if ~ 賽の導く君の運命
雪月風花
上巻
「結婚を前提にお付き合いして下さい、だって」
俺の部屋で冷蔵庫から勝手にビールを取り出して飲んで酩酊している女性、
名を
幼稚園からの幼馴染だ。
仕事こそ別だが、何と、幼稚園のみならず、小学校、中学校、高校、大学と
同じ学校に通った、なかなかに珍しいタイプの幼馴染だ。
まさに腐れ縁だ。
普通こういう状況だと付き合ったりすることもあるのだろうが、自分たちに
関してはそれは無かった。
近過ぎるのが原因だろうか。
と言って、仲が悪いわけでもない。
更に、親同士が仲が良いからか、母に頼まれた芽衣子は、わざわざ近くの
アパートを借りて、たまに様子を見にも来ている。
まぁ、そういう名目で、俺の部屋を荷物置き場代わりに使ってるだけの
ような気もするが。
先ほど俺が仕事を終えて帰宅すると、芽衣子は既に家に居て、酔っぱらっていた。
こいつはいつもそうだ。
勝手に合鍵を作って、勝手に部屋に入って、勝手に冷蔵庫のなかを漁る。
ともあれ、ずっと黙って飲んでるので、いい加減頭にきたところで今のセリフだ。
相手は会社の先輩だと言う。
「どんな人?」
「真面目で誠実そうな人」
「好物件じゃないの。不満なのか?」
「人生決まるのよ?悩んだっていいでしょ」
「悩むのはいいけど、それが男の部屋で、となると問題にはならんかね」
「あんたは姉弟みたいなものだから、ノーカンでしょ」
それを気にしない相手ならいいけどね。
「
「俺?芽衣子が幸せになれるのならそれが一番だと思うけど。
・・・止めてほしいの?」
「・・・分かんない」
芽衣子がビールを見つめる。
「ドラマなんかだと、『そんなの断って、俺と一緒になろう』なんて
言うんだろうけど、俺たちの関係ってそういうんじゃないもんなぁ」
「そうね。これだけ一緒にいて、一度も付き合ったこと無かったし」
「・・・付き合って・・・みる?」
芽衣子が俺をチラ見して言う。
「先輩との結婚から逃げる理由にされるのは嫌だなぁ」
俺も冷蔵庫からビールを取り出して開けた。
「お互い25歳だ。俺だって、次、付き合う人とは結婚を前提でってなるぜ?
ってことは、芽衣子と付き合うのなら、芽衣子が俺の結婚相手になるわけだ。
なのに、いざプロポーズとなったとき、同じように逃げられたら嫌だぞ?
俺と結婚する覚悟あるか?」
「う・・・」
しばし黙った芽衣子は、おもむろに俺の机を漁りだした。
「おいおい、何やってんの」
しばらくゴソゴソやってた芽衣子は何かを見つけ、取り出した。
手のひらを差し出してくる。
そこにあったのは、小さなサイコロだった。
「どうするか、これで決める」
「いつからギャンブラーになったんだよ、この酔っ払いが。っていうか、それこそ、
そんなので決めていい話じゃないだろ」
「分からないから天にゆだねる。どこかで後悔するかもしれない。でも、今は
これに賭けたい」
芽衣子が真剣な目で俺を見つめる。
これで酔っ払ってなけりゃあ、カッコイイんだけど。
「1、2が出たら健人と付き合う。3、4が出たら先輩と付き合う。
5、6が出たら誰とも付き合わない。いい?」
「どうぞ、お好きなように」
「えい!!」
芽衣子がサイコロを投げた。
『読者諸兄よ、ちょいとお邪魔するぞい。
わしは俗に、神と呼ばれる者じゃ。
名前?好きに呼ぶがよかろう。
似たような存在は他にもおるんじゃが、わしは運命を司っておる。
可能性次元を行き来し、数多の並行世界の生きとし生ける全ての人々の運命を
見守っておる。
分かり易く言うと、
そこでじゃ。
ここで出会ったのも何かの縁。
こやつらのこの先を、ちょっとだけ見せて差し上げよう。
運命率の高いものを4つばかり、見繕っておいたでの。
可能性①は、サイコロが床に落ちなかった場合。
可能性②は、サイコロの目が1か2だった場合。
可能性③は、サイコロの目が3か4だった場合。
可能性④は、サイコロの目が5か6だった場合。
さて、何が出るか乞うご期待じゃ』
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