第102話 買いまくりまー
-side ラインハルト-
「これと、これと……このあたりもよろしいかと思いますねえ。あと、先のことを考えると、こういうのとか」
「確かにそうだな。成長を考えると、ちょっと大人びているのを着るのもありか」
「そうですね。大人っぽいけれども、色合い的には、華やかな方がいいでしょうね。髪や瞳の色、肌質的に」
「本当か?誕生日に着る洋服、黒のタキシードにしてしまったが」
「それだったら、白のタキシードの方がいいでしょう。こちらのとか」
メアリーさんは手慣れた様子で、マークに勧めている。あれ?もしかして、俺蚊帳の外?
--というか、白のタキシードって、結婚式の格好でしか聞いたことがない。
「あ、あの……白のタキシードはハードルがかなり高いかなと」
「あら?そんな事ないですよ。似合うと思いますが……でもそうですね、必ずしもタキシードにこだわる必要はないのかもしれません。例えば……こちらとかどうでしょう?生地が少し青みがかっていて、ラインハルト様の瞳の色の青いボタンが服に入っているシャツです」
「なるほど……確かに良いな……。これ、何枚か欲しいかも」
「えっ……」
マークが驚いた顔をして、チラッとこちらを見る。
「フォッフォッフォ……、流石、お目が高い。こちら、この中で一番高い品なんですよ。このボタンの宝石はこの国では、とても、貴重なラピスラズリを使用しています」
あ、そういうこと。アルバートが買うにとっては、高すぎるかもしれない。
……けど、欲しいな。どーしても。
「……。あっ……!じゃ、じゃあ……じ、自分で買います!!」
「そうですわね。それがいいでしょう。私も、この洋服は是非ラインハルト様にと、とっておいたものですから」
「ほ、ほんとですか!?ありがとうございます」
「……ラインハルト。ラインハルト。ちょっとこっちに」
「ん??」
いい洋服に巡り会えたと、喜んでいる時に、マークが、俺を呼び寄せたので、部屋の隅へ行く。
「お前……、買わないようにしてたんじゃねえのかよ」
「あっ……!た、確かに」
「はあ。元々、お前じゃあ、百戦錬磨のメアリーさんには、太刀打ちできないって分かってたから、まあ、いいけどさ」
「ぐっ……!う、うん。ごめん」
「それはそれとして、もっと重要な事があるんだけどな」
「……?」
「何かってに、自分でシャツを買おうとしてるんだ?今日はお前の誕生日プレゼントを買う予定だから、俺から何かプレゼントをするっていう約束だったよな?それをお前、俺が自腹で買えそうにないからと、自分で買おうとしやがって……」
「う……、だ、だって……!」
「だっても、さっても、ありません!」
--ピシャリとマークに叱られる。
この世界に来て、ガチ説教をくらったのは、なんだかんだこれが初めてだ。
すっかり、甘やかされて育ったせいで忘れていた、この感覚。
「は、はい。お母さん」
「プッ……!」
アルバートが吹き出した。
はい、そこ。後で、覚えてろよ。
「はあ、笑うなアルバート。あと、ラインハルト。俺は、お前のお母さんではない」
「う、うん。もちろんです」
「はあ……、あのな。俺は、人としてお前に、行きすぎた自分勝手の行為を許した覚えはない。むしろ、側近としては、行き過ぎた行為を止める役割がある」
「う、うん」
「今回の場合だと、いくら買いたいものがあって、周りが見えなくなっていても、一言俺に声をかけてくれるくらいしてくれたっていいだろ?衝動が先走りすぎだ」
「た、確かに。う、うん」
「分かったらいい。で?お前はどうしたい?」
「ここの店の品々買いまくりたい」
「おいこら。ほどほどにしておけよ?まあ、でも、最初にこの店に入った時に比べたら、大分マシなツラになったか」
「うん……、マーク」
「ん?」
「ありがとう」
「おう」
「フォッフォッフォ。ラインハルト様はどうやら、良い部下に、巡り会えたようですね。
これは、公爵領も安泰でございます」
メアリーさんはまるで孫を見るような目で俺を見つめていた。
「あ、ありがとうございます。その……ご迷惑をおかけしました」
「フォッフォッフォ。大丈夫ですよ。エドワード様はもっと酷かったですから。ええ、全然大丈夫です」
……父上。ここでも、何をやらかした。
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[コメント]
ラインハルトとルイのイメージをAIでイメージ画像を作成してみました。もしよろしければ、近況ノートをのぞいてみていだたけると、イメージが湧くかなと思います。(イメージは、この話で出てきた洋服をラインハルトが着た感じです。)
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