだけを優先する。


しかも、ミナミはそんな両親のことを理解しているから欲しいものがあれば私のものであっても欲しいと両親に告げる。そんな両親の反応はミナミに譲ってあげなさいだった。


「おねぇちゃん、私も殿下のことが好きになってしまったの。譲ってくれるよね?」


今回もそうだ、ミナミの言うことはすべてにおいて優先される。レイン様は婚約者の私を捨て、彼女に乗り換える。両親でさえも今の発言を聞き、こう答えた。


「そうか、そうか、ミナミがそういうのならナディアは諦めなさい。」


「そうよナディア、ミナミは体が弱いんだからあなたが譲ってあげなさい。」


この日、私はついに我慢の限界が来た。今まで私はミナミのために苦労してきたというのに、こいつらはその苦労を知らない。私はこいつらのために働くことが馬鹿らしくなったのだ。


「もう我慢できない!あなた達とは縁を切らしていただきます!」


私は家族や婚約者と一切の縁をきる。彼らは私の苦労など知らないからこんなことが出来るのだ!私がいなくなってせいぜい後悔するがいい。


私の苦労とはミナミの呪いのことだ。私には物心が付いたときから聖女の力がつかえた。ちなみに、この力は私以外に知る者はいない。聖女なんて伝説の中だけのお話だから、私が聖女と言えば頭のおかしい人だと思われるだけなのだ。


そんな聖女の力で私はミナミが呪われていることを知った。そして、どうやらその呪いとは周囲にいる人間にうつってしまうようだ。私はすぐに聖女の力を使って被害を減らそうとする。


しかし、周囲への感染は防ぐことに成功したが呪いが強すぎるため、ミナミは病弱になってしまったのだ。そう、彼女が病弱な程度で済まされているのは私がずっと陰ながら頑張ってきたからだ。


私が居なければ今頃、彼女は呪いによって死に絶え、周囲の人間たちにもその呪いがうつって大変なことになっていただろう。


しかし、こうなってしまえばミナミの呪いを食い止めることなんて私はしない。殿下、ミナミを選んだんですから、呪いも一緒に引き取って下さいね。私はもう、知りませんから。

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